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第44話 シスターサナリー救出任務 ③

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 今は待機中の俺達は、リップが偵察を行って、戻って来るのを待っているところだ。

ここは修道院より程近い森の中、この場で一旦待機して、辺りの様子を見ている。

特に何も怪しい所は無い。静かなものだ、時折吹く風が森の木々の葉を揺らしている。

ただ待っているだけというのも、落ち着かないものだな。

ニールが俺に話しかけてきた、リップの事が心配なんだろうな。

「なあジャズ、リップは大丈夫かな? あいつ、意外とおっちょこちょいな所があるんだよな。」

「まあ、大丈夫だと思うよ。保険にあるアイテムも渡してあるし、それにさ。」

「何だよ?」

「リップの奴、ああ見えて結構やる奴だと思うぜ、心配なのは解るが、お前がここで気を揉んでいたって始まらんだろう。少し落ち着けよ。リップは上手くやるよ。」

「う~ん、だといいんだがな………。」

確かに、たった一人での偵察任務ではあるが。

本来偵察というのは少人数で行うから効果があるのであって、俺達がわらわらと出張っていくとかえって邪魔になるだけだ。

ここは大人しく様子を見るのが一番だろう。

そうして、暫くの間待っていると、森の方からリップが出て来て、俺達の待機している場所に戻って来た。

どこも怪我とかしていない様子だ、どうやら上手く偵察をしてきたみたいだ。

サキ少尉がリップを手招きして、地図の置いてある所へと来るよう言う。

「只今戻りました。」

「ご苦労リップ二等兵、こっちだ、来てくれ。」

言われてリップは、サキ隊長のところへと歩いて向かう。ここでサキ隊長が俺達に声をかけた。

「よーし、お前達、ここに集合。偵察からの報告を聞くぞ。集まれ。マーテル殿も来て下さい。」

サキ隊長に呼ばれて、俺達とマーテルさんはサキ隊長の元に集合する。

そしてサキ隊長が「リップ、偵察の結果報告を皆に説明してくれ」と言って、リップに偵察で得た情報を皆と共有する為に説明させた。

「まず、修道院周辺ですが、事前情報通り武装した賊がいました、おそらく山賊かと思われます。数は十人、その内一人の見張りに見つかってしまい、やむを得ず排除しました。音を立てずに排除したので、他の賊には気づかれていないと思います。残りの数は九人です。」

ここでサキ隊長が顎に手を添えて「そうか、一人減ったな」と呟き、リップに更に説明を求めた。

「リップ二等兵、賊の中にリーダーらしき人物はいたか?」

「はい、いました。山賊の頭目らしき男が一人、修道院前に陣取っていました。それと、妙な人物が一人いました。」

「妙な人物?」

「はい、全身黒いローブに身を包んでいて、フードを目深に被っていたので顔は解りませんが、杖を装備していたので、おそらく魔法使いかと思います。その黒ローブの男が山賊の頭目に指示を出していたので、その黒ローブが黒幕かと推測します。」

ここまで一気に説明したリップは、一つ呼吸を整え、落ち着きを払っていた。

リップの奴、やっぱり凄いな、ここまでの情報を一人で収集してのけるなんて、コマンド兵として優秀だな。

きっとリップは出世する事だろう。

ここで、サキ隊長がナナ少尉とマーテルさんの方を向き、「どう思う?」と意見を求めた。

先に答えたのがナナ少尉だ。

「うーん、黒幕は山賊の頭目ではない、という事かしら、その黒ローブの男の事も気になりますが、今は情報が少ないですわね、魔法使いとの事なので、慎重に事に対処しなくては、こちらが痛い目に合うかもしれませんわね。」

更にマーテルさんも自分の意見を述べた。

「私にはその黒ローブの男というのが、どうも引っ掛かります。もしかしたら、その魔法使いは私が対処しなくてはならないかもしれません。その時は皆さん、下がっていてください。危険な相手の可能性がありますので。」

ふーむ、黒ローブの男か。

何か嫌な思い出しかないんだが、それにしてもこの国はその黒ローブに人気のスポットが多いのか? ようわからん。

「それで、リップ二等兵、待ち伏せに適したポイントはあったか?」

「はい、ここから道なりに行くと、岩場の様な場所へ出ます。森の中は細い木々がありますが、身を隠すのには適してはいません。ですが、この岩場なら身を隠すのに丁度良いと思われます。」

「よし! 待ち伏せ出来そうだな。まず、おとりを一人出して賊共を引き付ける、岩場まで賊を連れて来て、そこで賊を包囲して、殲滅する。という作戦はどうだろうか?」

「それは結構なのですが、囮役は誰がなさいますの?」

「うーん、リップ二等兵は疲れているだろうし、ここは忍者の出番じゃないのか?」

唐突に俺に話が及んだ。

「自分でありますか? まあ、いいですよ。その囮役は引き受けます。」

そこで、マーテルさんが話に入って来た。

「待ち伏せ作戦もいいのですが、私はその黒ローブの男を捕らえて拘束し、情報を聞き出したいですね。何故修道院を襲ったのかを確かめたいところです。」

なるほど、確かに何故修道院なんかを襲ったのか、知りたいところではあるな。

まさかとは思うが、王女サナリー様の事を何処かで聞いたのかもしれん。

今回の襲撃事件を起こした可能性も、視野に入れておくべきかもしれんな。

そうなると、やはりお家騒動絡みという事になったりしてな、まさかな。

「よーし! 作戦は決まったな! ジャズ上等兵、囮役は任せたぞ。」

「は! 了解であります。」

作戦は決まった。後はやるだけだ。

俺は装備を確認し、皆より先に移動して、修道院へ向けて進みだした。

その途中、確かに岩場があったので、皆はその場所で岩の陰に隠れて待機した。

マーテルさんはペガサスナイトなので上空から一定の距離を保ちつつ、岩場の辺りで大きく旋回して空から偵察行動をしていた。

 俺は修道院の近くまで接近し、様子を窺う。

居た居た。どう見ても堅気じゃなさそうな連中が、これまた武装して辺りの様子を見張っていた。

俺はそいつ等にわざと近づき、挨拶をする。

「よーう、いい天気だな。いや、曇り空か。まあいいや。そっちに山賊の頭目っている? 居たらちょっとこっちに来て欲しいんだが。」

「な、何だ? テメーは?」

「おい! 何か変な奴がいるぞ!」

「へへ、たった一人かよ、しかし、情報と違うな、確か女が一人で向かって来ていると聞いたが?」

「何ビビッてやがる、相手はたった一人じゃねえか、囲んでやっちまえ!」

「へっへっへ、これで金貨10枚の仕事とはよ、楽な仕事だぜ。」

(何? 金貨10枚だって? こいつ等只の雇われか、それにしても金貨とは、バックには相当な金持ちか大物人物が居るって訳なんだな。貴重な情報ありがとよ。)

俺は早速ナイフを一本取り出して、山賊の一人に狙いをつけ、思いっ切り投擲した。

飛んで行ったナイフは見事に賊の一人に命中、頭に突き刺さって倒れた。

(まず一つ。)

「て、てめー! やりゃがったな! おい皆! こいつを囲め!」

(そろそろ引き上げ時か。)

俺は踵を返して、一目散に逃げ出した。

「ま、待ちやがれ!」

「追え! 逃がすな!」

「何やってやがる! さっさと行かねえか!」

「へ、へい! かしら!」

(お、どうやら俺を追ってくるらしいぞ。いい頃合いだ、もう一丁いっとくか。)

俺は逃げながらでも、後ろを向き、更にナイフを引き抜き投擲、賊の一人に命中。倒す。

(二つ、残り七つ。)

これまでに二人の賊を倒し、俺は一目散に逃げる。

だが、あまり速度を上げると賊達は付いて来れないので、適度に速度を落として軽めのランニング程度の走りをした。

(よしよし、ちゃんとついて来る、このまま岩場までご案内しますか。)

残りの賊は七人、内、山賊の頭目らしき男と黒ローブの男は後からやって来るみたいだ。

先に賊の子分共が五人、俺に追い縋ってきていた。

 岩場に到着。俺はその場で走るのを止め、振り向きながら身構える。

「はあ、はあ、ぜえ、ぜえ、やっと観念したか。大人しくしやがれ、金貨10枚!」

「悪いが、大人しくするのはあんた等の方だ。」

俺が指をパチン、と鳴らし皆に合図を送る。

そして、岩場に隠れていた各小隊の皆が一斉に飛び出して、賊を包囲した。

上空からは、マーテルさんが旋回しながら降下してきた。

サキ隊長が大声で辺りを掌握しだす。

「全員そこを動くな! 死にたくなければ大人しくしていろ!」

決まったな。俺を取り囲んでいる賊を、更に取り囲んでいる各小隊。それにマーテルさん。

これは詰みだろう。このまま大人しくしていて貰いたいもんだな。










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