異世界クリエイター ~ゲームをしていたら、神様に剽窃されました~

猫宮乾

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―― 第二章 ――

【012】再会

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 十九時少し過ぎに、夕陽と梓馬さんが降りてきた。夕陽はどこか不機嫌そうで、梓馬さんはニヤリと笑っている。きっとまた夕陽は虐められたのだろう。

「こっちだ」

 俺は手を挙げ、先にとっていた席に促す。気づいた二人がすぐにやってきた。こうして窓際の四人がけの席に座り、俺達はメニューを見た。ファミレスで出てきそうな料理が書かれている。方向性はイタリアンだ。違いは、一人用が無い点だ。

「俺はラザニアの大皿を頼んで欲しい」

 最初から決めていた高橋が言う。すると梓馬さんが、メニューを指差した。

「俺はそうだな、とりあえずシーザーサラダ。夕陽は?」
「ん。俺はミートソースがいい。陽射は?」
「それだけ頼んだら十分だと思うから、俺はわけてもらうよ」

 こうして頼むしながら決まったので、それぞれ飲み物も選び、店員に声をかけた。エプロン姿の男の子だった。ファンタジックな衣装を着ている。

「俺と陽射は、明日は服と武器を調達する予定です」
「そうか。俺は武器は既にあるが、服は欲しいな。夕陽も欲しいだろ?」
「ああ、そうだな」

 そんなやりとりをしながら料理を待つ。
 すぐに運ばれてきた品は、どれも食欲をそそる見た目をしており、見た目を裏切らず味も良かった。俺達は自分の皿に料理を取り分けてから、改めて今後の予定を話し合う。

「――ということで、俺と陽射は依頼をしようと思ってます」

 高橋は俺を勝手に巻き込んだ。俺は依頼をするつもりは無かったというのに……!

「陽射が心配だから俺もいく」

 夕陽のブラコンが発動している。すると東さんが左右非対称の目をし、左側だけ眇めた。

「しょうがないから俺も行ってやるよ。で? どんな依頼に行くつもりなんだ?」

 梓馬さんがそう述べた時である。
 激しい音を立てて、宿の扉が開いた。俺達四人は思わずそちらに視線を向ける。
 すると、騎士っぽい装束の青年が立っていた。その顔を見て、俺は思わず目を丸くして声を上げた。

「ロイド!」

 俺が言動を調整した、唯一のNPCだった。するとロイドが俺に気づいたようで、短く息を飲んでから、こちらへと歩み寄ってきた。

「ヒザシ、久しぶりだな」

 先日会った時はずっと笑顔だったのだが、今は真面目な表情をしている。

「どうしてここに?」
「ああ、隣接している青闇の森に、魔竜の一種であるイグナーツが出現したから、騎士団が師団を派遣しているんだ。俺もその一員でな。ここは冒険者に依頼可能だと聞いて、人手を集めるために依頼に来たんだ。特に、回復術士が不足しているからすぐに欲しい」

 真面目な言葉だった。俺はもっと情報が知りたくて、会話能力を上げることに決める。
 ――だが。
 NPCの選択画面の、【会話調整】や【性格調整】がブラックアウトしていて、選択できなくなっていた。つまり、《神様》であっても、既に人格は変更できなくなったのだろう。考えてみればそれはそうだ。ここはよく似た異世界ではあるけど、ゲームの中ではないのだから、現地に生きている人々は、俺が操作できるようなNPCではなく、もうれっきとした人間なのである。それに気づかなかった自分は、愚かだと思った。

「陽射、知り合いなのか?」

 高橋が俺に問いかけた。俺は小さく頷く。

「前に別の都市の図書館で話したことがあるんだ」
「そっか。だったら信用できる相手? ってことだよな?」
「まぁ、俺には優しかったけど……?」

 俺が首を傾げると、高橋が笑顔になり、大きく頷いた。それからロイドに視線を向ける。

「俺、回復術士を目指してます。経験は無いけど、治癒の能力があります」
「なに? それは心強いな。ぜひ力を貸してもらえないか?」
「勿論」

 高橋はそういうと俺達三人を見渡した。

「俺は行くけど、誰か来る?」
「――俺と夕陽は服を買いに行く」

 梓馬さんが無表情で首を振る。すると隣に座っている夕陽が、俺の腕の服を掴んだ。

「危険だ。行くな」
「うっ……」

 高橋との友情と、行きたくない心境及び兄の言葉交差する。一瞬迷っていた俺の目を見て、高橋は頷くと立ち上がった。

「陽射は待ってろ。俺に付き合うことはないし」
「……高橋……無理だけはするなよ?」
「大丈夫だって。俺は血が嫌いだから、大きな怪我なんかがあるような即戻ってくるから」

 俺はその言葉を信じることにして何度も大きく頷いた。

「ロイド、高橋をよろしく」
「ああ、ヒザシ。タカハシのことは、俺に任せてくれ。必ず守り抜く」

 やっと笑顔になり断言したロイドは、格好良かった。

「行こう、タカハシ」
「うん」

 こうして踵を返したロイドの後に続いて、タカハシが立ち上がり歩きはじめた。
 その背中を、俺はいつまでも見ていた。
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