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第40話 街道警備任務 ③
しおりを挟む「間違いない、あれはエースモンスターだ!」
ゴブリンライダーとの戦いも一段落し、辺りを警戒していたが、そこへゴブリンが1匹現れた。
ゴブリン。体長が1メートル程の人間の子供ぐらいの身長に、細い身体つき。
緑色の体色をしており、瞳の色は黄色、悪臭を放ち醜悪な顔をしている。
スライムと並ぶモンスターの代名詞的存在だ。
冒険の初めの頃お世話になる奴だ。所謂雑魚モンスターという奴だな。
そのゴブリンがたった1匹で俺達に挑もうとしている。
これは何かの罠か?
兎に角、あの距離からの石斧を投げてきて、ニールに直撃。
ニールは苦しそうにしているところを見るに、あのゴブリンは恐らくエースモンスターの可能性が高い。
警戒せねば。
エースモンスターとは、見た目は只の雑魚モンスターなのだが、その力やスキルは優にレベルが一桁違う奴だ。
ゲーム「ラングサーガ」では、よくプレイヤーを苦しめる存在として登場していた。
この世界でもそういう事ってあるのかよ? 参ったな。
(だとしたら、出し惜しみはしない方がいいな。)
俺はエースモンスターっぽいゴブリンに接近し、距離を詰める。
その間も、ナイフの投擲を忘れない。だが。
「グヒャ!」
なんと、俺の投げたナイフは、ゴブリンの手に持つ石斧で防がれた。
見切られているというのか!? 俺だって色々なスキルを所持しているんだぞ。
それでも尚通用しないってのか! こりゃあ一筋縄ではいかないな。
ショートソードを仕舞い、アイテムボックスから雷の小太刀を引き抜く。
更にクナイと手裏剣を幾つか取り出す。これで勝負だ。
戦場は、さっきまでのゴブリンライダー戦とは少し離れた場所だ。
ここでなら、皆に干渉されなくて済む。
(まずはアクティブスキル、フルパワーコンタクトを使用。これで攻撃力1.5倍。)
まずは第一段階。クナイを手に持ち、ゴブリンに狙いをつけて。
(次、精神コマンドの必中を使用、これで命中率100%。更に熱血も使用、攻撃力2倍。これは外せない。)
よし! これで第二段階。準備は整った、後はやるだけ。
ゴブリンに接敵し、小太刀を構えながら勢いよく駆け出した。
自分でも驚きの速度が出ている。「身体能力極強化」のスキルは優秀すぎる。
合わせて「スピード」レベル1のスキルもある。
これでついてこられたら、もうお手上げだ。
今の俺の敏捷に関するスキルは、こんなものだからな。
だが、それは杞憂だった。ゴブリンは俺の動きについてこれない様だ。
よし、いけるか!
相手との距離は大体10メートル程まで接近して、クナイを渾身の力で投擲。
クナイは真っ直ぐ飛んでいき、ゴブリンの胴体に直撃した。
クナイは深々と突き刺さっている。
「ギィヤア!」
「よし! かなりのダメージを与えた様だ。」
だが、ゴブリンはまだ倒れない。
熱血必中フルコンの合わせ技だぞ! これでも倒れないってどんだけタフなんだよ!
間違いない、こいつはエースモンスターだ。
しかもレベルはおそらく10はある。強敵だ。
今度はゴブリンの攻撃だった、二つある石斧を一つ振りかぶって投げてきた。
その速度は常軌を逸していた。物凄い速さで飛来してきて、避ける事が叶わなかった。
飛んできた石斧が俺の体のお腹部分に当たって、ズドムッという鈍い音がして、俺はその場で屈み込む。
「いってえええーーーー!」
目の前に赤い色で7と数字が表示された。ダメージ7という事か。
残りのHP11。あと一撃ぐらいはなんとか耐えられるかもしれんが、これは痛い。
マジでシャレになってない。動きが鈍る。このままこうしていては狙われるだけだ。
俺は急ぎ立ち上がる。
しかし、ここで更にゴブリンはこちらに接近してきて、勢いよくジャンプし、飛び掛かってきた。
「ギャアーー!」
(やらせん!)
俺はすぐさま対処する為、小太刀を構え、ゴブリンの向かって来る攻撃態勢を逆手に取った。
回避出来ない事を想定して前方にダッシュ。
ダメージ覚悟で小太刀を水平切りし、そのまま俺とゴブリンは交差する。
お互いダメージを喰らい、10と表示された。
直後に俺は体を捻り後ろを向き、その反動を利用して手裏剣を投げる。
(いけっ!)
手裏剣は勢いよく回転しながら飛び、ゴブリンの背中に刺さる。
よし! もうかなりのダメージを与えた筈だ。
俺の残りのHPは1。ギリギリの戦いになってしまった。
「何が悲しくてゴブリンと死闘を演じなきゃならんのだ!」
俺はレベル6だぞ、まあ、ゴブリンのレベルは解らんが、おそらく10はあると思う。
しかし、それにしてもこのゴブリンは本当にタフだな。まだ倒れない。
こっちもあと一回精神コマンドが使えるが、さて、どうする次の一手。
俺の残りのヒットポイントは1。
ここで精神コマンドの「不屈」を使っても、もしダメージを喰らったらHP0になり、俺は昏倒する。
そうなったら他の皆の所へゴブリンが向かい、サキ小隊とナナ小隊の合同小隊は全滅だ。
それだけは何としても阻止しなければならない。
つまり、俺がこの場を何とかしなければならない。
「さーて、やるか。」
精神コマンドの「熱血」を使用した。これでもう精神コマンドは使い切った。
後はやってみるしかない。俺はアイテムボックスから手裏剣を取り出し、構える。
狙いはゴブリンの頭。
ゴブリンも、こちらが何かやってくるものと警戒しながら近づいて来る。
(距離は大体こんなもの、狙いも付けた。必中とフルコンの効果はまだ継続中。ここで決めるしかない!)
俺はゴブリンに対して、思い切って手裏剣を渾身の力で投擲。
手裏剣は高速回転しながら飛んでいき、何の気もなしにゴブリンの頭部に直撃した。
「グギャアアーー!?」
断末魔とともにゴブリンは後ろへと吹っ飛び、そのままパタリと倒れ、ピクリとも動かなくなった。
(まだ安心は出来ん。)
俺はすぐさまゴブリンに接近し、小太刀をゴブリンの頭に深々と突き入れた。
「ギャアアアアアァァーーー………………」
やはり、死んだふりをしていたか。
まあ、これで止めを刺した訳だから、もうこいつは動かない。
ふう~~やれやれ、この場は何とかなったか。
もうこんな分の悪い賭けは懲り懲りだ。全てを使い切った。もう何も出ない。
「あ、そうだ、回復薬を飲まなきゃ。」
俺はアイテムボックスから回復薬を取り出し、蓋を開けて一気に飲み干す。
すると体が一瞬ポワンと光だして、体中の痛みや疲れが、嘘みたいに綺麗さっぱり無くなった。
凄いな、これが回復薬の効能か。大したもんだ。
{エースモンスターを討伐に成功しました}
{経験点500点を獲得しました}
{ショップポイントを100ポイント獲得しました}
{スキルポイントを5ポイント獲得しました}
おや? いつもの女性の声がファンファーレと共に聞こえたぞ。
そうか、エースモンスターを討伐しても経験点が貰えるのか。こいつはラッキーだな。
丁度その時、この戦いを具に見ていた人が一人居た。メリー伍長だった。
「あ、あの~、大丈夫です? なんか凄い戦いだった様な気がするです。貴方は一体何者なのです?」
しまった、見られていたか。
まあ、しょうがない、ここは適当に誤魔化してお茶を濁しとくか。
「ああ、これはメリー伍長。お疲れ様です。いやー参りましたよ、いきなりこのゴブリンが襲い掛かってきて、慌てて対処したので少しダメージを負ってしまいましたよ。いやー回復薬があって良かった。ホント。」
俺は誤魔化したが、メリー伍長は不思議そうに顔を傾け、何かを思案している様子だった。
「そ、そうですか? そんな事があったのです? 兎に角皆と合流するです、ここはもう安全です、早く行きましょうです。」
「そうなのですか。解りました。了解です。」
こうして、何事もない振りをして、俺は皆と合流した。良かった。みんな無事だ。
ホント何とかなって良かった。ニールの奴も大した事なかったみたいだし、作戦は無事終了だな。
そして、片道二日間の行程を、何事も無く無事に終了し、港町ハッサンへ到着した。
街道警備任務は、残り半分のクラッチの町への帰還だけとなった。
港町ハッサンでちょっと休息を取るそうだ。酒場へみんなで出掛けるのであった。
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