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【43】始祖王について色々と学んで聖なる剣を手に入れる。③
しおりを挟む魔族が活性化しているという話を改めて思い出した。
考えてみると確かに、ラクラスがそばにいる時にその話は多く聞いた。
「ただしここ数年の大規模な襲来、あれらは、魔族を召喚獣として、戦力として、従えた人間の行いです。その者にとっては、真の王であり魔族を鎮められるラクラス様――魔族の王は邪魔であり、それを従えているフェル殿下は、非常に目障りなのでしょう。フェル殿下は今、危険なお立場です」
「いったい誰が魔族を召喚して俺達を襲おうとしているんだ?」
「――その件はもうかたがついたと聞いています」
「なに?」
「帝国の前皇帝が主犯でした。魔族を呼び出しけしかけて、戦争の火種を作って国土を広げていたのです。その過程で、それを気づかれたり阻止されるとまずいため、フェル様のもとにも魔族をけしかけていたのでしょう。王都への最初の襲来時は、ほかの国同様、この国を手中に収めるつもりでけしかけてきたのでしょうが――既に前皇帝は没しています」
「……ハロルドのクーデターだったな」
「ええ。エクエスの話によると、フェル様が狙われた一件で、父であった皇帝の行いに確信を得て、ハロルド現皇帝陛下がクーデターを決意なさったと聞いております。今後フェル様が狙われることなど絶対に許容できないと、熱くご決意なさっていたと伺っています」
「そうだったのか……」
俺の知らないところで、そんなことがあったのかと驚きつつ、ハロルドが俺を思って動いてくれたことに胸が熱くなった。こんな理由も、クーデターの裏側にはあったのか。そこまで考えて――俺は改めてライネルを見た。
「エクエスの話によると? 話せるのか?」
「ええ」
「どうやってだ?」
「始祖王の召喚獣同士にはネットワークが存在します。それもまた、主人の不可視魔法円を経由するため、この魔法円には様々な用途が存在します。私もそれを利用して、エクエスやラクラスと緊急時には連絡を取ることが可能なんです」
「――私も? まるで、それじゃあ、ライネルは――……」
「私は、始祖王の二番目の召喚獣でした。現在は、人間のふりをしています。主の命令により」
驚いて、俺は目を見開いた。短く息を飲む。
ライネルがその時、抑えていた気配を開放した。
辺りには強い力が溢れる。
「ライネル、お前の主人は誰だ?」
「今も、そして『昔』も、私が守るべきお方はフェル様のみです」
「……」
「そしてお守りすることを私に命じ、お守りしたいと私同様強く想っているのが主人です。これ以上は、お伝えできません。申し訳ありません」
頭を下げたライネルに、俺は小さく首を振った。
こんなに饒舌に語る彼を見たのは、初めてだった。
その時、見守っていたユーリスが、腕を組んで壁を見上げた。
俺もつられてみると、そこには巨大な時計が刻まれていた。
正確には魔法円なのだが、時計にしか見えない。
「ここが、心臓の転換を行う秘密の間みたいですね」
視線に気付いた様子で、ユーリスが一度俺を見てそう言ってから、再び壁に視線を戻した。俺も壁をまじまじと見る。
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