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―― 第三章 ――
【022】迷子
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高橋も納得したようだったし、誰も異論を唱えなかったので、俺達は、俺が先導する形でそちらへと向かった。するとバラ園の隅で、膝を抱えて泣いている少年がいた。
「もしかして第六王子殿下ですか?」
俺が声をかけると、頬を涙で濡らしていた少年が顔を上げた。
「誰?」
「っと、旅の者です。みんな探していますよ?」
「……それは僕が王族だからでしょう? 誰も本当は、僕のことなんか心配していないんだ。それに王族といっても、僕は継承順位も低い第六王子だし……」
泣きながら、第六王子殿下は悲しそうな声を出した。
すると高橋が首を捻った。
「どうしてそう思うんだ?」
「城の客の人が噂してるのを、廊下で聞いたんだ。『無価値な第六王子だけど、一応媚びを売るか』って。お前達もどうせ、そうなんだろう?」
それを聞くと夕陽が大きく首を振る。
「俺達は、いなくなったと聞いて心配しただけだ。もしきみが第六王子殿下でなく、ただいの一般人の子供だって、子供が迷子になったと聞いたら俺達は心配して探した」
「そうだぞ。自意識過剰なんじゃねぇか? ただみんなに心配をかけているだけだぞ、お前の行動は」
梓馬さんも何度も頷いている。
すると泣いたままで、勢いよく第六王子殿下が顔を上げた。
「……本当に、ぼくのことをみんなが心配してくれてるのかな?」
「そうだ。みんなを自分勝手な行動で、心配させることこそ、みんなを失望させると俺は思うぞ。周囲に自分を見て欲しいなら、きちんとお前自身が周りを見ろ。そして自分を本当に心配してくれてるって気がつけ」
梓馬さんの言葉を聞くと、少しして第六王子殿下がコクリと頷いた。
夕陽が微笑する。
「梓馬、言い方があるだろう。でも、俺も梓馬と同じ事を思っていた」
「……うん。僕、帰るよ」
「一緒に帰ろう、第六王子殿下」
「うん!」
こうして夕陽と梓馬さんが第六王子殿下を挟むようにして歩き、高橋と俺はその後ろについて、城の中へともどった。するとそこにいた第二王子殿下がハッとした顔をして、第六王子殿下を抱きしめた。第二王子殿下は、俺達を見ると、頭を下げた。
「お顔をお上げ下さい、俺達は当然のことをしただけなので」
夕陽がそういうと、王子様然とした柔らかな笑顔で、第二王子殿下が言った。
「ありがとうございます、弟を見つけてくれた。僕は第二王子のノアルアと申します。皆様の名前もどうぞ伺わせて下さい」
「俺達は――」
梓馬さんが、夕陽と俺と高橋のことを紹介する。すると頷いたノアルア第二王子殿下が、後ろにいた騎士に指示を出した。騎士は、袋を梓馬さんに渡す。
「これは報奨金です。いかようにもお使い下さい」
「不要だ。俺達は金目的で探したわけでは無いからな。ただ子供が迷子だと聞いて心配しただけだ」
梓馬さんが断ると、第二王子殿下が破顔した。
「ありがとうございます。優しい方々なのですね。では、なにか僕にできるお礼はありますか?」
すると少し考えたようにしてから、梓馬さんが言った。
「実は、俺は剣や魔術などの修行をしたいと考えているんだ。適切な土地があれば、紹介して欲しい」
「あ、俺も回復術の練習をしたいんだった」
高橋が声を挟んだ。二人を交互に見てから、ノアルア第二王子殿下が頷く。
「それでしたら、剣魔都市ワーグナルの訓練施設が国内でも名高いですね。紹介状を書きましょう」
「それは助かる」
こうしてノアルア第二王子殿下が、その場で紹介状を書いてくれたので、俺達の次の行き先も決定した。確かに俺も魔術の使い方をもっときちんと覚えたいから、それは都合がいい。夕陽も何も言わなかった。
この夜振る舞われた王国料理は、絶品だった。
「もしかして第六王子殿下ですか?」
俺が声をかけると、頬を涙で濡らしていた少年が顔を上げた。
「誰?」
「っと、旅の者です。みんな探していますよ?」
「……それは僕が王族だからでしょう? 誰も本当は、僕のことなんか心配していないんだ。それに王族といっても、僕は継承順位も低い第六王子だし……」
泣きながら、第六王子殿下は悲しそうな声を出した。
すると高橋が首を捻った。
「どうしてそう思うんだ?」
「城の客の人が噂してるのを、廊下で聞いたんだ。『無価値な第六王子だけど、一応媚びを売るか』って。お前達もどうせ、そうなんだろう?」
それを聞くと夕陽が大きく首を振る。
「俺達は、いなくなったと聞いて心配しただけだ。もしきみが第六王子殿下でなく、ただいの一般人の子供だって、子供が迷子になったと聞いたら俺達は心配して探した」
「そうだぞ。自意識過剰なんじゃねぇか? ただみんなに心配をかけているだけだぞ、お前の行動は」
梓馬さんも何度も頷いている。
すると泣いたままで、勢いよく第六王子殿下が顔を上げた。
「……本当に、ぼくのことをみんなが心配してくれてるのかな?」
「そうだ。みんなを自分勝手な行動で、心配させることこそ、みんなを失望させると俺は思うぞ。周囲に自分を見て欲しいなら、きちんとお前自身が周りを見ろ。そして自分を本当に心配してくれてるって気がつけ」
梓馬さんの言葉を聞くと、少しして第六王子殿下がコクリと頷いた。
夕陽が微笑する。
「梓馬、言い方があるだろう。でも、俺も梓馬と同じ事を思っていた」
「……うん。僕、帰るよ」
「一緒に帰ろう、第六王子殿下」
「うん!」
こうして夕陽と梓馬さんが第六王子殿下を挟むようにして歩き、高橋と俺はその後ろについて、城の中へともどった。するとそこにいた第二王子殿下がハッとした顔をして、第六王子殿下を抱きしめた。第二王子殿下は、俺達を見ると、頭を下げた。
「お顔をお上げ下さい、俺達は当然のことをしただけなので」
夕陽がそういうと、王子様然とした柔らかな笑顔で、第二王子殿下が言った。
「ありがとうございます、弟を見つけてくれた。僕は第二王子のノアルアと申します。皆様の名前もどうぞ伺わせて下さい」
「俺達は――」
梓馬さんが、夕陽と俺と高橋のことを紹介する。すると頷いたノアルア第二王子殿下が、後ろにいた騎士に指示を出した。騎士は、袋を梓馬さんに渡す。
「これは報奨金です。いかようにもお使い下さい」
「不要だ。俺達は金目的で探したわけでは無いからな。ただ子供が迷子だと聞いて心配しただけだ」
梓馬さんが断ると、第二王子殿下が破顔した。
「ありがとうございます。優しい方々なのですね。では、なにか僕にできるお礼はありますか?」
すると少し考えたようにしてから、梓馬さんが言った。
「実は、俺は剣や魔術などの修行をしたいと考えているんだ。適切な土地があれば、紹介して欲しい」
「あ、俺も回復術の練習をしたいんだった」
高橋が声を挟んだ。二人を交互に見てから、ノアルア第二王子殿下が頷く。
「それでしたら、剣魔都市ワーグナルの訓練施設が国内でも名高いですね。紹介状を書きましょう」
「それは助かる」
こうしてノアルア第二王子殿下が、その場で紹介状を書いてくれたので、俺達の次の行き先も決定した。確かに俺も魔術の使い方をもっときちんと覚えたいから、それは都合がいい。夕陽も何も言わなかった。
この夜振る舞われた王国料理は、絶品だった。
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