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―― 第一章:時夜見鶏 ――
SIDE:時夜見鶏(12)
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「って、結果になったぞ」
俺が子細を話すと、破壊神が笑った。今日も例の異世界に、飲みに来ている。
「へぇ……なんか、複雑」
「だろ?」
なんか酒が入ってるのもあるけど、コイツ話しやすい。
「そんな奴の何処が良いの? 顔?」
破壊神が、そう言って眉を顰めてから、グイッとジョッキを傾けた。
「……別に」
「じゃあ体? ヤったんだろ?」
「……」
それはそうなんだ、ヤったよ、けど、けど、俺、もう二度とヤりたくない。
「良いよなぁ、俺なんてまだだし。うわぁ、ヤりたいけど、怖い」
「ああ、怖いな」
「え? なんで? お前もうヤったんだろ?」
「もう絶対ヤりたくない」
俺もジョッキを煽った。俺の言葉に、破壊神がビクッとした。
「う……どうしよう。終わった後に、そんな事思われたら」
「俺は――ヤりたい気持ちの方が分からない」
きっぱりというと、破壊神が哀しそうな顔をした。
「俺の相手もそう思ってたら嫌だな」
「何、お前、つっこまれる方なの?」
「うん」
ええええええ! 俺は衝撃を受けて、固まった。見えない、まじで見えない。コイツ俺より筋肉あるし、俺と同じくらい身長あるぞ。確かに俺もコイツも細マッチョ系だけどさ。
世の中、分からないな……。
「まぁ……普通は、ヤりたいんじゃないか。思い合ってる同士なら。ほら、俺とその……朝蝶って言うんだけど、そいつはな、思い合ってないからさ」
「確かに話聞いてると強姦魔とか酷いけどさ――なんだかんだで、探しに来て助けてくれたんだろ?」
「二百年後だけどな」
「寝てるところキスなんて、可愛いじゃん」
「……」
分からない。そうなのかな?
「つぅかお前も酷いだろ。ヤったのにさぁ、好きじゃないとか」
「だって……上にのってきたんだ」
「拒めよ!」
拒む間が無かったんだよ。っていうか、拒んだけど理解してもらえなかった。しかも俺、完全に発作だと思ってたし。
「でも別に、ヤるの嫌じゃなかったんだろ?」
「いやだから、嫌だって」
「そうじゃなくて、生理的嫌悪とか、無かったんだろ?」
「……まぁ」
神様には、性別はあんまり関係ない。それこそ、女性型が良ければ女性型の人間の器に入ればいいし。人間みたいに、同性愛嫌悪は無い。
それに朝蝶は、多分可愛い。性格も、容姿も。いや、性格は可愛くないのかなぁ。んー、でも、なんとなく、動物好きそうな所とか、可愛い、に入るよね?
「体から始まる恋もあるって」
「そういうものか……」なぁ?
うーん。え、本当にそう言うものなのかなぁ?
俺長生きしてるけどさ、童貞だったし、全然分からない。まだ人(神)生で二回しか、性的なこともしてないし、射精したこともない。
「話聞いてると、絶対向こうはお前に気があると思うよ」
「そうか?」
どこら辺が? 嫌われてるのは分かるんだけど、好意を感じたこと無いよ。
「うん。それにさ、朝蝶さんだっけ? その人に、好きだって言われたら、嬉しくないか?」
「……そうだな」
まぁ険悪な仲よりは、好かれてる方が良いよね。
「こう言う時はさ、やっぱり男から行くべきだよ!」
「両方男だけど」
「いや、その、上! タチ! 入れる方! つっこむ方!」
「……ああ」
この前は、俺が下にいたけど。上に朝蝶が乗ってきたんだ。それにタチって何? 俺、初めて聞いたんだけど。多分羅列されたのと同じカテゴリだよね。
「兎に角、告白しちゃえって。好きだぁ! ってさぁ」
別に俺、朝蝶のこと好きじゃないんだけど。
いや、好きなのかな?
最近確かに、会いたいのに会えない。何でなのか、今度は朝蝶が俺を避けてる気がする。こっち見てるから、目を合わせないようにしてると、さっとどこかに行くんだ。鬼ごっこが始まらないから有難いんだけど、出来ればさっさと会って、報酬を渡したい。
――あ。
これって、前に破壊神が言ってた、好きの条件、全部満たしてる。会いたいって言う俺が一個だけ満たしてなかった条件が満ちちゃったよ。
「俺は、朝蝶のことが好きなのか」
「そうだよ!」
「そうか」
そうだったんだ……! これ、好きなんだ、この感情。感情って言うか、行動?
「俺は、どうしたら良い?」
「だから告白」
「なんて?」
「好きだ、って」
「いつどうやって?」
「自分で考えろよ!」
破壊神が声を上げてから、麦酒を飲み干した。
ジョッキが、机の上にガンと音を立てて置かれた。
「兎に角、応援してるから。後で結果、聞かせてくれ」
こうして、俺はいまいちよく分からないままだったが、どうやら朝蝶のことが好きらしいので、告白することになった。
やっぱり、鬼ごっこしなくて良い<鎮魂歌>の内部だろうな、場所は。
そう考えながら、五神会議の日、俺は朝蝶の姿を探した。
丁度聖龍と話していた。
俺が寝ている間に、和解したらしい。
満面の笑み、柔和な笑みで、朝蝶は聖龍を見上げている。
聖龍も、穏やかに笑っていた。
――朝蝶のあんな顔、初めて見た。
少なくとも俺には向いたことがない。普通の笑顔すら、無いし。なんかこう、ちょっと怖い感じの笑みはたまに俺に向くけど、それですら貴重だ。
何を話してるんだろう。割って入ったら悪いような話題だったらまずいので、俺は風の魔法で会話を拾うことにした。
「僕、本当に聖龍様を、**愛しています」
**の所は、風の魔法がぶれて聞こえなかったが、愛しているのは分かった。
愛しているんだ。
「聖龍様のこと、***して、今では、大好きです」
大好きなんだ。
「ああ、私も朝蝶の事が好きだ。現在の関係になれて、嬉しい」
聖龍が笑顔で言った。そう言えば、最近、聖龍も俺に笑顔向けないな。
そんな事を考えていると、チラリと聖龍が俺を一瞥した。
「好きだぞ、朝蝶」
「嬉しいです」
ふぅん、両思いかぁ。あれ、でも、暦猫との関係は、どうなったんだろう。別れたのかな?
ただ何となく、合点がいった。
聖龍と俺は、背格好が似ている。髪と目の色は違うが、そう言えば、昔は聖龍の人の器も、今の俺みたいな色だった。
俺は、聖龍の代わりだったのかな。だけど、敵だから、嫌いなんだろう。
嫌いなのに、俺に抱かれた理由は、多分策略だけじゃないんだ。だから、俺にキスしたんだろうな。きっと聖龍と重ねていたんだ。じゃなきゃ、朝蝶が俺に抱かれるとか、キスするとか、理由無いし。
それで、晴れて両思いになったんだな。
じゃあ、俺が告白とか、しない方が良いよね。
これが失恋て奴なのかな。あんまり哀しくないんだけど、失恋は哀しいって愛犬に聞いた気がする。強いて言うなら、ちょっと寂しいかな。何がって、俺には笑ってくれないこと。まぁ俺のこと嫌いだろうから、しょうがないよね。
もう良いや、なんか疲れた。
そんなこんなで会議を終えた。
会議は二日間だから、明日もある。
ということで、翌日を俺は迎えた。
会議が終わったら、さっさと帰ろう――嫌、待てよ。報酬渡さないと。思いだした俺は、ああ、と思って、帰り際に回廊で、朝蝶を引き留めた。
「おい」
「っ、な、なんですか?」
「前に言ってた、報酬の件だ」
「!」
俺の言葉に、朝蝶が目を瞠った。
「何が良い?」
っていうか、金だろうけど、いくらかなぁ。
「――あれ以外に改めてくれるのであれば、ついてきて下さい」
そう言って、朝蝶が歩き始めた。あれ以外? それに、え、何、何処に行くの?
困惑しつつも、俺は後に続いた。
人気のない部屋に入り、朝蝶がこちらを向いた。
「僕は、貴方が欲しい」
「……」
思わず黙り込んでしまった。え、俺? 何、噂で聞いたことある、体で払え系? だけど内容知らないんだよね。肉体労働とか?
「時夜見鶏。貴方から僕にキスして、抱いて下さい」
え? 聖龍と良い感じ何じゃないの? ……もしかして、破壊神みたいに、まだ、とか? 俺で練習的な? 困ったなぁ。ヤだ。嫌だけど、練習か分からないし。どういう事だろう。此処は、聞かないと!
「……どういうつもりだ?」
「忘れられないんです、貴方のことが」
俺の何が? 俺、何かこう、忘れられないような事したのかなぁ。
だとしても、抱くって、何でそれに繋がるんだろう。んー、訳が分からないよ! ただ一つだけ分かることがある。
「……無理だ」
「っ」
俺、聖龍に悪いし、俺自身も嫌だし、出来ないよ。
朝蝶が苦しそうな顔して唇噛んでるけど、無理だし。
「俺は、」
「僕の事なんて好きじゃない?」
「いや、好きだ」
あ、やばい、破壊神に言われたから、好きだって言っちゃったよ。
「っ、あ、え? ほ、本当に?」
「……」
嘘ー。三角関係とか、痴情のもつれとか、俺嫌だよ?
朝蝶が真っ赤な顔になった。え、怒ってるのかな。どうしよう。俺に言われて、気持ち悪かったのかな。悪いことしちゃった。
「だったら……抱いてよ。ねぇ、お願い」
朝蝶の目が、潤んできた。ええええ。なんで?
泣くほど気持ち悪かったのかな。まぁ嫌いな人から告白されたら嫌だろうけど、何で抱いてに繋がるの……しかも俺、お願いされてるし。
「報酬、くれるんでしょう?」
それはそうなんだけどさぁ……なんか、違う。俺の予想と違う。俺泣きそう。
ポカンとして突っ立っている俺に、朝蝶が歩み寄ってきた。
上の服の前をはだけられ、胸に朝蝶の綺麗な手が触れた。
「ねぇ、時夜見」
「……なんだ?」
「口でシて」
何を!? 俺は思わず唾液を嚥下した。大きな音が出ちゃった気がする。
俺が子細を話すと、破壊神が笑った。今日も例の異世界に、飲みに来ている。
「へぇ……なんか、複雑」
「だろ?」
なんか酒が入ってるのもあるけど、コイツ話しやすい。
「そんな奴の何処が良いの? 顔?」
破壊神が、そう言って眉を顰めてから、グイッとジョッキを傾けた。
「……別に」
「じゃあ体? ヤったんだろ?」
「……」
それはそうなんだ、ヤったよ、けど、けど、俺、もう二度とヤりたくない。
「良いよなぁ、俺なんてまだだし。うわぁ、ヤりたいけど、怖い」
「ああ、怖いな」
「え? なんで? お前もうヤったんだろ?」
「もう絶対ヤりたくない」
俺もジョッキを煽った。俺の言葉に、破壊神がビクッとした。
「う……どうしよう。終わった後に、そんな事思われたら」
「俺は――ヤりたい気持ちの方が分からない」
きっぱりというと、破壊神が哀しそうな顔をした。
「俺の相手もそう思ってたら嫌だな」
「何、お前、つっこまれる方なの?」
「うん」
ええええええ! 俺は衝撃を受けて、固まった。見えない、まじで見えない。コイツ俺より筋肉あるし、俺と同じくらい身長あるぞ。確かに俺もコイツも細マッチョ系だけどさ。
世の中、分からないな……。
「まぁ……普通は、ヤりたいんじゃないか。思い合ってる同士なら。ほら、俺とその……朝蝶って言うんだけど、そいつはな、思い合ってないからさ」
「確かに話聞いてると強姦魔とか酷いけどさ――なんだかんだで、探しに来て助けてくれたんだろ?」
「二百年後だけどな」
「寝てるところキスなんて、可愛いじゃん」
「……」
分からない。そうなのかな?
「つぅかお前も酷いだろ。ヤったのにさぁ、好きじゃないとか」
「だって……上にのってきたんだ」
「拒めよ!」
拒む間が無かったんだよ。っていうか、拒んだけど理解してもらえなかった。しかも俺、完全に発作だと思ってたし。
「でも別に、ヤるの嫌じゃなかったんだろ?」
「いやだから、嫌だって」
「そうじゃなくて、生理的嫌悪とか、無かったんだろ?」
「……まぁ」
神様には、性別はあんまり関係ない。それこそ、女性型が良ければ女性型の人間の器に入ればいいし。人間みたいに、同性愛嫌悪は無い。
それに朝蝶は、多分可愛い。性格も、容姿も。いや、性格は可愛くないのかなぁ。んー、でも、なんとなく、動物好きそうな所とか、可愛い、に入るよね?
「体から始まる恋もあるって」
「そういうものか……」なぁ?
うーん。え、本当にそう言うものなのかなぁ?
俺長生きしてるけどさ、童貞だったし、全然分からない。まだ人(神)生で二回しか、性的なこともしてないし、射精したこともない。
「話聞いてると、絶対向こうはお前に気があると思うよ」
「そうか?」
どこら辺が? 嫌われてるのは分かるんだけど、好意を感じたこと無いよ。
「うん。それにさ、朝蝶さんだっけ? その人に、好きだって言われたら、嬉しくないか?」
「……そうだな」
まぁ険悪な仲よりは、好かれてる方が良いよね。
「こう言う時はさ、やっぱり男から行くべきだよ!」
「両方男だけど」
「いや、その、上! タチ! 入れる方! つっこむ方!」
「……ああ」
この前は、俺が下にいたけど。上に朝蝶が乗ってきたんだ。それにタチって何? 俺、初めて聞いたんだけど。多分羅列されたのと同じカテゴリだよね。
「兎に角、告白しちゃえって。好きだぁ! ってさぁ」
別に俺、朝蝶のこと好きじゃないんだけど。
いや、好きなのかな?
最近確かに、会いたいのに会えない。何でなのか、今度は朝蝶が俺を避けてる気がする。こっち見てるから、目を合わせないようにしてると、さっとどこかに行くんだ。鬼ごっこが始まらないから有難いんだけど、出来ればさっさと会って、報酬を渡したい。
――あ。
これって、前に破壊神が言ってた、好きの条件、全部満たしてる。会いたいって言う俺が一個だけ満たしてなかった条件が満ちちゃったよ。
「俺は、朝蝶のことが好きなのか」
「そうだよ!」
「そうか」
そうだったんだ……! これ、好きなんだ、この感情。感情って言うか、行動?
「俺は、どうしたら良い?」
「だから告白」
「なんて?」
「好きだ、って」
「いつどうやって?」
「自分で考えろよ!」
破壊神が声を上げてから、麦酒を飲み干した。
ジョッキが、机の上にガンと音を立てて置かれた。
「兎に角、応援してるから。後で結果、聞かせてくれ」
こうして、俺はいまいちよく分からないままだったが、どうやら朝蝶のことが好きらしいので、告白することになった。
やっぱり、鬼ごっこしなくて良い<鎮魂歌>の内部だろうな、場所は。
そう考えながら、五神会議の日、俺は朝蝶の姿を探した。
丁度聖龍と話していた。
俺が寝ている間に、和解したらしい。
満面の笑み、柔和な笑みで、朝蝶は聖龍を見上げている。
聖龍も、穏やかに笑っていた。
――朝蝶のあんな顔、初めて見た。
少なくとも俺には向いたことがない。普通の笑顔すら、無いし。なんかこう、ちょっと怖い感じの笑みはたまに俺に向くけど、それですら貴重だ。
何を話してるんだろう。割って入ったら悪いような話題だったらまずいので、俺は風の魔法で会話を拾うことにした。
「僕、本当に聖龍様を、**愛しています」
**の所は、風の魔法がぶれて聞こえなかったが、愛しているのは分かった。
愛しているんだ。
「聖龍様のこと、***して、今では、大好きです」
大好きなんだ。
「ああ、私も朝蝶の事が好きだ。現在の関係になれて、嬉しい」
聖龍が笑顔で言った。そう言えば、最近、聖龍も俺に笑顔向けないな。
そんな事を考えていると、チラリと聖龍が俺を一瞥した。
「好きだぞ、朝蝶」
「嬉しいです」
ふぅん、両思いかぁ。あれ、でも、暦猫との関係は、どうなったんだろう。別れたのかな?
ただ何となく、合点がいった。
聖龍と俺は、背格好が似ている。髪と目の色は違うが、そう言えば、昔は聖龍の人の器も、今の俺みたいな色だった。
俺は、聖龍の代わりだったのかな。だけど、敵だから、嫌いなんだろう。
嫌いなのに、俺に抱かれた理由は、多分策略だけじゃないんだ。だから、俺にキスしたんだろうな。きっと聖龍と重ねていたんだ。じゃなきゃ、朝蝶が俺に抱かれるとか、キスするとか、理由無いし。
それで、晴れて両思いになったんだな。
じゃあ、俺が告白とか、しない方が良いよね。
これが失恋て奴なのかな。あんまり哀しくないんだけど、失恋は哀しいって愛犬に聞いた気がする。強いて言うなら、ちょっと寂しいかな。何がって、俺には笑ってくれないこと。まぁ俺のこと嫌いだろうから、しょうがないよね。
もう良いや、なんか疲れた。
そんなこんなで会議を終えた。
会議は二日間だから、明日もある。
ということで、翌日を俺は迎えた。
会議が終わったら、さっさと帰ろう――嫌、待てよ。報酬渡さないと。思いだした俺は、ああ、と思って、帰り際に回廊で、朝蝶を引き留めた。
「おい」
「っ、な、なんですか?」
「前に言ってた、報酬の件だ」
「!」
俺の言葉に、朝蝶が目を瞠った。
「何が良い?」
っていうか、金だろうけど、いくらかなぁ。
「――あれ以外に改めてくれるのであれば、ついてきて下さい」
そう言って、朝蝶が歩き始めた。あれ以外? それに、え、何、何処に行くの?
困惑しつつも、俺は後に続いた。
人気のない部屋に入り、朝蝶がこちらを向いた。
「僕は、貴方が欲しい」
「……」
思わず黙り込んでしまった。え、俺? 何、噂で聞いたことある、体で払え系? だけど内容知らないんだよね。肉体労働とか?
「時夜見鶏。貴方から僕にキスして、抱いて下さい」
え? 聖龍と良い感じ何じゃないの? ……もしかして、破壊神みたいに、まだ、とか? 俺で練習的な? 困ったなぁ。ヤだ。嫌だけど、練習か分からないし。どういう事だろう。此処は、聞かないと!
「……どういうつもりだ?」
「忘れられないんです、貴方のことが」
俺の何が? 俺、何かこう、忘れられないような事したのかなぁ。
だとしても、抱くって、何でそれに繋がるんだろう。んー、訳が分からないよ! ただ一つだけ分かることがある。
「……無理だ」
「っ」
俺、聖龍に悪いし、俺自身も嫌だし、出来ないよ。
朝蝶が苦しそうな顔して唇噛んでるけど、無理だし。
「俺は、」
「僕の事なんて好きじゃない?」
「いや、好きだ」
あ、やばい、破壊神に言われたから、好きだって言っちゃったよ。
「っ、あ、え? ほ、本当に?」
「……」
嘘ー。三角関係とか、痴情のもつれとか、俺嫌だよ?
朝蝶が真っ赤な顔になった。え、怒ってるのかな。どうしよう。俺に言われて、気持ち悪かったのかな。悪いことしちゃった。
「だったら……抱いてよ。ねぇ、お願い」
朝蝶の目が、潤んできた。ええええ。なんで?
泣くほど気持ち悪かったのかな。まぁ嫌いな人から告白されたら嫌だろうけど、何で抱いてに繋がるの……しかも俺、お願いされてるし。
「報酬、くれるんでしょう?」
それはそうなんだけどさぁ……なんか、違う。俺の予想と違う。俺泣きそう。
ポカンとして突っ立っている俺に、朝蝶が歩み寄ってきた。
上の服の前をはだけられ、胸に朝蝶の綺麗な手が触れた。
「ねぇ、時夜見」
「……なんだ?」
「口でシて」
何を!? 俺は思わず唾液を嚥下した。大きな音が出ちゃった気がする。
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