22 / 33
22話 パールさんの魔法授業 ③
しおりを挟む俺は今、魔法を使おうとしている。パールさんの魔法授業で魔法の事を少しずつ学んでいて、いよいよ実践的な事をする事になった。
回復魔法は誰かを癒したい、という思いが大切だとパールさんは言っていた、精神論ってやつだな。慈愛の心ってやつなのかもしれない。・・・なんだか俺らしくないな。俺はそんな殊勝な事は考えていない。
「それでは、ヨシダさんに聖印、ホーリーシンボルを渡しましたので、これから神聖魔法の回復魔法を使ってみましょう、準備はよろしいですか? 」
「はい、パールさん、宜しくお願いします」
「回復魔法には主に初歩的なハーフヒールからヒール、ハイヒール、エクストラヒールと回復量が増えていきます、当然、それに比例してマナの器の消費マナも大きくなります、ヨシダさんのマナの器を考えますと、ここはやはり、ハーフヒールを使っていきましょう」
「はい」
緊張してきた、けど、やってみる。
「ヨシダさん、まずはマナを練り上げて下さい」
「はい」
俺は自分の体の中に宿るマナを右手の手の平に集めるよう、イメージしてみる。
「うん、いい感じですね」
少しずつ、俺の右手にマナが集まりだして、手の平が温かくなるのが解る。
「その調子です、ヨシダさん」
もう大分右手にマナが集まってきたところで、変化が起きた。うっすらとだが、俺の右手の手の平から、なにか光りだしたのだ。自分でもびっくりだ。
「やはり、間違いありません、ヨシダさんは神聖魔法に親和性があるみたいですね」
パールさんの説明にカチュアちゃんも驚きを隠せない様子で呟く。
「ヨシダさん、すごい、もう魔力《マナ》をここまで操れる様になったの、私もうかうかしてられない」
俺の右手にマナが集まり、光輝いて温かく感じられる様になった。そこで、パールさんから更に指示を受ける。
「ヨシダさん、今から私の言う言葉を復唱して下さい、回復魔法を使う時の詠唱です、よろしいですか、」
「はい」
「ヨシダさん、まずは自分を癒したいと強く念じながら唱えるようにして下さい」
自分を癒したい、か、よーし、やってみる。
自分を癒す、自分を癒したい、自分を治したい、・・・癒したい。
「私の後に続いて下さい、・・・癒しの光よ・・・」
「癒しの光よ」
「彼《か》の者を癒したまえ」
「彼の者を癒したまえ」
「ハーフヒール」
「《ハーフヒール》」
「今です、ヨシダさん、自分の体に右手を触れて下さい」
「は、はい」
俺は自分の体に右手をかざし、癒したいと念じる。
俺の右手が光輝いて、なぜだか温かい温《ぬく》もりを感じた、自分の体が軽くなった気がして、体調はすこぶる良好だ。身体全身が温かくなり、ぽかぽかとしてきた。気持ちいい感じだ。
「・・・どうやら成功の様ですね、ヨシダさん、今貴方は回復魔法のハーフヒールを使ったのですよ」
「そ、そうですか、やりました、よかった、ちゃんと魔法が発動して、・・・だけど・・・」
何故だろうか、身体は元気になった感じなのだが、気分が優れない、ちょっとした脱力感を感じる。
「パールさん、身体は元気になったのですが、なんだか気分が優れません」
「魔力《マナ》を使ったのです、ヨシダさんのマナの器は人よりも少ないので、魔力枯渇状態に陥っている可能性があります、ヨシダさん、今日はもうこれ以上魔法は使わないで下さい、いいですね」
「は、はい・・・」
これが魔力枯渇状態か、確かにこれはキツイ、体はなんともないのに、変な脱力感がある。マナを使うとこうなるのか。これは確かに一日一回を限度にしないとやっていけない。
「マナは一日休めば回復致します、それ以外にも食事を取る事によって回復することもあります、ヨシダさん、とにかく今日は魔法を使わないで下さいね」
「は、はい」
それにしても、遂にやったぞ、俺にも魔法が使えたじゃないか。なんだか嬉しい。勿論、スキル「回復魔法」のお陰だというのはわかっているのだが、それでも魔法を使えたというのが嬉しいのだ。なんだか顔がにやけてしまう。疲がとれていて、心地良い。脱力感はあるのだが。
「ヨシダさん、魔法は使い続ける事によって上達していきます、その聖印は暫くの間ヨシダさんに預けるので、機会があればいつでも魔法が使える様に、日々鍛錬あるのみですよ、魔法の練習をするようにして下さい、いいですね」
「は、はい、ありがとうございます、パールさん」
そこで、カチュアちゃんが目を細めながら本音を漏らした。
「いいな~、ヨシダさん、魔法が使えて、私も早く魔法が使える様になりたいな~」
パールさんはカチュアちゃんに優しく言葉を掛ける。
「カチュアさん、焦らなくてもいいのですよ、ゆっくり時間を掛けて、少しずつでいいですから日々を鍛錬に費やせていけば、いつかはマナを感じられる様になりますから、焦らずやっていきましょう」
「は~い、・・・だけど、才能が無いとそれも難しいのよね、あ~あ、私は何時になったら上達するのかしら」
ふーむ、こればかりは俺でもうまく説明できないな、大体、俺はスキルのお陰でうまくいったと思っているから、自分の力ではないと思っている。
「カチュアちゃんも頑張ればきっとうまくいくよ、諦めないで」
「ヨシダさんはいいわよ、魔法が使えたんだから、私なんてマナを練るところからもう才能が無いって思っているから・・・」
パールさんがカチュアちゃんの目線に顔を合わせて慰めの言葉を掛ける。
「大丈夫よカチュアさん、魔法使いはそんなに簡単になれるものじゃありませんからね、日々の精進が必要になってくるのですよ、」
「だけど、ヨシダさんはもう魔法を使える様になったじゃない、私よりも後に教えてもらったのに」
「うーん、こればかりは才能としか言えないですね、ヨシダさんは元々魔法の才があったと思います、ただ、魔力《マナ》の器《うつわ》が小さいので、あまり連発はできないと思いますけどね」
「そうだよ、カチュアちゃん、俺、今、脱力感を感じているから、一日一回しか魔法を使えないから、正直どうなんだろうって思うよ」
「それでもよ、ヨシダさんは魔法を使った、すごい事だと思うわよ、私も早く魔法が使える様になりたい」
何はともあれ、これで俺も魔法が使える様になった訳だ。後は魔法の練習をしていけば、その内マナの器も大きくなるのかもしれない。いざとなったらスキルを何か習得してもいいな。まあ、スキルポイントがあればの話だが。
「いいな~、二人共、魔法が使えて、私なんかなあ~」
「あら、そんな事ありませんよ、私だって一日4回しか魔法が使えませんから」
「え? そうなの、パールさん日に4回の魔法が使えるの、それはそれですごいと思うんだけど」
「それが、そうでもないのよ、私は魔法使いの中級職でクラスはメイジなのだけど、他のメイジの方は一日5回は魔法が使えると聞き及んでいますから、それに・・・」
「それに? 」
「お恥ずかしい事なのですが、私は単体攻撃魔法しか使えないんです、どうしても範囲魔法が使えないのですよ、魔法使いとしてはまだまだなのです」
「へえ~、そうだったの、意外ね」
ふうむ、そうだったのか、しかし、単体攻撃魔法だってこの前のウォーターニードルは強力な攻撃魔法だったと思うんだがな。魔法って人それぞれなのかもしれないな。
何にしても、俺も魔法が使える様になって、よかった。これからは練習あるのみだな。一日一回の魔法か、使いどころを間違えないようにしなくては。
227
お気に入りに追加
466
あなたにおすすめの小説

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~
冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。
俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。
そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・
「俺、死んでるじゃん・・・」
目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。
新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。
元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

天才ピアニストでヴァイオリニストの二刀流の俺が死んだと思ったら異世界に飛ばされたので,世界最高の音楽を異世界で奏でてみた結果
yuraaaaaaa
ファンタジー
国際ショパンコンクール日本人初優勝。若手ピアニストの頂点に立った斎藤奏。世界中でリサイタルに呼ばれ,ワールドツアーの移動中の飛行機で突如事故に遭い墜落し死亡した。はずだった。目覚めるとそこは知らない場所で知らない土地だった。夢なのか? 現実なのか? 右手には相棒のヴァイオリンケースとヴァイオリンが……
知らない生物に追いかけられ見たこともない人に助けられた。命の恩人達に俺はお礼として音楽を奏でた。この世界では俺が奏でる楽器も音楽も知らないようだった。俺の音楽に引き寄せられ現れたのは伝説の生物黒竜。俺は突然黒竜と契約を交わす事に。黒竜と行動を共にし,街へと到着する。
街のとある酒場の端っこになんと,ピアノを見つける。聞くと伝説の冒険者が残した遺物だという。俺はピアノの存在を知らない世界でピアノを演奏をする。久々に弾いたピアノの音に俺は魂が震えた。異世界✖クラシック音楽という異色の冒険物語が今始まる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
この作品は,小説家になろう,カクヨムにも掲載しています。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~
うみ
ファンタジー
恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。
いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。
モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。
そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。
モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。
その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。
稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。
『箱を開けるモ』
「餌は待てと言ってるだろうに」
とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる