3 / 33
3話 レクリオ村の優しい人達
しおりを挟むギダユウさんの案内でレクリオ村の中を歩く事数分、一軒の家の前に到着した。
「ここがミランダさん家だよ、それにしてもこの村何も無いでしょ、まあ静かな村だからね。」
「はあ、長閑でいいじゃないですか。俺はこういうのいいと思いますよ、しかし、流石に電気も無いと不便ではありませんか? 国に言って電線を引いて貰えばいいじゃないですか。」
「でんき? でんせん? ヨシダさんが何言ってるのかわからないよ、ヨシダさんの国ではそういうのがあるのかい?」
「ええ、まあ、大概どの国にもあると思いますけど。」
どういう事だ? 電気も知らないって事があるのか? そんな筈無いよな。
だけどギダユウさんは知らないみたいだし、ああそうか、発電機でもあるのかな。だから電柱が無いのかもしれない。
俺はミランダさん宅の玄関のドアをノックする。
「すみません、服を借りた者ですけど~。」
しばらくして、一人の女性の声が聞こえてきた。
「どうぞ~、鍵は掛かってませんから、お入り下さい。」
ドアを開けて様子を伺う、外から見て思ったが、立派な木造建築のお家だ、中も広そうだ。
部屋の中央に一人の女性が椅子に座っていた、あの人がミランダさんかな? まだ若いじゃないか、30代位かな。
部屋の中に居た女性が、俺の姿を見て体が震えている、顔の表情は驚きに満ちている、何だろうか?
「あ!? あなたっ!?」
「え?」
女性は俺の事を誰かと見間違えているみたいだ。
「あ、あの~。」
「あ、ごめんなさい、主人の服を着た人がやって来たものですから、主人と勘違いしてしまいましたわ。」
「そうでしたか、あの~、そのご主人はどちらに?」
「3年前に亡くなりましたわ、………………モンスターに襲われて。」
モンスターだって? ふ~む、冗談を言っている雰囲気でもないよな、まあ、後でギダユウさんに聞いてみよう。
「そうでしたか、余計な事を聞いてしまったようですね、すいません。」
「いえ、いいんですよ、もう3年も経っていますから、それよりその服が役に立ったみたいで何よりですわ。」
「あ、そうでした、この服をお貸し頂きありがとうございます、お陰で村に入る事ができました。」
俺は頭を下げ、お礼を言う。
「亡くなった主人の物ですが、あなたの体形に合う服でよかったですね。本当に、主人と同じ体格をしてらっしゃるようで。」
女性の目からは、うっすらと涙目が伺える、3年前にご主人を亡くされて寂しいのかもしれないな、まだ愛しているのだろう。
その服を貸して貰っている訳だから、ご主人に感謝しないとな。
「ところで、あなたのお名前は何と言うんですか?」
「あ、はい、俺の名前は吉田と申します。」
「ヨシダさんね、私の名はミランダと言います、他に娘が一人います、今は出かけているようですけど。」
なんと、子持ちの母親だったか、とても若く見える奥さんだな。
「ミランダさん、改めて服をお貸し下さりありがとうございます。」
「いいんですよ、この村の男衆に主人の服が合う人がいなかったので、捨てるに捨てきれず、どうしようと思っていたところです。ヨシダさん、良ければその服を貰っては下さいませんか、どうせもう着る人がいませんでしたから。」
「いや、しかし、宜しいのですか?」
「ええ、構いませんよ。」
なんて優しい女性なんだろう、お言葉に甘えるしか今は出来ない。
「ありがとうございます、正直に申しまして着る服がなかったので、困っていたところでした、本当に感謝致します。」
「それに、ヨシダさん、あなた足が素足ではないですか、主人が使っていたサンダルも差し上げますよ、どうぞ遠慮なさらずに貰ってやって下さい。」
「すみません、ミランダさん、何から何まで。」
ミランダさんは玄関の近くに置いてある一つのサンダルを俺に渡してきた。
縄を編みこんで作られたサンダルだった、有り難い、裸足では歩く時ちょっと痛かったところだ。
俺はその場でサンダルを履き、紐を足に結ぶ、これで外を歩いても痛くないだろう。ホント、感謝だな。
「ところでヨシダさん、泊る所はあるのですか? この村宿屋なんかございませんよ。」
「あ、そうなのですか、俺はどうせ無一文ですし、宿屋にも泊まれないです。」
そこでギダユウさんがこう提案してきた。
「だったらヨシダさん、村長の家に厄介になる、ってのはどうかな? ヨシダさんが何処から来た人なのかもわからないんじゃ、しばらくの間、村に滞在する可能性だってあるだろう、それに村長は元冒険者だった人だよ、何か解るかもしれないだろ。」
「そうですねえ、俺は元居た国に帰りたい訳ですので、その情報を集めたいと考えています。」
「まあ、そうだったのですか、ヨシダさん、もし宜しければうちに泊っていかれませんか? 夫に先立たれてからというもの、私と娘の二人だけではこの家は広いと感じていたところです、いつまでも居ていいのですよ、どうですか? ヨシダさん。」
「え!? それは、有り難いのですが、宜しいのですか? ご迷惑ではありませんか。」
「いいんですよ、丁度男手が欲しいと思っていたところですから、遠慮なさらずに、それに夫のベットもありますから。」
う~む、どうしよう、確かに泊る所のあては今の俺には無い、お金も無いし。
この申し出は有り難く受けるべきか、しかし、本当にこの奥さんは親切だな、今の俺にとっては凄く有り難い話だ。
村長さんのところに泊れるとはまだ決まった訳でもないし、よし、ミランダさん家にご厄介になろう。日本に何時帰れるかわからない訳だし。
「ミランダさん、一つ、宜しくお願い致します、ご厄介になります。」
「ええ、その方がいいですよ、っと言う事はお夕食をいつもより多めに作らないといけませんわね。」
「すいません、有難う御座いますミランダさん、何から何まで。」
ギダユウさんがこちらに声を掛けた。
「話は纏まったみたいだな、それじゃあヨシダさんはミランダさんとこで滞在する、って事でいいんだな。」
「はい。」
「よし、それじゃあ次は村長の所に行って、ヨシダさんの事を詳しく聞きたいところだな、ヨシダさんは突然村の入り口の近くにパンツ一丁で現れた訳だからな、俺達はまだヨシダさんの事をよく知らない、まずは村長に話をしに行くべきだな。」
「はい、わかりました。」
ギダユウさんがミランダさんの方を向く。
「それじゃあミランダさん、俺達はこれで。」
「はい、村長さんの所でお話が終わったら、ウチに来て下さいね、ヨシダさん。」
「はい、ミランダさん、お世話になります。」
俺とギダユウさんはミランダさんの家を後にして、村の中を歩き出した。
次の目的はこのレクリオ村の村長さんのところに行って、俺の事を話す事になった。
だが、その前にギダユウさんに聞きたい事がある。歩きながら聞いてみた。
「ギダユウさん、ミランダさんの旦那さんが亡くなった原因って?」
「ああ、その話か、モンスターだよ、ミランダさんのご主人はモンスターにやられちまったのさ………。」
モンスターか、まるでロールプレイングゲームみたいな事を言うんだな。本当にモンスターなんているのかな?
「どんなモンスターですか?」
「ゴブリンだよ。」
393
お気に入りに追加
463
あなたにおすすめの小説
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
家族全員異世界へ転移したが、その世界で父(魔王)母(勇者)だった…らしい~妹は聖女クラスの魔力持ち!?俺はどうなんですかね?遠い目~
厘/りん
ファンタジー
ある休日、家族でお昼ご飯を食べていたらいきなり異世界へ転移した。俺(長男)カケルは日本と全く違う異世界に動揺していたが、父と母の様子がおかしかった。なぜか、やけに落ち着いている。問い詰めると、もともと父は異世界人だった(らしい)。信じられない!
☆第4回次世代ファンタジーカップ
142位でした。ありがとう御座いました。
★Nolaノベルさん•なろうさんに編集して掲載中。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~
ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。
城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。
速人は気づく。
この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ!
この世界の攻略法を俺は知っている!
そして自分のステータスを見て気づく。
そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ!
こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。
一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。
そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。
順調に強くなっていく中速人は気づく。
俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。
更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。
強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
カクヨムとアルファポリス同時掲載。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
いつもの電車を降りたら異世界でした 身ぐるみはがされたので【異世界商店】で何とか生きていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
電車をおりたら普通はホームでしょ、だけど僕はいつもの電車を降りたら異世界に来ていました
第一村人は僕に不親切で持っているものを全部奪われちゃった
服も全部奪われて路地で暮らすしかなくなってしまったけど、親切な人もいて何とか生きていけるようです
レベルのある世界で優遇されたスキルがあることに気づいた僕は何とか生きていきます
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる