上 下
16 / 16

【十六】

しおりを挟む


 快楽だけではなく、感動した様子でうるうるしている礼を見ていたら――スイッチが入ってしまい、気づくとねちっこく意地悪にこっぴどく二回戦に望んでいて、礼が泣き叫んでいたけど、僕は知ってる。僕はSっ気があるかもしれないけど、礼はMっ気がある。確実に、快楽を覚えている様子で、あるいは僕のせいで覚えちゃった体が、震えていた。いかせてといって泣く彼女を優しく撫でながら、好きな子ほどいじめたくなるんだよねと言ったら、彼女が少しの間僕をじっと見てから、小さく頷いたのを見逃さなかった。お許しが出たと思うことにして、その後彼女の意識が飛ぶまでクリ責めして最後は挿入しながら指でいじって絶頂を促し僕も出した。

 こうして僕たちは、恋人になったというか婚約者になったというか夫婦になると決まった。両親は大喜びだ。そんな後日、友人達と集まることになった。今回は、待ち合わせ場所が男女別で、その後、合流だ。

「いやぁ、速報を見て、どこの誰と結婚するのかと思ったら、礼か」
「礼ちゃんのこと、女の子だと思ってたんだね、やっぱり!」
「ずっと言いたかったんだけどさ、ミレイユと春香より、よくない?」
「「……」」
「礼だけはありえないっていうけど、まぁそれは逆にありがたいことだけど、事実、礼の方が良くない?」
「俺にはもうミレイユがいる。なのでミレイユ一筋という意味で、礼は俺にはありえない選択肢だ。そもそも昔から礼はお前の事が好きそうだったしな」
「なんで教えてくれなかったの?」
「だってお前、全く礼純に興味なかったじゃないか」
「まぁね……ちなみに、アシェッドの見解は?」
「――っていうかさ、僕と春香が付き合うずっと前から、柾仁さぁ、礼の周囲のガード固めすぎだったよね。礼に告白しようとした自信家の男達を、全部蹴散らしたよね。僕と春香にも一部押し付けてたけど、あれもう、完全に嫉妬じゃんって、僕らは当時から話してた。だから大学一年生一ヶ月目くらいで、もう礼は、柾仁の恋人なんじゃないのか、手を出したらやばいって話が大学中を駆け巡ってたよ」
「え」
「それでも手を出してくる強者は、やっぱり柾仁が撃退。なのに二人共、恋人いないって言うから、柾仁の立場的に隠してるんだろうかとみんながヒソヒソしてたよ。結果、隠してる説と柾仁の片思い説で、大学は二分化されたんだよね。そのうちに、単純に親しいだけかなってなったけど、近寄ると柾仁が怖いから、礼には単独で男子は近づかないような暗黙の了解が出来てた。そういう空気の中で、僕が恋愛対象として礼を見たら、奇跡じゃないかな。僕は、危ない橋を渡るのは好きじゃない。あと、個人的な好みとして、礼は、頭が良すぎてたまについていけない」
「……そうだったの? どうして教えてくれなかったの?」
「話聞いてると、当時から好きでわざとやってたんじゃないのか。え? いつ好きになったんだ? なにかあったのか?」
「僕もそれ、すっごく知りたい。どうして急に、うまくいったの? 僕と春香は、礼は恋愛興味なし、柾仁は恋愛してるのに気づいてないと思ってた」
「アシェッドと春香の見解が正解。紺が来て、ある日礼が紺の家の方に行くって言って、行ってないと気づいて、そこでね、ちょっとね。ま、ある意味紺のおかげかな。それより、スイスのころから、本当に僕のこと好きだったの? ちょっと詳しく教えて」
「「……」」
「恋っていいね。やっと君たちの気持ちがわかったよ」

 なおその後、僕達は、体位について話し合ったのだが、一番経験が少ないと思われていた僕が圧倒的に豊富で、生温かい目を向けられたような気がしないでもない。

 そして一年後、無事に僕と礼は結婚した。

 このようにして、後で振り返ると紺がこの国にいた貴重な二年だったんだけど、僕の記憶は、ほとんど礼のことで占められているという結果になった。どうでもいいが、戦後はじめて「子」がつかない王太子妃が、礼である。

しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

こゆきねこ
2022.04.22 こゆきねこ

クズで始まり、ハッピーエンドで何よりでした。ありがとうございました。
この国の王室良いなー、面白いなー。オチがまたしれっとミジンも関係なくて良いなーと思いました。

猫宮乾
2022.04.23 猫宮乾

ご感想有難うございます! ご覧頂き、本当に嬉しいです。
オチは本当に無関係ですよね笑笑 本当にありがとうございました!

解除

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。