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【五】
しおりを挟む僕は半信半疑ながらも馬車に揺られ、王宮が見えてくるにつれて怯え、極刑になったらどうしようかと不安になりながら、どんよりとしていた。そんな僕を王宮の人々が先導し、ジャック様の寝室の前へと連れて行った。小さいころに一度かくれんぼのために入室したことがあるから、寝室だと僕は知っていた。
ノックをすると、「入れ」という声が返ってきた。図書館で聞いたのが最後の、ジャック様の声である。僕はおずおずと中へ入った。
「!」
すると扉の真正面にジャック様がいた。突然視界に入ってきたから驚いてしまった。僕よりもずっと背が高いので、もうこれを抜き返すのは不可能だろう。じっと僕を見たジャック様は、それから施錠した。妙にその音が大きく聞こえた気がした。
「そ、その……ご、ご無沙汰……して……」
僕があいさつしようとすると、僕の顔のわきに、ジャック様が手をついた。そして少ししゃがんで僕を覗き込んでくる。近距離すぎて、ジャック様の目に映りこんでいる自分が見えそうだ。
「んンぅ」
そのままキスをされていた。ジャック様は何も言わない。ただ焦って口を開こうとした僕に舌を差し込むと、ねっとりと口腔を貪り始めた。人生で初めてのキスに、僕は緊張して後ずさろうとし、扉に阻まれる。絡めとられた舌を引きずりだされて、甘く噛まれた時、僕はビクリとした。
「っぁ……」
息継ぎの仕方が分からない。必死で隙を見つけて呼吸をしていたから、僕はいつの間に服を開けられたのか気づいていなかった。それに気づいたのは、鎖骨の少し上に口づけをされた時だ。
「寝台へ」
「……」
いや、童貞って嘘だろう、これ……。
僕は父の言葉をよく思い出してみたが、多分、未経験者を抱く以外の講義はすでに終わっているのだろう。つまり僕は、その経験のみのために……。
しかしどうして僕なんだろうか。爵位の問題だろうか。大切なお役目らしいしな。そうでなければ会話があった幼少時など喧嘩ばかりしていたのだし、ジャック様も僕を嫌いだったと思う。
現実逃避気味にそんな事を考えながら、僕は寝台に押し倒された。既に上着は乱れていたが、そこから下衣を本格的に開けられた。僕は何かした方がいいのだろうかとも思ったが、それを訴える暇もないくらい手際よく、僕にのしかかっているジャック様が、僕の体から衣類をはぎとった。
「うつぶせになってくれ」
「は、はい……」
言われた通りに姿勢を変えた僕は、臀部を突き出す形で、ぎゅっとシーツを握った。
すると香油の瓶をたぐりよせた様子のジャック様が、それをつけた指で、僕の後孔に触れた。緊張で僕の体はガチガチだ。
「んっ」
指が一本入ってきた。香油が冷たい。そう感じた後、すぐにその温度が内部と同化した。くちゅりと音を響かせながら、ジャック様が僕の後孔を解している。緊張から、僕は喋る気にはならない。ジャック様も喋らない。お互いに無言だから、香油の音がすごくよく聞こえてくる。その時、指が二本に増えた。増量された香油がまた少し冷たくて、すぐになじむ。なんだこれ、緊張もするが、恥ずかしいな……。
「ぁ……」
そう思っていたら、中のある個所を二本の指先で刺激された瞬間、ゾクリとした。
「ここか?」
「え? え? ま、待っ……んッ」
なにがここなのかは分からないが、そこを刺激されるとゾクゾクする。ジャック様はそこばかりを刺激し始めたので、僕は必死に唇を結ぶことになった。その内に、指が三本に増えた。それをバラバラに動かされるようになった頃、僕の体は息が苦しいのもあって、熱くなり始めた。
「ぁ、ぁ、ぁ……」
そのまま――一時間近く解された頃には、僕はすすり泣いていた。体が熱い上に、いつのまにかその熱は陰茎に集まっていて、内部からのもどかしくじれったい刺激とあわさったせいで、思考が上手く働かなくなってきていた。
「んっ、ぁ……ぁァ……ああっ」
自分の口から、信じられないくらい甘ったるい声が出てくる。
「ひっ、ぁァ……んン……ぁっ……も、もう止め……あア!!」
「もう少し解した方がいい」
「っン――!!」
僕はその後も解されるうち、完全に泣いた。気持ち良すぎて、これはまずい。
「そろそろいいか」
「ぁァ……あああああ!」
その時、指を引き抜かれて、一気に貫かれた。その衝撃で僕は放ってしまった。鮮烈な射精感に飲まれていると、根元まで挿入した状態で、ジャック様が動きを止めた。硬い。それに指とは比べ物にならないくらい、長くて太い。
それからゆっくりと抽挿が始まった。この頃には、僕の体はもうぐずぐずだった。巧い、巧すぎる。人生で初めてSEXをしたけれど、童貞である僕にこれをまねできるかと言われたら、絶対に不可能だ。
「んン、ぁ……あ!! あ、あっ」
「一度出す」
「うあああ!」
ひときわ強く貫かれ、僕は内部に飛び散るものを感じた。その衝撃で、僕も再び放った。肩で息をしていると、一度陰茎を引き抜いたジャック様が、ぐったりとしていた僕の横に寝転んだ。
「少し休むか?」
「え? もう終わりじゃ……?」
「今日は朝までだ。明後日は半日ほどだな」
「へ? 朝!? しかも、明後日!? 一回だけじゃ……?」
「これから一年間は、俺が学び終わるまで付き合ってもらう」
僕は衝撃的過ぎて、目を見開いた。
宣言通りで、その日は朝まで抱きつぶされた。もう学び終わっているとしか思えないが、僕はどうすればいいのであろうか。
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