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18話 武具を見繕ってみよう
しおりを挟む俺の武具を見繕って貰う為、村長さん家の納屋へ足を踏み入れた俺とギダユウさんは、そこで様々な物が置いてある棚や机の上の物を見定める。そんなおり、納屋の壁に飾られた、額縁に入れられた一枚の地図が目に飛び込んできた。
「これは・・・」
納屋の壁に飾られた地図を眺める。
「どうしたの? ヨシダさん」
ギダユウさんが俺が地図を眺めている事を不思議に思ったのか、装備品を物色している手を止めて聞いて来た。
「ギダユウさん、この地図って・・・」
「ああ、村長さん自慢の一品だよ、まだ村長さんが冒険者をやっていた頃に手に入れた物らしいよ、俺が子供の頃よく聞かされた話でね」
「これは・・・世界地図・・・なのですか? 」
「ああ、そう聞いているよ、最も、この地図は未完成らしいけどね」
「未完成? 」
「なんでも、村長さんが自分で冒険した所しか書き込んでいないらしいよ、流石に王侯貴族が持っている完全な世界地図には遠く及ばないらしいけどね」
「そうですか、」
地図を良く見ると所々空白になっている箇所がある、だが、しかし、それでもこの世界地図の形は俺が知っている地球の世界地図とは明らかに違う・・・。
「昔はよく村の子供達を集めて、この地図の前で村長さんの冒険話を聞かされたものだよ、懐かしいな」
・・・やはり、俺の知っている地図とは違う、ここはやはり異世界なんだな・・・。
「ヨシダさん、ほら、この二番目に大きい大陸、このセコンド大陸が今俺達が居る大陸だよ」
そう言って、ギダユウさんは目の前の地図の右側に描かれている大陸の形をした所に指を添えた。
「このセコンド大陸の丁度真ん中辺りがアース王国なんだってさ、こうして見ると意外と小さい国だろ、けど、この国は歩くと結構広い国なんだぜ、世界って広いよなあ~」
「そうですね、」
そうか、ここの大陸はセコンド大陸と言うのか。やっぱり俺の知る世界地図とは違うなあ。
「おっと、浸っている場合じゃないな、ヨシダさん、どんな武器が扱えるんだい? 」
「武器ですか? すいません、俺は武器なんて一度も使った事は無いですよ」
俺の言った言葉に、ギダユウさんは目を丸くして聞き返した。
「え? ヨシダさん、あんた武器の類を使った事無いのかい? ナイフの一つ位は? 」
「あ、例えば物を書く鉛筆を削る時に小さい物なら使った事ありますが、本格的な武器は無いです」
「へえ~、そうなんだ、今までどうやってやってきたのか不思議だよ、よく今まで無事だったねえ」
そう言えば、そうか、平和な日本に居れば武器なんて必要無いからなあ、しかし、この世界ではそうもいくまい、何か自分に合った物を選ばなくては。何がいいのかな?
「取り合えず、まずは鎧からにしよう、ヨシダさんの体格からすると鉄の鎧の類は窮屈そうだな、革の胸当てなんてどうだろう、ヨシダさん、まずはこれを身に付けてくれ」
ギダユウさんはそう言いながら、俺に一つの革製品を渡してきた、よく見ると左側の胸だけを守る胸当てだった、ベルトで調節できるようになっている。これなら俺のお腹の出っ張った体形にも装備できそうだな。早速身に付ける。
「・・・うん、いいんじゃないかな、鎧は決まったな、あと問題は武器か・・・ヨシダさん、剣なんてどうだい? 」
「剣ですか? 」
うーむ、どうなんだろう、学校の授業で剣道を少し齧った程度だし、握っていたのは竹刀だった、竹と鉄では明らかに違うだろう。
「ヨシダさん、ちょっとこの鉄の剣を持ってみて軽く振ってみなよ」
俺はギダユウさんから鉄の剣を受け取り、両手で持って構えてみる、意外と重くない? ああ、そうか、「ストレングス」のスキルのお陰か。力が上昇しているからな。
言われた通りに軽く剣を二、三度振ってみる。
「どうでしょうか? 」
ギダユウさんは苦い顔をして俺に言った。
「うーん、なんか見てて危なっかしいなあ」
そりゃあそうだ、剣なんて持った事も無い、そう言えば剣とか刀ってある程度技量が無いと自分の足を切ってしまうと聞いた事がある。
「やはり、怖いですね、なんか自分の足を切ってしまいそうで・・・、刃物の類は向いていないのかもしれません」
鉄の剣を元の置いてあった場所に戻す。
「そうか、そうなってくると、あとは檜《ひのき》の棒とか、あと、棍棒とかかな、こういう武器は技量を必要としないから、ただ叩くだけでいいから、どうだい? 」
檜の棒を持ってみる、・・・うん、悪くない。・・・しかし、軽すぎる、これでは叩いた相手に大したダメージは与えられないだろう、護身用といった感じだな。
「檜の棒はちょっと頼りない感じですね、まあ、これでもいいと思いますけど」
今度は棍棒を試してみる、棍棒を握り、二、三度振ってみる。
「・・・うん、悪くは無いね、ヨシダさんは打撃系の武器に向いているんじゃないのかい」
うーむ、確かに、何も考えずにただ力任せに振るだけなので、簡単ではある。だけど、この棍棒でもなんか軽く感じる。もう少し重い物でもいいくらいだ。
今一度、納屋の中を見回して、自分に合う武器はないかと捜してみる、それにしても色んな物が置いてある、村長さんが冒険中に集めた物らしいのが、至る所に置いてある。武器や防具、何かの薬瓶、何に使うか解らない物で溢れている。きっと村長さんの思い出の品ばかりなんだろう。
そんな中、武器や防具などが置かれた机とは別の机の上に、見慣れた物が置いてあった、ハンマーだ。大工さんが使う物じゃなく、石工が使う少し大きめの重そうなハンマーが置いてあった。日本で仕事の時に使っていたコンクリートなどを斫《はつ》る時などに使っていた道具によく似ていた物だった。
ハンマーか、悪くない。これなら使い慣れている。
「ギダユウさん、このハンマーなんて良さそうですが、」
「え? そのハンマーかい? まあ、当たれば痛そうだが、それは石材を加工する時なんかに使う道具だよ、そんなのでいいのかい? 」
「はい、これなら使い慣れています、俺はこれにします」
ハンマーを握ってみて、しっくりくる感じがした。うん、こいつならいけそうだ。武器ではないだろうが、これだって当たれば痛い、柄の部分は木で出来ており、頭の部分は鉄の塊で出来ている。こいつはしっくりくる。よし、決めた。これにしよう。
「それじゃあ、そのハンマーを腰に提げる為のベルトも必要だな、・・・確かこの辺りにあったと思ったが、・・・お、あったあった、ヨシダさん、このベルトを腰に付けてみて」
「はい」
俺は腰にベルトを巻いて、その間にハンマーを差し込む。うむ、いいな、悪くない。
「こんな感じですかね」
「うん、いいんじゃないかな、しかしハンマーとは思わなかったな、ヨシダさんの得意武器が、まあ、これでいざって時は護身用ぐらいにはなるかな、装備は決まったね、それじゃあ出ようか」
「はい」
俺とギダユウさんは納屋を出た。村長さんにお礼を言わなくては。
「それじゃあ、俺は村長さんにお礼を言って来ます」
「ああ、わかった、村の見回りはまた明日からでいいから、そういやあ、パールさんに用事があったんじゃなかったのかい」
「ええ、そうです、その件も含めて村長さんの所へ行きます」
「わかったよ、それじゃあ俺は村の見回りがあるから、これで失礼するよ、ヨシダさん、明日からよろしくね」
「はい、こちらこそ、よろしくお願いします」
ギダユウさんは村の見回りの為に、歩いて行ってしまった。さてと、俺は村長さんの所に行こう。装備も決まったし、後は村長さんにお礼と、パールさんに魔法を教わる事ができるかどうかだな。
俺は納屋を後にして、村長さんのお宅に向かう。・・・魔法か、使えるようになるといいな。
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