上 下
52 / 69

第51話 レベルアップならず、しかしお茶は渋かった

しおりを挟む
闇の崇拝者との接触をしたジャズは、その戦いの中で自身の無力さを思い知り、更なるレベルアップを望むものの、中々思う様にいかず、出来る事を少しずつやっていく事にしたようです。そんな中で、久しぶりに訪れた憩いの時間。お茶を嗜み、まったりと過ごすジャズは、仲間たちとの会話をしてこの国の情勢を知る事になるのでした。さて、ジャズは何を思うのでしょうか。
********************************************


 翌日、食堂にて朝飯を食べる。

パンに野菜スープ、わかめなどの海藻サラダ、ハムエッグを食す。うむ、旨い。

今日のご飯も美味かった、軍隊飯は中々侮れない、栄養バランスがしっかりと取れている。

コックさんに感謝しつつ、両手を合わせてご馳走様をする。

「ふう~、食った、今日は待機任務だったよな。このままここでお茶でもしようかな。」

食べ終わった食器をカウンターのところへ持っていき、洗い場へ置く。

「ご馳走様でした」と言い、そのままコップを持ってやかんのお茶をコップに汲み、元の席へ戻り、お茶を啜りながら、まったりと寛ぎながら過ごす。

「はぁ~~、このまったりとした時間が堪らない。お茶もうまいし、今日はゆっくり過ごすか。」

一応ユニークスキルのメニューコマンドを表示させた、何か出来る事はないかと、ステータスをチェックする。

(やっぱりな、レベルアップコマンドが暗く表示されている。)

残念、今回はレベルアップに必要な経験点が足らないようだ。

折角シナリオをクリアしても、貰える経験点が750点では次のレベルに必要な経験点が溜らない様だ。

まあしかし、スキルポイントは増えた筈だ、何か有用なスキルを習得するだけでもいいよな。

スキルポイントは7ポイントまで溜っている。

先の戦いでは相手の魔法使いに手も足も出なかったから、いい機会だ。

対魔法使い戦を想定して、何らかの属性耐性のスキルを取るのも悪くはない。

今後の事は解らないが、これからの事を考えていこう。

しかし、属性耐性といっても色々ある。

火耐性に水耐性などの火、水、土、風、の四属性に対するものから、光、闇、聖、などの属性もある。

初級スキルならば各耐性に特化したスキルがあるが、敵がどの属性攻撃魔法を使ってくるのか、事前情報があればいいのだが、基本そういった情報は掴み切れないところがある。

(初級スキルよりも、いっその事上級スキルを習得した方がいいような気がするな。)

上級スキルの中には「全属性耐性」というのがある。

これは文字通り全ての属性に対する耐性が付くという事だ。

寧ろこっちの方が必要となるスキルポイントは少なくて済む。

ただ、この全属性耐性というスキルは消費ポイントが5ポイントと高い。

上限のスキルレベルをレベル5まで上げるとなると、75ポイント必要になってくる。

これは正直、大変である。

(だけど上級スキルだけあって、その効果は大きいんだよな。)

全属性耐性のスキルレベルが1でも、属性攻撃に対して20%のダメージカットが発生する。

勿論パッシブスキルだ、常に発動しているスキルなので、一々手間は掛からない。

うーむ、初級スキルにするか、上級スキルにするか、悩みどころだな。

だが、相手がどの魔法を使ってくるか解らない以上、ここは万全を期して上級スキルを習得しておくか。

うむ、そうしよう。

俺はメニューコマンド内にある「スキル」のコマンドを決定する。

おー、出てきた出てきた、色々なスキルが習得できる様になっているみたいだ。

しかし、俺の必要としているスキルは「全属性耐性」だ。

色んなスキルを目にすると目移りしてしまうが、ここは我慢の子だ。

早速「全属性耐性」のスキルを、5ポイント消費して習得する。

(よしよし、「全属性耐性」を習得したぞ。まだスキルレベル1だが、これが有ると無いとでは大違いだからな。今後の対魔法使い戦では期待できるスキルになる筈だ。)

今回はこんなもんかな、残りのスキルポイントはこれからの事を考えて取っておこう。

今一度ステータスを表示する。

ジャズ  LV7  HP21
職業 忍者
クラス 下忍

筋力 31  体力 26  敏捷 32
器用 27  魔力 10  幸運 25

ユニークスキル
・メニューコマンド
・精神コマンド 4/4 (必中 不屈 熱血)
スキル
・ストレングスLV5 (フルパワーコンタクト使用可)
・タフネスLV4
・スピードLV2
・投擲
・剣術LV3
・身体能力極強化
・全属性耐性LV1

経験点750点  ショップポイント1230  スキルポイント2

武器熟練度
小剣 70  剣 70  槍 35


こんな感じだな。まあ今回はレベルアップは出来なかったが、そんな時もあるわな。

だが今回は有用なスキルを習得したという事で、良しとしとくか。

まだまだこれからって感じだな、俺のステータスも。  

 お茶を啜り、まったりと時間を過ごす。お茶がうまい。

これ何茶だろうか? ほうじ茶? それとも玄米茶? 緑茶かもな。

まあうまいからいいや。こうしてまったりとしていると、ニールとリップがやって来た。

二人共手にお茶を持っている。

「ようジャズ、一緒にお茶しようぜ。」

「ああ、いいぜ。」

「私達、今回は待機任務だから、この基地から外へ出ない様にって事よね。駄弁りながらお茶しましょう。」

ニールもリップも俺の座っているテーブルの席に着き、お茶を飲みだした。

「なあリップ、先日の任務で第二王女のサナリー様からちらっとだけ聞いたんだけどさ、この国には第一王子と第二王子がいるんだよな?」

「ええ、第一王子ダイサーク様と第二王子アロダント様でしょ。それがどうかしたの?」

「二人ってさ、仲悪いの?」

俺の質問に、二人は顔を見合わせ、話が広がる事を予想したのか、にんまりとした表情になり、話に花が咲いた。

「いいかジャズ、第一王子ダイサーク様はな、お忍びでよくスラム街に出かけて、安酒を飲みながらスラムの人達と騒いでいるらしいぞ。」

「へえ~、そうなのか?」

「ええ、そうよ、そんなだから国民に人気があってね、次期国王はダイサーク様で決まりだろうってもっぱらの噂よ。」

「へえ~、国民に人気があるのは結構な事だよな、この国も安泰か。」

「ところがそう上手くいかないのが国ってもんだろ、なんせ第二王子アロダント様が玉座の椅子を狙ってあれこれ動いているらしいんだよ。そんなだからダイサーク様と仲が悪くてさ。」

「え? だって、アロダント様って王位継承権第二位だろ。ダイサーク様がいる以上、好きに出来ないと思うがな。」

「アロダント様ってね、国民には人気が無いけど、貴族には人気があるのよ。ほら、ダイサーク様はどちらかっていうと、庶民寄りなところがあるじゃない。だけどアロダント様は気位が高いから、貴族達にちやほやされて育ってきたから、自分の娘を嫁にしようと画策している貴族ばかりらしいわよ。」

「ふーん、王族ってのも大変なんだな。」

「だけど、アロダント様ってあまりいい噂を聞かないのよね、性格が残忍で冷酷らしいから、使用人を事ある毎によく鞭打ちしてるらしいわよ。」

ふーむ、話を聞くと第二王子アロダントってのは、中々性格が歪んでいるらしいな。

サナリー様も、信用が置けないって言っていたな。

「おいおい、リップ、詳しいな、どこでそんな情報を仕入れてくるんだ?」

ニールが聞くと、リップはどや顔で語り始めた。

「私ってほら、ナナ少尉の部下じゃない。ナナ少尉の最初の自己紹介覚えてる? ナナ・フローラって名乗ったでしょ。私とナナ少尉で色々話していると、色んな情報が聞けるのよ。ナナ少尉はフローラ子爵家のご令嬢らしいから。」

「え!? そうなの? 知らんかった。知ってたか? ジャズ。」

「ああ、そういやあフローラって家の名前を名乗っていたな。そうか、子爵家のご令嬢だったのか。」

「そ、だから私は色々な王都なんかの情報が入って来るって訳。」

ふーむ、ダイサーク様にアロダント様か、第一王子と第二王子との不仲は今後どのような展開になる事やらだな。

「そういやあさあ、第一王子と第二王子、それと第二王女の事は解ったけどさ、第一王女の話って聞かないよな、どうなってるの?」

俺が聞くと、二人は言いよどみながらも答えてくれた。

「………なあ、ジャズ、この国にとって、いや、この国の国民にとって第一王女カタリナ様の話は、禁句だ。解ったな。」

「え? 何で?」

「ジャズ、カタリナ様はね、お隣の国に嫁ぎにいって、子供を産んで、その後すぐ、この国に出戻って来たのよ。」

「え!? 出戻り! そんな事して隣国との関係は悪くならないのかよ?」

「ジャズ、知らないの? この国の人は皆知っているわよ。有名な話だもの、末端の村にまで噂が行き届いているわよ、それにね。」

「何だよ、まだ何かあるのかよ。」

「………カタリナ様はね、結婚する前に、一人の市井の男との間に出来た子を産んだらしいのよ。それが隣国の王子に知られて、大喧嘩、王子との間に出来た子供を連れてこの国に出戻ってきたって訳、流石に当時は肩身の狭い思いをしたらしくてね。王城を出て、田舎の村に子供と一緒に住んでいるらしいわよ。」

「な、なんと、そんな事があったのか。複雑なご家庭なんだな。確かにそれは禁句だな。場合によっちゃ隣国と戦争してたかもしれないからな。寛大な国に嫁いで良かったと言うべきか。」

ふーむ、アリシア王国の王族か、色んな人生模様があるみたいだな。

第一王子ダイサーク様に第二王子アロダント様、それに第一王女のカタリナ様、あ、カタリナ様は嫁いだ時点で王位継承権は無いか。

そして第二王女サナリー様。サナリー様も王位を放棄したんだよな。

色々あるもんだな、人生ってやつは。

このお茶の様に渋い。だがその渋みがいい。

そう感じるくらいには俺は年を取っているからな、まあ、ジャズがこの先、どうなっていくのかは、俺にもわからん。

まあ、なるようになっていくだろう。運命って奴は………。俺は只の雑魚キャラだしな。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

おおぅ、神よ……ここからってマジですか?

夢限
ファンタジー
 俺こと高良雄星は39歳の一見すると普通の日本人だったが、実際は違った。  人見知りやトラウマなどが原因で、友人も恋人もいない、孤独だった。  そんな俺は、突如病に倒れ死亡。  次に気が付いたときそこには神様がいた。  どうやら、異世界転生ができるらしい。  よーし、今度こそまっとうに生きてやるぞー。  ……なんて、思っていた時が、ありました。  なんで、奴隷スタートなんだよ。  最底辺過ぎる。  そんな俺の新たな人生が始まったわけだが、問題があった。  それは、新たな俺には名前がない。  そこで、知っている人に聞きに行ったり、復讐したり。  それから、旅に出て生涯の友と出会い、恩を返したりと。  まぁ、いろいろやってみようと思う。  これは、そんな俺の新たな人生の物語だ。

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる

シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。 そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。 なんでも見通せるという万物を見通す目だった。 目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。 これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。 魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。 ※他サイトでも連載しています。  大体21:30分ごろに更新してます。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

処理中です...