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第14話 軍靴の足音 ③

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 これからアリシア王国軍の入隊実技試験が始まるのだが。

まとに向かって、何でもいいので攻撃を与える事、と説明された。

何でも、というのは武器、魔法、道具、などのあらゆる方法を使ってという事だろう。

さてと、自分には何の武器が性に合っているのかな。

キエラ中尉が試験内容の説明をしだした。準備の方はいいみたいだ。

「みなさんにはこれからあのまとを攻撃していただきます、あのターゲットマークには特別な模様で書き込まれていて、一種の魔道具になっています。攻撃が的に命中すると同時に威力が算出される仕組みになっていて、それぞれの攻撃に対して表示されるようになっています。」

なるほど、つまりあの的に何でもいいので攻撃を当てればいい訳か。

俺は魔法が使えない、かと言って剣も使った事が無い。

この世界に来てやった事といえば、小石の投擲とアサシンダガーの投擲ぐらいだ。

ふーむ、今のところはその線でいった方がいいのかもしれない。

「それではまず、ニールから試験を開始して下さい。その後、リップ、ルキノ、ジャズという順番で行っていただきます。」

「よし! まずは俺からだな。俺の使う武器はこれだ!」

そう言いながら、ニールと呼ばれた男は両手持ちの大きな幅広の大剣を選んだようだ。

あんな重そうな大剣、うまくいけるのか? 

ニールはこっちと同じ様な体格をしている、歳も同じぐらいか。

「うおおおーーー!!」

ニールは気合を入れながら的へ向けて一直線に駆け出し、そのままの勢いで大剣を振り下ろした。

しかし。

「あれ? 当たらなかった。」

ニールの攻撃はスカった。

その後、ニールは的の前に立ち、更に武器を「よっこらしょ」と振り上げて、「せい!」と掛け声とともに振り下ろす。だが。

「あれ? また当たらない。何でだ?」

ニールは動かない的相手に、攻撃をことごとく外していた。

もしかしてあいつ、武器が合ってないんじゃないだろうか?

だが、何度か武器を振り回している内にとうとう攻撃が的に当たった。

5回中1回の確率で当てたといった感じだな。

ニールの器用の能力値は意外と低いのかもしれない。

キエラ中尉は木の板のような物を見て、何やら紙にペンを走らせている。

おそらく記録を取っているのだろう。

ニールはぜえぜえと息を乱し、こちらに戻って来た。

キエラ中尉が今の結果をニールに伝える。

「ニール、君は攻撃回数が5回で、攻撃を当てたのが1回、そしてその当てた攻撃の威力は10ダメージだった。これは大剣を使ったにしては中々の数字だよ。攻撃を当てる工夫はこれからの課題だね。それでは次、リップ、試験を始めて下さい。」

「はいよ。」

リップと呼ばれた女性はしなやかな体をしていて、歳は十八前後といった感じだ。

選んだ武器はダガーみたいだ。

この人は斥候スカウト盗賊シーフのようなコマンド兵といった兵種なのかな?

リップはダガーを逆手に持ち、素早く動き出した。

速い! なんという身のこなしだ。

あっという間に的に急接近し、腕を右フックの要領で素早く振り抜き、ダガーを見事一撃で的に当てていた。やるなあ。

キエラ中尉が驚きの表情で、リップに結果を伝えた。

「リップ、君は凄いね。攻撃1回で命中させ、威力も申し分ない。ダメージ6、ダガーだとこれぐらいだけど、これは即戦力が期待できるね。次、ルキノ、試験を始めて下さい。」

「わかりました。」

今度はルキノと呼ばれた男だ、歳は三十代半ばといった感じで、自前の杖を持っている。

ローブを着ているのでおそらく魔法使いだと思う。

ルキノは的から離れた距離に立ち、杖を掲げ、何かの詠唱をしている。

「氷よ、敵を穿て。《アイスニードル》」

なんと、ルキノは氷結魔法のアイスニードルを使った。やはり魔法使いだったか。

ルキノの放った魔法は真っ直ぐ飛んでいき、的に攻撃が命中すると対象を氷漬けにした。

流石魔法。いいなあ、自分にも魔法が使えたらなあ。

魔力値0だもんな。自分には才能が無いんだろうな。

キエラ中尉もこれには流石に舌を巻いていた。ルキノの攻撃魔法の結果を中尉が伝える。

「流石魔法ですね、しかも氷結系魔法とは、ダメージは流石の14です。いやー、ここにも即戦力になりそうな人がいましたか。これは期待できますね、今回の新人は。次、最後にジャズ、試験を始めて下さい。」

「はい。」

さて、いよいよ出番か。

最初は剣にしようと思っていたが、みんなそれぞれ得意な物で試験を受けている。

自分も今できる得意な物といったら、やはり投擲だろうか。

本当は剣を装備して試験に臨みたかったが、戦士とはいえまだまだ半人前もいいところだ。

ここは一つ、投擲でやってみるか。

地面に落ちている小石を拾い上げ、少し的から離れた場所に立ち、狙いをつけて小石を投げる。

小石は真っ直ぐ飛んでいくのだが、射出速度が異様に速かった。

的に命中と同時にバキバキッと音がして、的が粉々に壊れてしまった。

(あ! そうか、「ストレングス」のスキルがレベル4だった。加減って難しい。)

ストレングスのスキルは筋力の値に影響し、能力値が表示される以上の効果がある。

筋力は11だが、ストレングスのレベル4ともなると、相当の威力がある。

ゲーム「ラングサーガ」でもそうだった。

キエラ中尉が壊れた的を見て、引きつった表情でこちらに結果を伝える。

「な、なるほど。投擲ですか。しかし、ここまで威力があるのも珍しいですね。えーと、ダメージは?」

キエラ中尉は結果が表示される木の板を見て、絶句していた。なんだろうか?

「ダ、ダメージ43………え? 43!? だって、投擲だよね。ただの………こほん、えー、ジャズ君、君の投擲は規格外です。ターゲットマークの的も壊れてしまいましたし、ただ、結果は凄いと思います。」

「ど、どうも。」

言葉が出てこない。しまったな、もう少し加減すべきだった。

まさか的が壊れるとは思って無かった。

「さ、さて、以上で実技試験は終了となります。みなさん、お疲れ様でした。みなさんの試験結果が出るまで先程の第三会議室にて待機していて下さい。以上、自分はここで失礼いたします。」

そう言って、キエラ中尉はこの場を後にした。

さてと、こちらも第三会議室へと向かうか。

目的地へと足を向けた時、ふとニールとリップから声を掛けられた。

「お前スゲーじゃん。やるなあ、俺と歳はそう違わないのに、大したヤツだよ。」

「ホント、中々やるじゃないあんた。今まで何やってたの?」

「いや~、大した事はやってないですよ、只の一民間人でして。」

そんな感じでニールとリップと知り合いになった。

まだまだ先は長そうだが、気の合いそうな仲間ができたのはよかったと思う。

 第三会議室に到着して、しばらく待機していてもニールとリップはこっちと話していた。

出身はどこか? とか色々聞かれたが、答えに困る。

まさか日本から来ましたとは言えない。適当にお茶を濁してはぐらかす。

「うーん、出身はどうなんだろう? 俺、わからないんだよね。記憶が曖昧で。」

「なんだよそれ、まあいいや。俺達同じ部隊に配属されるといいな。」

「ニール、あんたとは腐れ縁だからもういいよ。あたしはジャズと組みたいね。」

しばらく話していると、キエラ中尉が部屋に入ってきた。皆は一斉に黙り込む。

「みなさん、お待たせしました。それでは試験結果を発表します。今回の試験を受けた人数は四人。いずれも素晴らしい逸材でした。それでは試験結果を伝えます。」

さて、合格しているだろうか? ちょっと不安だな。

だけどここまで来たんだ、もし受かったら、やるからには真面目に軍の仕事をしていこう。












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