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―― 第一章 ――

【三】◆大学時代 ―― 一年 1 ――

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 相馬と俺の出会いは、入学後すぐのオリエンテーションの時だった。
 平成十七年の春だ。
 心理学科全体の説明が行われている講堂で、俺は空いている席を視線で探した。開始ギリギリに到着した為、俺は慌てて着席した。隣に座る人物を確認する余裕もなくて、ルーズリーフを鞄から取り出し、愛用のシャープペンをその横に置いた。

 この時の俺は、まだ比較的真面目だった。一人暮らしも開始したばかりで、これからの日々が楽しみだった。

「これ」

 その時声をかけられた。そこで初めて俺は横を見た。配布中のレジュメと出席確認カードを、隣の学生が俺に回してくれたのである。

「有難う」

 俺は笑顔を返しながら、長身の相手を見た。黒い髪に、整った形の目をしていた。周囲は俺も含めてだが、俗に言う大学デビューとでもいうのか、明るく髪を染めたりしている学生も多かったが、天然物の黒髪だと一見して分かった。ただ少し長めの前髪をはじめとして、髪型が格好良かった。第一印象として、真面目そうだがモテそうだなぁと漠然と思った記憶がある。元の素材が違うという感覚だ。俺だってそう悪い方ではなく、ごく普通か雰囲気イケメンであると自負しているが。眼鏡だって洒落た品に変えた。

 さてオリエンテーションはそのまま進み、その後は――俺は携帯電話を弄っていた。俺の真面目な時間は、僅か三十分程度で終了した。終了後も、すぐに俺は講堂を出て、エレベーターで階下に向かい、外に出てからは大きく深呼吸をした。

 眼前には、サークルの勧誘活動の場が設けられていて、フライヤーを配布している先輩達が溢れていた。

 ちなみに俺には、入りたいサークルが最初から存在した。
 ――小説研究会。
 俺の将来の夢は小説家であり、大学に入ったら、是非とも書いたり読んだりする仲間が欲しかった。インターネットで見知らぬ創作仲間とやり取りする事も嫌いではなかったが、直接批評などをされてみたかった。

「良かったらチラシだけでもー!」

 サークルカットが載る冊子を片手にグラウンドに入ると、すぐに多くの先輩達にフライヤーを渡された。ちょっとグっと来る可愛い女の先輩に見惚れつつ、俺は小説研究会の場所を目指して歩いた。他のサークルは、通りかかるだけでフライヤーを渡してくれるから、小説研究会もきっと俺を勧誘してくれるはずだと信じていた。



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