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第4話 ザコキャラ転生 ③
しおりを挟む「使えねえ………まったく使えねえよお前、どーすんだよ、この矢傷と額のたんこぶ、ジャズ、オメーしばらく雑用係な。」
「はは、すいません………。」
(初から山賊に使われる気など持ち合わせちゃいない)
自分と山賊の男は森の中を歩いている。
荷馬車襲撃が失敗に終わり、ほっとしている。
が、山賊の男はその後暴れる様に木に八つ当たりし、それから山賊の砦へ。
えーとポエム砦だったか、今はその山賊の拠点へ向けて森の中、歩を進めている。
「頭に何て言やぁいいんだよ、獲物には逃げられるわ、護衛には手傷を負わされるわ、これじゃあ頭の機嫌がいい事を期待するしかねえな。まあ、奴隷商から奪った女を頭が好き勝手してるだろうから、機嫌がいいと思うがなあ。」
山賊の男はこちらに一瞥する事も無く、淡々と喋っている。
自分は山賊のアジト、ポエム砦の場所を知らないので男の後を黙って付いて行くだけだ。
森の中というのは平坦ではない、起伏に富んでいるので登ったり降りたり。
倒れた木などがある為、それを跨いだり、草などを避けながら進む。
10分も歩けば足が疲れてくる。
特にジャズは太っているので歩く度に膝が痛い。男に付いて行くのがやっとだ。
「オメーのせいだぞ、護衛の男の方を殺して女の方を攫ってくりゃあ、少しはマシなアガリだっただろうが。」
「はは、すいませ………。」
こちらが謝罪を言い終わる前に、山賊の男はこちらを向いてスタスタと近づきてきた。
腕を俺の首元まで伸ばして服を掴み上げ、後ろにある木に背中をぶつけた。
怒りの表情に顔を歪ませ、怒気を含んだ声で迫ってきた。
「まさかとは思うが、テメーわざとあいつ等逃がしたんじゃねぇだろうな………ああ!!」
怖い怖い、冷や汗を垂らしながらも相手の気に触らない様に答える。
「ま、まさか…そんな事しませんよ、俺に何のメリットがあるんですか……。」
(まあ、犯罪を犯さなくて済んだ事は良かったのだが、どうせ山賊団を抜ける予定だし。)
こっちがビビッている事に、山賊の男は「チッ」と舌打ちし、自分の首元から両手を離した。
そして、また砦がある方向へ歩き出した。
「いいかジャズ、頭がいつも言ってるだろ、「やられたらやり返せ」って、この前襲撃したモー商会の荷馬車の護衛に、仲間が二人もやられちまったんだぞ、今回の襲撃はその仕返しの為に頭に言われての仕事だってのに、テメーときたら足引っ張りやがって。」
(知らんよ、そんな事。)
「ジャズ、テメーが頭に報告しろよ!、俺はやらねーからな!」
「は、はい。」
その後は沈黙したまま森の中を歩き続け、山賊の砦、ポエム砦に到着した。
砦は石造りの頑丈そうな立派な建物だった。
おそらくこの国が何かを監視する為に建設したと思われる。
そこが空き家となり、山賊達が勝手に住み着いたといった感じだ。
砦の中へと入り、まず目に付くのはその汚さだった。
何かの鳥の肉の骨などの食い散らかしたゴミが至る所に散乱している。
砦内にある部屋には他の山賊達が居て、みな異様な臭いを放っていた。
まるで何日も身体を洗っていない様な、不潔極まりないプーンモワーンプーンツーンとした刺激臭が漂ってくる。
こいつ等ちゃんと体洗ってるのか? 掃除する気配も無いし。
自分も掃除する気は無い。長い事ここに居るつもりも無い。
ここの環境は最悪だ、早いとこ山賊団を抜けねば。
「おいジャズ、頭に報告しに行って来い、テメーのせいでケチが付いたんだからな。」
「わ、わかりました。」
山賊の男に言われ、山賊の頭目の下へと向かった。
(さてと、どうなるのかな。)
砦内にある扉の付いた部屋の前まで来た。
おそらくこの部屋が山賊の頭目、ポエムの部屋だろう。
扉をノックし返事を待つ。
間髪入れず「入って来い!」と言う声が聞こえ、恐る恐る扉を開け、中へと入る。
「失礼します、お頭。」
「おう、ジャズか。」
山賊の頭目は裸でベットに腰を下ろしていた、山賊の頭目もこの部屋も汚い。
食い散らかしや酒瓶などが至る所に転がっており、ゴミも溜まっている。
そして汚らしいベットの脇に女の子が裸でうつ伏せで寝ており、スンスンと泣いていた。
攫ってきた女というのはこの娘の事だな、まだ女の子じゃないか、可哀想に。
部屋に入って直ぐ、部屋を見渡していると山賊の頭目、ポエムが平坦な声で問い掛けてきた。
「それでジャズ、首尾はどうだった? ちゃんと始末は着けて来たんだろうな?」
この問いに、申し訳無さそうにしながら答える。
「そ、それが、失敗しました、荷馬車に逃げられて。」
この言葉を聞き、ポエムはユラリと立ち上がった。
ゆっくりとした足取りで近づき、いきなりこっちの顔面を殴り飛ばしてきた。
(いてええーー、めっちゃ痛い、血の味がする、口の中が切れた。なんつー筋力してやがる!)
態勢を崩したが、なんとか踏み止まって倒れなかった。殴られたところの顔は痛い。
すると目の前に、-2と何かが赤色で数字が表示された。
なるほど、今のでダメージ2という事か。
山賊の頭目なんてやっている筈だ。たかがパンチ一発でこのダメージ。流石だよポエム。
それかジャズの防御力が低いのか。
「テメージャズ、俺ぁいつも言ってるよなぁ、「やられたらやり返せ」って、今回の仕事は以前の荷馬車襲撃の時、モー商会のお抱え護衛に二人もやられた、その仕返しだってなぁ、それなのに失敗しましただぁ!! 何やってやがる! 二人も雁首揃えて役立たずが!!」
ポエムは一頻り罵声を浴びせると、そのままベットへと戻って行き、ドカッと腰を下ろした。
「もういい、ジャズ、テメーは寝てろ、もう行っていいぞ。」
「は、はい、失礼します。」
うーむ、今この場で足を洗いたい、なんて言ったらポエムの機嫌が悪い今、何されるかわかったもんじゃない。
勇者がいつ来るのか解らないが、今は大人しく様子見した方がいいな。
本当は早いとこここを抜け出したいんだが、まあ、今は止めておくか。
ポエムの部屋を出て、他の山賊達が寝転がって待機している場所まで移動した。
自分の寝床もあるが、簡素な藁を敷き詰めただけの簡単な寝床だった。
かなり汚れている。汚い。仕方ない、今はここで寝るか。
寝床までゴミを踏まないように移動し、横になり目を瞑り体を休める。
(やれやれ、ようやく自分の時間か。)
そう言えば今の状態ってどうなっているんだ? 自分の事だからしっかりしとかないと。
ステータス表示とか無いのかな? ちょっとやってみよう。
「ステータス表示」と頭の中で思い浮かべた。
すると目の前に、空中に文字が表示され、簡素ながら自分のステータスが表示された。
(おお! 出て来た。なるほど、こうやって頭で思い浮かべるといいわけか。どれどれ、俺は何者で何が出来る奴なのかな?)
目の前に表示された情報には、こう表示されていた。
ジャズ LV1 HP4
職業 山賊
クラス ローグ
ふむ、レベルは1か。
ヒットポイントも4という事はさっきパンチを喰らったダメージが2だから、最大HPは6という事だな。
職業は山賊、これはまあしょうがない。
しかしクラスはローグか、つまりは追い剥ぎ。本当に雑魚キャラなんだな。
クラスとは、その職業のランクみたいなものだ。
例えば職業が戦士なら、クラスは初級はファイター、上級職ならバトルマスターという様にクラスランクがある。
ちなみにローグの上級職は無い。このままだと自分は只の山賊のローグにしかならない。
はやいとこクラスチェンジしないと。
更に下の方に目をやる。
筋力 2 体力 3 敏捷 1
器用 6 魔力 0 幸運 3
………は? 何このステータスの低さ、こんなんでどうやってこの世界渡り歩けっていうのさ。
ゲーム「ラングサーガ」だと普通どのキャラクターでもレベル1で平均能力値は10そこそこあるのに、ホント雑魚なんだな。
魔力0って事は魔法の才能は無し、という事か。
折角剣と魔法の世界なのに。
更に下の方に目をやる。
ユニークスキル
・メニューコマンド
・精神コマンド
スキル
・なし
経験点0点 ショップポイント999 スキルポイント10
ほう、一応ユニークスキルはちゃんとしたものがあるみたいだ。
後で検証してみよう。
スキルはなしか、まあ雑魚キャラだし、追々スキルを習得していけばいいか。
経験点という事はレベルアップはTRPG方式か。
ショップポイントとは言ってみれば通販みたいなものだ。
メニューコマンド内にある「ショップ」という項目を使って、様々な品物をポイントと引き換えに購入するためのポイントだ。
スキルポイントも、スキルを習得する上で必要になってくるポイントだ。
「ん? まだ下の方に表示をスクロール出来るな、何があるのかな?」
更に下の方に目をやる。するとそこには………。
犯罪歴
・無銭飲食
・窃盗
・傷害 (重罪)
「おいぃぃ!? ジャズゥゥゥ!? お前何してくれてんのおォォォーーー!!!」
「うるせえーぞジャズ! 静かにしやがれ! お前何自分で自分に怒ってんだ?」
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