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9話 賢者ルカイン様に相談しよう ①

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第9話 賢者


 俺は賢者ルカインさんの住んでいるという塔を目指して、町の中を歩いている。町の中からでも塔が見えるので、そこを目指す。話によるとルカインの塔は町の外にあると言われているので、俺はまず、クノックスの町を入って来た壁門とは反対側の門へ来て、そこから町の外へ一旦出る。

「賢者ルカインか、一体どんな人物なのかな」

少し原っぱを歩き、もう目の前に塔の入り口が見えてきた、随分大きな塔だ、3階建てぐらいの高さがあるな、1階は横幅が広い感じで、上に行くにしたがって細くなっていく造りだ。円錐形って言うのかな? 俺は塔の入り口の扉の前まで来て、扉をノックする。

「・・・」

しばらくしても何も起こらなかった、もう一度扉をノックし、今度は自分がここへ来た目的を告げる。

「すいませ~ん、賢者様~、俺は吉田と申しますが~、訳あってルカインさんに会いに来ました~」

・・・・・・

返事も無い、おかしいな、この塔が賢者ルカインの塔だと思うのだが、お留守なのかな? もう一度扉をノックする。

「すみませ~ん、ルカインさ~ん、いませんか~、俺は日本から来た者ですが~」

「でっけー声出すでない! 聞こえとるわい、入ってこい」

扉の向こうから声が聞こえた、おそらく賢者様だろう、入っていいらしい、俺は扉を開け、塔の中に入る。

「失礼します、」

塔の中は広く、綺麗に掃除されていたが、物が至る所に乱雑に置かれていて、一見すると散らかっている様に思える。床はピカピカだ、塔自体石造りの建物で、入り口近くに上へと登って行く階段がある、1階部分は広間になっていて上から見て円筒形に通路がある感じだ。所々に部屋がある。

賢者様の姿は見えない、どこにいるんだ? 

「あの~、賢者様、どちらに? 」

「こっちじゃ、」

1階の手前の部屋から声が聞こえた、俺は声のした方へ向かう。

部屋の中に一人のご老人が居た。髭を蓄え、くたびれたとんがり帽子みたいな帽子を被っていて、ローブを着ている。今は何かの書物を読んでいるみたいだ。あの方が賢者様かな、なんかいかにもな風体だ。まるでファンタジーの世界に来たみたいな錯角に陥る気分だ。

ご老人が口を開いた。

「ふむ、お前さん先程ニホンから参ったと申しておったが、誠か? 」

「は、はい、事実です」

「ふむ、そうか、わしに何用かの? 」

ルカインさんは何かわかっている感じの様子で俺に問いかけてきた。

「あ、はい、自分の名は吉田と申します、実はルカインさんに相談したき事があり、ここまで参った次第であります」

ご老人は本を閉じ、ゆっくりとこちらを向き、威厳のある顔をこちらに向けた。鋭い眼光だ。しわの数だけ人生を生きている、といったご年配の方だ。

「わしの所に来たという事は、何かよほどの事じゃろうのう、申してみよ」

「は、はい、実は・・・」

俺はこれまでの経緯を話した。自分がやろうとしていたゲームから、眩しい光に目が眩み、気が付いたら草原に居た事、言葉は通じるが聞いた事の無いアイチ語という言語、初めてモンスターに遭遇した事、自分の居た世界には存在しないモンスターの事など、なるべく事細かく説明した。

「・・・と、言う次第なのです、・・・あの~、自分で言ってて何言ってんだって思うのですが、これが俺の思う事です、どう思われますか・・・」

賢者ルカインさんは目を瞑り、暫くの間沈黙していた、何か思案しているのかもしれない。

暫くして、ルカインさんが沈黙を破り、落ち着いた声で語りかけて来た。

「なるほどのう、・・・そういう事であったか、・・・お前さんの今、置かれている状況は、まさに異世界からの転移じゃな・・・」

「異世界・・・転移・・・ですか? 」

「うむ、お前さんの話を聞くと、どうやら召喚魔法の類ではなさそうじゃしのう、草原に降り立った時、近くに召喚主がおらなんだのであろう? 」

「は、はい、村人が一人近くに居たぐらいでしたが、俺の事を知らない感じでした、召喚主という感じではなかったと思います」

「それならば、異世界人召喚の魔法ではないのう、ヨシダ殿、お前さんはやはり異世界転移じゃわい」

ちょっと待って、待ってくれ、・・・異世界転移だって!? いや、そういうのは漫画やアニメで知っているが、異世界転生ものとかの本がある事ぐらいは知っている。ただ、俺はそういう本は読んだ事があまり無い。知っていると言っても精々漫画やアニメの知識ぐらいだ。

そもそも、何で俺? そう言う異世界ものって、もっと若いもんが経験するもんじゃないのか? 何故俺みたいなおっさんなんだ? いや、それよりも日本に帰れるかどうかもわからない。どうすりゃいい。

「賢者様、俺が日本に帰る方法を何かご存知ですか? 」

「・・・うーむ、そうじゃな、召喚魔法であるならばその逆の送還魔法で元の世界に返す事も可能じゃが、ヨシダ殿の場合、転移じゃしのう、異世界からこちらの世界に転移してきた者の中には、何か特別な力を持った者が来ると、文献にも書いてあったしのう・・・、ヨシダ殿、自分では何か思い付かんかのう? 」

「は、はあ、・・・さし当たって思い付く事と言っても、俺には何が何やらさっぱりで・・・」

今の俺は混乱している。異世界だって! まさか、そんな、この俺が? 何かの冗談だろ。・・・いや、確かに、今までの人々との会話でも、どこかおかしいな~、ぐらいには思っていた、ここは俺の知っている世界ではない可能性も考えていた。頭のどこかでそれを否定して、そんな事は有り得ないと蓋をしていた。

しかし、認めざるを得ない。ここが異世界で、日本にいつ帰れるかわからない事を、・・・・・・参ったなあ、・・・これからどうすればよいのやら、・・・。

「ふうむ、ヨシダ殿、700年前に実は勇者様が転移してきたのじゃが、その勇者様がニホンという国の出自のお方での、魔王を倒し、平和を取り戻したのじゃが、文献にはある日突然、勇者様が何処かへと姿を消した・・・、と、書いてあったのじゃ、おそらく元の世界に帰ったのではないかと思うのじゃがのう」

「勇者・・・ですか・・・俺にはとてもそんな事は無理そうですね、・・・俺は勇者でもなんでもありませんから、ただの民間人なので、・・・」

「ふむ、そうかのう、ヨシダ殿がこの世界に転移して来たという事は、ヨシダ殿にも何か変わった力があるのではないのかのう、暫く待っておれ、今、鑑定の魔道具を持ってくる、しばし待たれよ」

そう言って、賢者様は部屋を出て行った、俺はしばらく待つ事にする。それにしても異世界転移か、何故俺なんだ? 訳がわからない。不安だ、これからの事を考えないと・・・・・・。

「待たせたのう、準備できたぞい」

ルカインさんの方を向いたら、なにやらパーティーグッズかなにかの鼻眼鏡を掛けている、レンズ部分はガリ勉仕様の瓶底めがねだった。

「ルカインさん、・・・それは? 」

「これは鑑定ができる魔道具じゃよ、これを使ってヨシダ殿を鑑定してみるゆえ、その場を動かぬようにの」

なんだか、威厳のある賢者様から一気にひょうきんなおじいちゃんに見える、え? そんなので何かわかるのかな? どう見てもただのパーティーグッズの鼻めがねだよな。

「どれどれ、・・・ふーむ、・・・こいつは驚いた、お前さんスキルが3つもあるではないか、大したもんじゃわい」

「え? そ、そうですか? 」

「うむ、普通、スキルというのは10年、15年、と経験や鍛錬を積まんと中々スキルは発現せんものなのじゃ、もしスキルが習得できたとしても、精々1つぐらいなものじゃわい、それをヨシダ殿は既に3つも持っておるようじゃ、中々おらんぞ、その様な人物は」

「へえ~、そうなのですか、どんなスキルなのですか? 」

「まあ、待て、今紙に書き留めてやるでの」

そう言って、賢者様は紙に何か書き留めている。どうやら俺のステータス的な何かを書いてくれているのだろう。

「よし、こんなもんじゃの、ヨシダ殿、これがお前さんのスキルじゃ」

ルカインさんは書いた紙を俺に見せてきた、そこには・・・

名前 ヨシダ

職業 民間人

ユニークスキル スキル付け替え

スキル
・ストレングス
・タフネス
・回復魔法
・なし
・なし
・なし

スキルポイント 1P

と、書いてあった。

「あ!? これって! あの時のゲームの・・・・・・」






 














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