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【64】前世ではスルーしたお見合い写真の山を見てみる。①
しおりを挟むさて、俺は二十一歳になった。
現在は、国王代行中である。もう俺が知っている未来とは違うとわかっているのだが、それでもたまに比較してしまう。
「久しぶりだねぇ」
「ああ、元気そうだな、ワイズ」
この日やってきた賢者は、魔族が安定しているという報告にやってきた。
記憶に残る二十一歳の時とは逆である。
ソファに深々と背をあずけて、昼間から賢者は葡萄酒を飲み始めた。
思えば――好きなところに自由気ままに出かけて身を寄せる彼は、スローライフの大先輩である。こういう生活も良いだろう。俺も早くスローライフを送りたい。そう思ったのは――目の前に高く積まれた書類があるせいかもしれない。
今は代行としての国政関係の他、召喚獣の召喚規約の整理を行ったりもしている。俺は、力がなくなってしまったのだが、知識がなくなってしまったわけではない。そこで、今後力を失う前の俺に匹敵する人間が現れた時に備えて、資料作りをしていたら、うっかりユーリスに気づかれて、国を挙げてやろうと言われてしまったのである。他にもユーリスとは、薬草関連の仕事もしている。こちらは医療塔の面々が手伝ってくれるのだが。
確かに俺は力を失ったし、今回は、力があるという評判を最初から持っていなかった。そういう現状だというのに、ユーリスにプロデュースされた結果、現在の俺は、見識豊かな大天才というような評価を得ている。間違ってはいないだろう……と、たまに悦に浸るが、はっきりいってこれは、ドロップアウト時に邪魔にしかならないのでやめてほしい。
俺とユーリスは戦っているのだ。
俺を国王として正式に即位させようとするので、ひたすら俺はそれを回避している。
この静かな攻防には、実は周囲は気づいていない。
俺は表面上では、国王になる風を装っているのだ。しかしユーリスはごまかされてくれず、ちょくちょく俺の外堀を埋めようとするのである。
――そんな状況であり、俺の命を暗殺しようとするような動きはどこにもない。
なお、俺は剣の腕を磨き始めた。
こちらはもう隠すつもりはない。
剣一本で、魔族討伐にまで参加できるほどになったが、「次期国王陛下が自ら危険を冒す必要はありません」と言われ、あまり良い顔はされなかった。それもそうだろう。最初は、俺はこれを理由に国王代行業をドロップアウトしようかとも思ったのだが、何度か討伐に参加して、こういった殺伐としたものは、求めているものと違うなと思った。
俺が欲しかったのは、穏やかな日々だ。
だが、夢のスローライフには、まだまだ遠い。
紆余曲折を経て、処刑を回避し、現状が幸せだからとは言え――それとこれとは別である。現在の俺は、着々と、国王代行を終えたらドロップアウトする計画を立てているのだ。無論、正式に即位して国王になるつもりなどない。充実した日々は楽しいが、俺は、近い将来、絶対に王宮から出ていくと決めている。
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