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第33話 小隊員編入テスト
しおりを挟む「よーし、お前達、準備出来たぞ。やり方は解っているな、兎に角ターゲットマークに攻撃を当てていけばいいんだ。できるな!」
「「「 は! 」」」
サキ少尉に説明されて、色々と思い出してきた。
この魔道具を使ってのテストは、こちらの攻撃が当たった時に、その攻撃のダメージが表示されるという機能がある。
それを使ってのテストという事は、二人の女性仕官の小隊に入る為に、こっちの実力を確かめたいという事だな。
前回の入隊試験の時は、俺の番の時、小石を投擲して、魔道具を壊してしまった過去が蘇る。
今度は失敗しないように、力をコントロールしなくては。
スキル「ストレングス」レベル5は、やはり強力すぎるスキルだ。
加減って難しいが、やってみる。
「よーし、まずはニール二等兵からだ! その背中の大剣は飾りじゃないってところを見せろ!」
「は! いきます!」
ニールがまず一番手でテストを開始した。
ニールは背中に背負った大剣のバスタードソードを手に持ち、引き抜いてから身構える。
標的との距離は、大体10メートル程離れている。
それにしても、ニールの奴、また両手持ちの大剣なんてものを持ち出してるなあ。
確かに威力はあるが、命中率が悪いんだよな、あれ。
「いくぜえええ!」
ニールが武器を構えながら走って行き、ターゲットマークに近づく。
もう攻撃範囲に入ったと思ったらまだ接近して行き、えらく中途半端な距離で攻撃を開始した。
「ふんっ!」
だが、当然攻撃が当たらない、無理も無い。
攻撃範囲を、まるで考え無しに武器を振っている。
あれでは折角の大剣が泣いているぞ、ニール。
「ごらぁー! ニール二等兵! 動かない標的に攻撃が当たらないとはどういう事だぁー!」
「も、申し訳ありません! もう一度チャンスを。」
「当たり前だ! ダメージが解るまでやってみろ!」
「は!」
ニールは攻撃を外し、サキ少尉に怒られていた。
どうやら攻撃が当たるまで続けていいらしい。
大剣を扱うには、それなりに熟達した腕前が必要になってくる。
ニールの場合、器用の能力値が低いのかもしれない。
だから攻撃が当たらないんだと思う。まあ、それだけでもないけど。
しばらくニールは、ターゲットマーク相手に攻撃を続け、五回目でようやく攻撃がヒットした。
ダメージ表示は流石の大剣で、12ダメージだった。
「やった、当たった!」
「………ニール二等兵、五回攻撃してようやく当てたのか。ダメージは12と大剣を使ったにしては大した威力だが、貴様の場合武器攻撃の命中率が低く過ぎる。私の隊に入るには微妙だな。」
「す、すいません。」
ほう、ダメージ12か。ニールの奴、中々の威力じゃないか、攻撃が当たればだが。
ニールはしょんぼりしながら俺達の所へと戻って来た。
うまくいかなかった事を悔んでいるのかもしれんな。
「よーし! 次! リップ二等兵!」
「は!」
次はリップの番か。
リップは後ろ腰に携えた鞘に収まったダガーを抜き出し、片手で持って身構え、勢いよく前方にダッシュした。
只真っ直ぐ接近するのではなく、少し斜めに走り出し、弧を描くような軌道で接近。
標的の攻撃範囲に入ったと同時に、ダガーを突き出した。
ターゲットマークの中心を捉えている。流石リップだ。
「ほ~う、攻撃は命中、しかも真ん中を捉えているな。ダメージは7か。ダガーを使っているにしては中々の威力だ。よし! リップは私の小隊に入れ。」
サキ少尉がリップを誉めると、横からナナ少尉が口出ししてきた。
「ちょっとサキ、何勝手に決めているのよ。リップ二等兵はわたくしに譲って頂戴な。わたくしが極度の男嫌いなのは知っているでしょう。」
「ナナ、私は実力を見て判断してんのよ。リップは私の隊に必要だよ。」
「そこを何とかしてよ。同期のよしみでしょ、わたくし、男の小隊員なんて必要無いわ。」
「私だってむさくて、粗野でゲスで薄汚い野郎ばっかの小隊員なんて嫌なのよ。」
「そこを何とか、ね。」
「………しょうがねえなあ。一つ貨しだよ。いいね。」
「ありがとう、サキ。」
何だか酷い言われようだな、サキ少尉もナナ少尉も男嫌いなのかな?
男に関して、何かぞんざいな扱いな気がする。
そうか、リップはナナ少尉の隊に配属されるみたいだな。
みんなバラバラに配属されるかもな。
「よーし! 次、ジャズ上等兵!」
「は!」
おっと、どうやら俺の番のようだ。
これはあれだな。あまり本気を出しちゃいかんな。
二人共プライドが高そうな性格をしていそうな女性みたいだし、ここは一つ、力を抜いて気楽にやってみよう。
俺は腰に提げたショートソードの柄を持って引き抜き、そのまま構える。
標的との距離は、大体10メートル。
俺は一気に駆け出し、真っ直ぐ向かって接近し、標的手前で剣を水平に構え、そのまま水平切りを叩き込む。
力は抜いている。大丈夫だ。今度は魔道具を壊していない。
「どれ、ジャズ上等兵の実力はっと。」
サキ少尉が魔道具の方を見て、俺のダメージ算出の結果を見ていた。
大丈夫、力はちゃんと抜いた。本気も出していない。
「ほ~う、こいつは驚いた。攻撃は命中、ダメージ11か。ショートソードを使ったにしては上出来だな、いや、中々の高威力だな。よし! ジャズ、貴様はサキ小隊に来い。」
「は、はい。」
ほっ、よかった。何とかなったか。
それにしてもあれだな、ダメージ11はちょっと高い数値だな。
あっそうか、俺、剣術LV2のスキルを持っていたっけな。
だから剣を使うと、威力と命中率が上がっているのか。
でもまあ、これで良かったのかもしれんな。
「さてと、これでリップとジャズの編制は決まったな。問題はニールか、こいつ威力はあるけど命中率がなぁ。さて、どうするか。」
「わたくしは嫌よ、男の隊員なんて、わたくしが男嫌いなのは知っているでしょう。」
「私だってヤローばっかりの小隊員なんていらねえし。どうすっかな~。ナナ、本当にいらない?」
「必要ありません!」
「はいはい、わかったよ、それじゃあしょうがねえ。ウチで面倒見てやるか、おいニール。貴様は我がサキ小隊に配属だ。いいな!」
「は、はいぃ!」
やれやれ、どうにかこれで、全員の配属先が決まったようだぞ。
俺とニールは、サキ小隊に配属だ。
リップはナナ小隊への配属が決まったようだ。
これでサキ小隊は三人編制の体制になったし、ナナ小隊はあと一人隊員が加われば小隊として機能する事になる。
まあ、俺達サキ小隊が先に任務を与えられる可能性があるかもな。
小隊は、三人編制で行動する事と決まっているから。
ここで、サキ少尉から俺達に言葉があった。
「よーし、お前等、まずはサキ小隊結成だ。今後はこの小隊編制で任務に就く事になる。気合入れろよ。いいな!」
「「 はい! よろしくお願いします。サキ隊長! 」」
それを傍から見ていたナナ少尉は、冷ややかな視線でこちらを一瞥し、「フンッ、男なんて」と小さな声で漏らしていた。
ナナ少尉は本当に男嫌いなんだな。
「さあ、リップさん、私達は他の女性隊員を探しに行きますわよ。付いてらっしゃい。」
「は!」
と、ここでリップとは別れる事になった。
これからはニールと共に、サキ小隊で頑張っていかなくては。
「よし、お前等、まずは自己紹介からだ。まず私だ。名前はサキ、階級は少尉、職業は軽戦士でクラスはフェンサーだ。武器はエストックを使う。こう見えてスキルを2つ習得している、それは追々教える事にする。以上だ。次はお前達の事を教えろ。」
「は! 自分はニールと言います。階級は二等兵、職業は平民でクラスはファイターです。武器は両手持ちの大剣を得意としております。よろしくお願い致します!」
ニールの自己紹介が終わり、次は俺の番だ。
「自分はジャズ。階級は上等兵、職業は………忍者であります。クラスは下忍。武器は短めの剣と、投擲武器ならナイフ、ダガー、手裏剣、クナイ、投げ槍などであります。今後ともよろしくお願い致します!」
こうして、サキ小隊は動き出した。
さて、サキ少尉も程々に男を軽んじているきらいがあるんだよなあ。
これから先、どうなるのかねえ。
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