現代ニホンから集団転移してきた人々への対処法

猫宮乾

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―― 本編 ――

【一】世界膜の修繕

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 このワールグラード大陸の各国、そこに属さない場所に、塔と呼ばれる魔術師の暮らす場所がいくつかある。その中の一つ、黒塔の第十一代主席魔術師が、ユーグだった。黒い短髪に無精ひげを生やしている、三十代半ばくらいの見た目の青年だが、実年齢は三百歳を超えている。魔力の強い魔術師は、不老長寿になることが多い。

「ん」

 ユーグの仕事の一つとして、ワールグラード大陸に創造神アルマスが張り巡らせている、世界の形を作るための結界、魔術膜の維持・管理・修繕があるのだが、この日ユーグは、その魔術膜のそばに奇妙な魔力を感じた。

 瞬間転移で現地に向かい、木陰に身を隠す。
 するとそこには、深々とローブのフードをかぶっている人物がいて、杖をかかげていた。結果、ユーグでさえ未感知だった小さな魔術膜の綻びが、再生した。植物が生え、それは一瞬で治った。ユーグは息を呑む。世界膜の再生術は、高難易度であり、僅かな綻びとはいえ、塔の関係者以外が簡単にできるものではない。迂闊に行えば、逆に世界膜が破損する。もしあと一歩ユーグが来るのが早ければ、魔術の行使を止めていた自信さえあった。

 驚いたユーグは、木の葉を踏んでしまった。
 するとビクリとしたローブ姿の人物の姿が揺らぐように消えた。

「あ、待っ――」

 しかしユーグの声は空しく消える。既にその相手は、瞬間転移をした後だったからだ。

「……何者だ?」

 呟いたユーグは、怪訝そうな顔で首を傾げる。
 あるいはこれが、出会いだった。



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