上 下
54 / 75

第53話 老兵は死なず ②

しおりを挟む

 エリックさんを探して、今俺は冒険者ギルドへとやって来たところだ。

ギルドの中は活気に満ちている、ここでもやはり降臨祭に向けて、皆が色んな準備をしている様だ。

冒険者の人達も依頼をしに行っていたり、依頼から帰ってきていたりと、人の入れ替わり立ち代わりが激しく動き回って、慌ただしくなっていた。

「随分と活気に満ちている様だな、この時期は皆が忙しいみたいだな。」

降臨祭か、女神教というのは色んな所に信者がいる様だな。

確かニールが言うには、世界中に信者がいるって言っていたな。

ゲーム「ラングサーガ」でもそういう感じに表現されていたっけな。

(おっと、こうしちゃいられないな、早速受付嬢にエリックさんの事を聞いてみよう。)

 ギルドの中に入った俺は、まず先に受付カウンターのところまで行って、列に並ぶ。

冒険者達は依頼を達成して、受付嬢に報告している。

結構並んでいるな、隣のカウンターでも似たような感じになっている。

比較的にこっちの方が空いているので、このまま並ぶ事にする。

列に並んで待っていると、ギルドの出入り口から聞き慣れた声が聞こえてきた。

「あ~~、疲れた~、だけど今日の上がりは一日にしては結構な稼ぎでしたよね、姐御。」

「ええ、そうね、………フフ、ガーネット、貴女今回の依頼はかなり張り切っていたじゃない。そろそろ駆け出しは卒業かしらね。もうソロでもやっていけるんじゃないの?」

この声は、ガーネットだ。それにガーネットの隣に居る女性は見た事があるぞ。

確か俺がポエム山賊団を抜ける時に、ガーネット達と一緒にいた凄腕の女剣士だったよな。

シミター男を一刀両断してたっけな。

俺は片手を上げて手を振り、ガーネット達を呼んでみる。

「ガーネット、こっちだ。元気だったか?」

俺が呼ぶと、ガーネットはこちらを向いて俺を発見し、にぱりっとした笑顔の表情をしてこちらに近づいて来た。

ガーネットがあちこちボロボロになっているところを見ると、どうやら戦闘をしていたみたいだった。

モンスターの討伐依頼でも受けていたのかな?

「ジャズじゃない! 元気だった? 軍服を着てるって事はまだ軍のお仕事中?」

「いや、仕事ではないよ、かと言ってお休みでもないけどね。実は人を探していてね、なあガーネット、このギルドに戦術講師のエリックさんって人いないかな? 俺ちょっとその人に用事があってさ。」

俺が聞くと、ガーネットの代わりに姐御が答えてくれた。

「え~っと、初めましてになるのかしら? だけど貴方は何処かで見た事があるのよね。何処だったかしら?」

ここでガーネットが、姐御の事を俺に紹介してくれた。

「ジャズ、覚えてる? あの時の山賊の砦で出会った人よ、この冒険者ギルドの看板をしょってる人で、一応名前はあるんだけど、皆は「姐御」って呼んでるから私も姐御って呼んでいるの。凄腕の剣士なんだから。」

「ああ、覚えているよ。………その節はお世話になりました。俺はジャズと言います、今はもう山賊ではありませんよ、足を洗ってまっとうに生きています。今はこの町の駐屯地でアリシア軍の兵士をやっています。よろしく。」

「よろしく、私は一応名前があるんだけど、皆からは姐御って呼ばれているから、貴方も姐御でいいわよ。それにしても珍しいわね、この時期に兵隊さんが冒険者ギルドに居るなんて。基地の方で降臨祭に向けて色々と準備をしていると思ったんだけど。」

俺と姐御はお互いに握手をして、言葉を交わす、握手しただけで解る。

力強い、相当な手練てだれだな、この人。こういう人ってのはオーラが違う。

間違いなく凄腕冒険者だ。貫禄が違う。

クラスはおそらく上級職のソードマスターあたりだろうか、鼻に掛けないのが好感が持てる。

と、ここでガーネットが俺の言いかけた事を聞き返した。

「探している人? ギルドの戦術講師をなさっているエリックさんの事よね、勿論知っているわよ。私も冒険者になり立ての頃、武器の持ち方から敵との間合いの取り方まで、色々教わったもの。確か、中級冒険者の人達にも何かの技を教えている元気なお爺ちゃんよ。」

「へえ~、有名なんだね、エリックさんって。」

ここで姐御も話に加わる。

「私が駆け出しの頃からお世話になっているのよ、私の剣の先生ね。初めて技を教わったのもエリック先生だったわ。」

なるほど、そんな昔から戦術講師をされているのか、人に歴史ありだな。

「だけど、エリックさんは最近は見かけないわね、どうしちゃったのかしら?」

「え? という事は今はここには居ないって事かい?」

「ええ、おそらくはね。」

ふーむ、ギルドに居ないとなると、お家の方にいらっしゃるのかな? 

まあいいや、折角ここまで並んでいるんだ、ギルドの受付嬢に聞いてみよう。

「ねえジャズ、私達ここに並んでもいい?」

「え? 横入りは不味いんじゃないかな、ちゃんと並んだ方がいいよ。ほら、後ろの人怖い顔してるし。」

「あ、そ、やっぱりズルは良くないわよね、姐御、後ろに並びましょうか。」

「それがいいわね、それじゃあジャズ、またね。」

「はい、姐御、ガーネットも。」

こうして、俺の順番まで並んで待っていて、しばらく経ったら俺の番に回って来た。

早速受付嬢に聞いてみよう。

「すいません、自分は人を探していまして、このギルドに戦術講師をされているエリックと言う方を捜していまして、こちらにいらっしゃいますか?」

受付嬢のおねえさんは、直ぐに答えてくれた。

「ああ、エリックさんですね。確かにこのギルドに戦術講師として在籍しておられますが、最近はちょっとお見掛けしませんね、体調でも優れないのでしょうか? 連絡は来ていませんが、どうしたんでしょうね。」

ふーむ、やはりエリックさんはここには居ない様だな。お家の方に行ってみるか。

「解りました、自分はエリックさんのお宅へ行ってみます。では、ここで失礼致します。」

受付カウンターから離れ、ガーネットが並んでいる所まで行って、ガーネットに声を掛ける。

「ガーネット、俺ちょっとエリックさんのお宅まで行って、様子を見に行こうと思うから、それじゃあな。」

「ちょ、ちょっと待ってジャズ。私も一緒に行くから少しだけ待ってて頂戴。」

「いいわよガーネット、ギルドへの報告は私がしておくから、ジャズと二人で行って来なさいな。報酬はちゃんと貰っておくから、貴女の分も後で渡すわよ。冒険者としてエリックさんの様子を見に行って来てくれない。」

「え、いいんですか? すいません姐御。ありがとうございます、それじゃあちょっとジャズと一緒に行って来ます。」

どうやらガーネットは、俺と一緒にエリックさんの所まで行く事にしたようだ。

ギルドへの報告を姐御に任せて、俺のところまで来た。

「いいのかい? 姐御に頼んじゃって。」

「ええ、姐御は優しいから、それに、私もエリックさんの事、ちょっと心配だし、冒険者として訪ねに行くだけよ。行きましょうジャズ。」

「ああ、解った。早速行こうか。」

こうして、俺とガーネットは冒険者ギルドを後にして、一般住宅街へ向けて歩き出した。

確か東側に家があるって、町役場の人から聞いたな。

 一般住宅街に到着した。ここの東側だったな、家の一軒一軒ずつ調べていく。

エリックさんはご在宅だろうか? 

家の表札みたいな物は無いが、玄関の扉にその人が住んでいる名前が書かれているので、直ぐにエリックさんのお宅は解った。

「ここだ、エリックさんのお宅は。」

「ドアをノックしても返事が無い、なんて事は無いわよね、この時間はまだ日も傾きかけだし、何処かに出かけているかもしれないけど。」

「まあ、ノックしてみればわかるよ。」

俺はエリックさんのお宅の玄関の扉を、コンコンとノックする。しばしの間待って返事を待つ。

ところが………。

「帰れええええ!!」

「「 ええええ!!? 」」







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜

黒城白爵
ファンタジー
 とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。  死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。  自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。  黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。  使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。 ※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

処理中です...