もしも生まれ変わったら異世界へと思っていたら、転生先も俺でした。

猫宮乾

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【48】死。②

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 前世でユーリスに自分を処刑させたのは、俺自身だったことを。

 理由は、俺の心臓を始祖王が狙っていたからだった。
 始祖王は、俺の体を得て、ラクラスを意のままに操ろうとしていたのだ。
 だから俺は、死ぬ前にラクラスを逃がしたし、一度は、奪われないように自分の体を殺すことにしたのだ。ただその時、処刑される間際、俺は確信していた。

 ――始祖王は、俺の体を諦めない。おそらく、俺の生に干渉して、時を巻き戻す。
 ――そして俺が最適な器の体に成長した頃、心臓の転換を試みる。

 前世において、俺はそう考えたのだったと思う。
 ならば、蘇り、始祖王が接触してきたところで、返り討ちにすれば良いと思ったのだ。

 ――そのためには、どうしても必要なこと二つがあった。

 一つは『巻き戻しワード』である。巻き戻る前の記憶を忘れないために、魔法鍵と呼ばれる言葉を定めて、新たなる人生においてもそれを聞くことで、前世を夢だと片付けないようにしなければならなかったのである。今なおこの言葉が誰のどのような言葉だったかは思い出せないが、以前賢者が言っていたのはこれだとわかった。

 もう一つは、【新月黒曜の聖剣】を見つけ出して、所持するということだった。
 これは、俺単独では不可能だった。場所を知らない。だから前世で死ぬ前に、別れ際、ラクラスに伝えたのだ。「この剣が欲しい」と。ラクラスは、おそらくそれで、剣を探し出してくれたのだろうと、やっと理解した。

 そして俺は、この二つが満たされた時に、三つの事が起きるようにしていた。

 一つ目は、自分で己の処刑を命じさせたのだと思い出すようにしておいたことだ。
 二つ目は、前世の全記憶の復活である。
 そして三つ目が、『始祖王に呪縛をかける』というものだった。

 一つ目と二つ目の理由は単純だ。
 始祖王は、心や記憶が読めるため、前世での俺の最後の思考を読み取られたり、それをもとにした今世での言動を見抜かれたりすると、計画に差しさわりがあると考えたため、思い出せないようにしたり、擬似的な記憶を紛れさせている部分があったのである。

 だが、呪縛をかけることに成功した場合は、早急に思い出さなければならないことで間違いなかった。だから俺は、すぐに今、思い出したわけである。前世において、始祖王を屠ると誓い、また自分の身を守るために、一度俺は処刑台に自らたったということを。

 その記憶部分で、悪役をかって出てくれたのが、ユーリスだ。
 他の前世の記憶を振り返ってみる。
  すると、これまでの間にすっぽりと抜けていた、始祖王――父王の記憶が無数にあった。怖気が走った。前世において俺は、父が兄や弟達の心臓をえぐり出して貪り食うのを見たことがあったのだ。血族のものの心臓は、始祖王にとっては、万能薬らしい。

 だから俺は、呪縛をかけたのだ。誰かの心臓を次に食べようとした瞬間、重篤な多臓器不全状態に陥るようにと。前世においては、流行病の際、始祖王は弟の心臓を食べてすぐに快癒していた。しかしそれを理由に身を隠し、俺との心臓の転換を狙っていたのだ。そのため、俺は幽閉され事実を知った頃には、死んだはずの父の顔を牢屋で見ることになったのである。そして始祖王の計画を邪魔するため、俺は処刑される道を選んだのだ。

 それを覚えていたからこそ、今回は、このような呪縛をかけたのだ。
 成功したのだ。
 あとは――聖剣で父をさせば、全てが終わる。


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