38 / 68
【38】前世での師匠は、今世でも師匠かもしれなくて遺跡の発見者だった。①
しおりを挟む――前世で剣の師匠だったガイルがやって来たのは、秋も間近な頃だった。
だいぶ暑さが消えたが、まだ寒いとは言えない。
過ごしやすい季節のその日、ガイルは俺を訪ねてきた。
王宮に、彼が所属する冒険者パーティが発見した、新しい遺跡の報告に来た帰りである。そう、これは、前世でも記憶がある、新しい遺跡の発見という事件だ。何らかのフラグである気がする事柄である。俺はここに来てようやく、遺跡の発見者がガイルだったのだと思い出した。
「よく来てくれたな」
「おう。フェル殿下に会えるなんて、大幸運だ。遺跡さまさまだな」
「いつでも顔を出してくれ」
「ありがとうございます」
頷いて満面の笑みを浮かべながら、軽くガイルが会釈した。
冒険者の彼は、非常にたくましい体つきをしている。精悍な表情で、頼りがいがありそうだ。さらに明るい性格で、見ているものの心を開かせる。前世と全く変わらない。その姿に、俺も自然と笑顔が浮かんでくるのを感じた。
「逆にフェル殿下を連れて、俺は一緒に大陸を回ってみたいけどな。旅も良いぞ?」
俺はその言葉に、短く息を飲んだ。
それは、考えたことがなかった。だが、旅に出るというのは、ドロップアウトには最適な選択肢ではないのか!? 開眼した気分だった。ゆったりと穏やかに旅をするのもまたスローライフの一形態であるとも考えられる。
「考えてみる、真面目に」
「嬉しいなぁ。旅に行く時は、声をかけてくれ」
「勿論だ」
大きく頷いてから、俺は木に背をあずけた。現在は、王宮の裏手にある鍛錬場にいるのだ。前世では、ここでいつも剣を教わった。その思い出が懐かしくて、俺はガイルが来ると、散歩と称してここへと誘っているのだ。ガイルが何も言わずについてくるのは、最近では雑談後に、手合わせをしているからである。今日もその予定だ。
「今回みたいに新しい遺跡を発見したり、毎日が新鮮だぞ」
「――遺跡か。どんな遺跡なんだ?」
「俺達の予測だと、始祖王の墓だ」
俺の前世の知識と同じだった。
だがここ最近、始祖王という存在は不死らしいと耳にしているため、『墓』というのが不可思議でもある。ただ、始祖王の墓は、あまり興味がない俺でさえも、五つは知っていた。以前出かけた始祖王廟の庭にも、墓だとされる石碑があった。
33
お気に入りに追加
1,836
あなたにおすすめの小説
逃げる銀狐に追う白竜~いいなずけ竜のアレがあんなに大きいなんて聞いてません!~
結城星乃
BL
【執着年下攻め🐲×逃げる年上受け🦊】
愚者の森に住む銀狐の一族には、ある掟がある。
──群れの長となる者は必ず真竜を娶って子を成し、真竜の加護を得ること──
長となる証である紋様を持って生まれてきた皓(こう)は、成竜となった番(つがい)の真竜と、婚儀の相談の為に顔合わせをすることになった。
番の真竜とは、幼竜の時に幾度か会っている。丸い目が綺羅綺羅していて、とても愛らしい白竜だった。この子が将来自分のお嫁さんになるんだと、胸が高鳴ったことを思い出す。
どんな美人になっているんだろう。
だが相談の場に現れたのは、冷たい灰銀の目した、自分よりも体格の良い雄竜で……。
──あ、これ、俺が……抱かれる方だ。
──あんな体格いいやつのあれ、挿入したら絶対壊れる!
──ごめんみんな、俺逃げる!
逃げる銀狐の行く末は……。
そして逃げる銀狐に竜は……。
白竜×銀狐の和風系異世界ファンタジー。
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
神子は再召喚される
田舎
BL
??×神子(召喚者)。
平凡な学生だった有田満は突然異世界に召喚されてしまう。そこでは軟禁に近い地獄のような生活を送り苦痛を強いられる日々だった。
そして平和になり元の世界に戻ったというのに―――― …。
受けはかなり可哀そうです。
僕のユニークスキルはお菓子を出すことです
野鳥
BL
魔法のある世界で、異世界転生した主人公の唯一使えるユニークスキルがお菓子を出すことだった。
あれ?これって材料費なしでお菓子屋さん出来るのでは??
お菓子無双を夢見る主人公です。
********
小説は読み専なので、思い立った時にしか書けないです。
基本全ての小説は不定期に書いておりますので、ご了承くださいませー。
ショートショートじゃ終わらないので短編に切り替えます……こんなはずじゃ…( `ᾥ´ )クッ
本編完結しました〜
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
大魔法使いに生まれ変わったので森に引きこもります
かとらり。
BL
前世でやっていたRPGの中ボスの大魔法使いに生まれ変わった僕。
勇者に倒されるのは嫌なので、大人しくアイテムを渡して帰ってもらい、塔に引きこもってセカンドライフを楽しむことにした。
風の噂で勇者が魔王を倒したことを聞いて安心していたら、森の中に小さな男の子が転がり込んでくる。
どうやらその子どもは勇者の子供らしく…
転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】
リトルグラス
BL
人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。
転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。
しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。
ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す──
***
第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20)
**
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる