44 / 69
第43話 シスターサナリー救出任務 ②
しおりを挟むサキ小隊とナナ小隊の合同小隊、加えてシャイニングナイツのマーテルさんを伴って、俺達は一路、街道を西へと向かっている。
港町ハッサン方面へと向かい、途中にある土がむき出しになっている横道に逸れる。
そのまま進むと、草原から森の地形へと段々変化していく。
天気は曇り、一雨きそうな天気だ、だが雨が降って来る気配は無い。
只の曇り空ってところか。風がやや吹いている、まだ乾いた風だ。
湿ってはいないので、このままこの天気でいて貰いたいものだな。
マーテルさんは俺達より少し先行した上空を飛んでいて、辺りを警戒してくれている。
流石ペガサスナイト、空からの偵察など、飛兵ならではである。
ただ、敵からは丸解りなので、あまり頼り切る事は出来ない。
街道を歩いていると、ニール達から声を掛けられた。
何だか皆嬉しそうだ、隊長達も張り切っている。どうしたんだろうか?
「なあジャズ、信じられるか? 俺達あのシャイニングナイツと行動を共にしているんだぜ。なんかこう、英雄にでもなった気分だよな。」
「そうかな? そう言やあ冒険者仲間の女性が言っていたっけ、確かシャイニングナイツは凄く活躍しているって。やっぱり女性だけで構成された聖騎士隊だけあって、人気があるのか?」
そこでリップが嬉しそうに答えた。同じ女性が活躍しているからなのか、まるで自分の事の様に語りだした。
「ジャズったら、何も知らないの? いい、シャイニングナイツっていうのはそりゃあ凄いのよ。たった一人で大型モンスターを討伐したり、王族や貴族の警護をしたり、噂では10人ぐらいであのレッドドラゴンを倒したって評判になっているんだから。その活躍ぶりはこの国のみならず、他国にまで評判や噂が広まっているんだから、国境を越えて人々の為に活躍しているのよ。凄いわよねえ。」
「へえ~、そうなんだ。シャイニングナイツって凄いんだな。そうだ、折角マーテルさんが居るんだから、その噂話を聞いてみればいいんじゃないか?」
俺の意見に、メリー伍長が慌てて答えた。
「そ、そんな恐れ多い事聞ける訳無いです。シャイニングナイツですよ。私達とは違うです、本物の聖騎士様ですよ。きっと並々ならぬ努力を積み重ねてきたに違いないです。そうして今のシャイニングナイツがあるです。」
ふーむ、そうなのか。ちょっと聞いてみようかな。
折角近くにシャイニングナイツのマーテルさんが居る訳だし。よし、聞いてみよう。
「マーテル殿、少しお聞きしたい事があるのですが?」
俺の質問に、マーテルさんは高度を下げて、俺と話し易い高さまで下りてくれた。
「何ですか? 私にお答え出来る事で良ければ。」
「噂では色々とご活躍されているとお聞きしたのですが、本当のところはどうなのですか?」
俺の質問にマーテルさんは笑顔になって、少し困った様な表情をしつつ答えてくれた。
「え~とですね、色々と活躍しているメンバーは確かにいますが、そういった本当に強い騎士はほんの一握りですよ。私は勿論、他のシャイニングナイツの皆も、おそらく皆さんと同じくらいの強さだと思いますよ。噂や評判が先行してしまって、尾ひれがついているのは確かですよ。」
「そうでしたか、有名になるというのも大変なのですね。答えて下さりどうもありがとうございます。」
「いえ、私も誤解されたままでは、困りますので、では。」
そう言って、マーテルさんは上空の警戒に戻っていった。ここでサキ少尉から俺に意見があった。
「ちょっとジャズ上等兵、何聞いているのだ。失礼だろうが。アリシア軍人として恥ずかしくない態度と礼節をもって行動しろよ。いいな。」
「は、はい。了解であります。」
怒られちゃった。
サキ少尉と、それからナナ少尉もこちらを一瞥していて、あまりいい顔はしていなかった。
ちょっと聞いただけなのだが、シャイニングナイツって女性陣にとっては何か特別な存在なのかもしれないな。
これからは気を付けよう。
辺りの景色が草原から森へと変わってきて、大分歩いたところで、サキ少尉が片手を上げ、皆を制止させた。
俺達は移動の足を一旦止め、辺りを警戒する。
「そろそろ目的地に到着する。よし皆、30分休憩。マーテル殿も降りて来て下さい。それとナナ、リップ二等兵、ちょっとこっちに来てくれ。」
サキ少尉が休憩を取らせ、俺達はその場で座り込み、革袋の水筒を取り出して水分を補給する。
辺りは静かな森の中だ。目的地の修道院まではもう少しといったところだろうか。
サキ隊長とナナ隊長、それとリップが集まり、何やら話し込んでいる。
おそらくこれからの作戦か何かを話し合っているのだろう。
ちょっと聞き耳を立ててみよう。
サキ少尉が自分のアイテムボックスから地図を取り出し、それを広げて三人に見える様に地面に置く。
「ここが今我々が居る場所だ。そしてここが修道院、この修道院の周辺に賊が取り囲んでいるらしい。リップ二等兵、君のコマンド兵としての力が必要だ。先行偵察して様子を伺い、正確な敵の数と敵リーダーの存在の有無、それと、待ち伏せに適した場所を探してほしい。やってくれるか?」
「はい、出来ます。」
「リップさん、休憩してからで構いませんわ、無理せず、事に対処して下さいな。」
「は! 了解であります。」
なるほど、リップを偵察に出して様子を見ようという事か。
確かにリップは斥候として優秀なコマンド兵だからな。
だけど、ちょっとだけ心配だな。
よーし、俺のショップコマンドを使って、リップに何かアイテムを渡しておくか。
俺はショップコマンドを開き、リップに適したアイテムを探す。
………お? これなんかいいかも。早速購入し、アイテムボックスから取り出しアイテムを確認する。
(フルブロックの指輪、こいつならリップの助けになると思う。)
「リップ、ちょっといいか?」
「何? ジャズ。」
「この指輪を受け取ってくれ。」
「………ちょ、ちょっとジャズ、こんな時に何を!」
リップは何か慌てた様子だったが、気にせず説明した。
「この指輪はマジックアイテムだ。「フルブロックの指輪」といって、どんな攻撃でも一度だけ完全に防いでくれる、いいか、一度だけだぞ。もしこれが壊れる様な事態に陥ったら、何も考えずに逃げろ。そして身を隠せ、いいな。」
「あ、ああ、そういう、………わかったわ、有難く受け取っておくわ。ありがとうジャズ。」
リップは俺から受け取った指輪を、左手薬指に嵌めた。
別にそこでなくてもいいんだが、まあいいか。
俺とリップのやり取りを見ていたナナ少尉が、横槍を入れるような感じでちゃちゃを入れてきた。
「こら、君達、何イチャついていやがりますの、作戦前の大事な休憩時間でしてよ。」
「「 べ、別にイチャついている訳では。 」」
「うふふ、いいですね、もしお二人が式を挙げるなら私が仲人をしますけど?」
「「 マーテル殿まで、違いますから。 」」
俺達はからかわれたが、まあ、こういう気の抜き方も必要という事だな。
30分の休憩の後、リップは先行偵察の為に行動を開始した。
森の中の道を、修道院方面へ向けて駆けていったようだ。
何事も無ければいいが。うまくやってくれよ、リップ。
ここでサキ少尉から俺達に、命令があった。
「よーしお前達、準備しとけよ。武具の手入れも忘れずにやっているな、回復薬も常に使える様にホルダーに固定しとけよ。」
「「「「 了解。 」」」」
ナナ少尉も俺達に声をかけた。
「リップさんに先行偵察を命じました、上手く事が運べばそろそろ戻ってくるかと思いますわ。リップさんが戻ってきたら、作戦を練りますから、貴方方はしばらく待機、備えておきなさいな。」
「「「「 はい。 」」」」
ここで、こうして待っているだけってのも、意外と辛いものだな。
リップの事は心配ではあるが、リップはリップで上手くやると思う。
これまで厳しい訓練に耐えてきた俺達なら、きっと大丈夫だと自分に言い聞かせる。
さあ、いよいよ作戦が動き出したってところか、俺も上手くやっていこう。
27
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした
御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。
異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。
女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。
――しかし、彼は知らなかった。
転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
おおぅ、神よ……ここからってマジですか?
夢限
ファンタジー
俺こと高良雄星は39歳の一見すると普通の日本人だったが、実際は違った。
人見知りやトラウマなどが原因で、友人も恋人もいない、孤独だった。
そんな俺は、突如病に倒れ死亡。
次に気が付いたときそこには神様がいた。
どうやら、異世界転生ができるらしい。
よーし、今度こそまっとうに生きてやるぞー。
……なんて、思っていた時が、ありました。
なんで、奴隷スタートなんだよ。
最底辺過ぎる。
そんな俺の新たな人生が始まったわけだが、問題があった。
それは、新たな俺には名前がない。
そこで、知っている人に聞きに行ったり、復讐したり。
それから、旅に出て生涯の友と出会い、恩を返したりと。
まぁ、いろいろやってみようと思う。
これは、そんな俺の新たな人生の物語だ。
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる
シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。
そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。
なんでも見通せるという万物を見通す目だった。
目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。
これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!?
その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。
魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。
※他サイトでも連載しています。
大体21:30分ごろに更新してます。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる