上 下
8 / 13
―― 本編 ――

8:手錠と媚薬と玩具(★)

しおりを挟む


「な、なぁ、これ……何?」
「手錠だ」

 キースは呆気にとられた。服を脱いで寝台に上がれという部分までは、数少ない――正確に言うならば、昨日一度だけ経験があったから、理解できた。そうしたら、ハロルドが、それまで寝台の飾りだと思って過ごしてきた銀色の鎖と、ベッドサイドの棒にはめられていた輪っかを手に取り、キースの手首のそれぞれにはめたのである。

「なんでそんなものがベッドについてるんだ?」
「この部屋を使ってきた歴代の王族が、変態だったということだろう」
「へ!?」

 こうしてキースは、両腕を広げる形で拘束された。その前で、ハロルドが瓶を手に取る。昨日ベッドサイドにあったものとは異なる。ハロルドが用意していた香油――正確に言うならば、媚薬である。彼が広く展開している店の一つには、大人の玩具の専門店等もあるのだ。後孔からしか吸収されないその潤滑油を、迷うことなく指に取り、あらわになっているキースの内部へとハロルドは塗り込めた。

 少しひんやりしているが、媚薬だなどとは知らないキースは、唇を噛んで耐える。これもまた、王室業務の一環なのだと疑っていなかった。

 ハロルドがキースの左の太ももを持ち上げながら、二本の指で、内部を暴いていく。たっぷりと、細い瓶がからになるまで、そうしていた。適量は二滴であるとハロルドは知っていたが、忘れたふりをしていた。

 吸収までには、少し時間がかかる。その間にやることがあると、ハロルドは考えていた。その為、指を引き抜いてシーツで拭いた後、じっとキースを見る。それがキースにとっては恥ずかしい。照れているキースを見ていると、ハロルドは嗜虐心を煽られる気がした。

 まずは革製の、黒金の輪をキースの根元にはめる。まだ、キースの陰茎は反応を見せていない。事態が全く理解できていないキースは、こういう性交渉もあるのかと漠然と考えていた。彼には、変態趣味の知識は皆無だったのである。

「まぁこんなものだな」
「……? これ、俺はどうすれば良いんだ?」

 キースが首を傾げた、その時だった。

「!」

 一気に、キースの全身が熱を持った。

「あ」

 気づくと声が出ていた。限界まで陰茎が反り返る。出る、と、そう思った時、根元の拘束で止められている事に気がついた。

「あ、あ、あ」

 ジンジンと内部が熱い。キースは何が起きたのか分からなかった。全身に、背筋に沿って稲妻が走り抜けていったのだが、ガクガクと体は震え、冷や汗もこみ上げてくる。暑いのに寒かった。

「うあああああああああ」

 内部からせり上がって来る熱に、キースは叫んだ。無我夢中で首を振る。黒い絹のような髪が揺れている。青い瞳が涙で滲んでいた。手錠が揺れるたび、金属音が響いた。

 それを見て気をよくしたハロルドは、ゆっくりと自分の服を脱ぎ始める。

「ダメ、ダメだ、嫌だ、何、うああああああああああああああ」
「どうして欲しい?」
「助けて!」

 キースは本心から泣き叫んだ。するとハロルドが喉で笑った。

「こういう時はな、挿れてくれと、そう言うんだ」
「あ、ああっ、あ……ああっ、挿れて」
「随分とこらえ性がない新王陛下だな」
「いやあっ、だめだ、気が狂う!」

 涙で顔をぐちゃぐちゃにしているキースを見て、ハロルドが嘆息した。
 それから持参したカバンの蓋を開けた。中には、ずらりと張り型が並んでいる。
 細いものから太いものまで、突起付きのものから、本物そっくりの感触のものまで。
 さてどれを使おうか、そう考えながら、少し迷った末、魔力で振動する玩具を手にとった。つかつかとキースに歩み寄り、問答無用でそれを押し込む。

「あ、ああ……あ、何、何……な、あああああああ」

 すんなりと入った中型の張り型は、入り切るとゆっくりと振動を始めた。その動きは、キース自身の魔力を吸い取り、徐々に早さを増していく。

「あああああああああああああ」

 前立腺を突き上げられる形で固定され、早い振動に、キースは悶えた。容赦ない機械的な刺激が、強制的に快楽を煽っていく。媚薬の熱と相まって、すぐに理性は吹き飛んだ。だが、戒められているため、達する事は出来ない。代わりに何度も何度も中だけで果てさせられる。息が上がり、呼吸をするのも声を出すのも苦しくなったが、勝手に嬌声――というより泣き叫ぶ声が漏れる。

「もう、もう、ゃだぁっ――あ!!」
「だが、気持ち良いだろう?」
「うあ……ああああっ、やぁあああああ」
「出したいか?」
「出したい、あ、出したいッ」

 それを聞いたハロルドが、小さく笑ってから、キースの前の戒めを外した。
 瞬間、白い液が飛び散る。

「さて――どのくらい果てられるかな?」
「ああああああああああああああああ!!!」

 ハロルドがそう言った時、玩具の振動がさらに早くなった。そのまま何度も何度もキースは前から放ち、中だけでも果て、現実認識が上手くできなくなっていった。夕食までの間それは続き、夕食の時間になっても終わらない。

 途中でやってきた使者に、ハロルドが、今日の相手は自分だと告げて、追い返してしまったからだ。キースは、おぼろげにしか聞いていなかった。

 そんなハロルドが中へと入ってきたのは、既に空が暗くなってからのことである。
 既にほぐれきっていたキースの中が、熱く絡み付いてくる。
 挿入された瞬間にも、キースは出した。それを見て気をよくしたハロルドが、ガンガンと腰を打ち付ける。

「玩具と私のどちらが良い?」
「あ、ああっ」

 答えなど返ってこないと思いながら、ハロルドは聞いた。

「あ、ハロルドっ」
「!」

 しかし甘い涙混じりの声が返ってきた。うっかりハロルドは果ててしまった。胸が疼いた。ドキリとした。

「――私の方が良いのか?」
「うん、あっ、ああああ」

 そのキースの回答に、何故なのか、どうしようもなく満たされながら、ハロルドは荒くなった吐息を鎮める。そうして硬度を取り戻した後、一晩中キースを抱いた。

 キースは、いつ自分が意識を失ったのかわからなかった。
 目を覚ますと、やはりひとりきりで、すべてが夢だったような気になった。
 だが手首に残る手錠の痕を見て、夢ではなかったと確信した時、真っ赤になった。
 ――なんだか、すごい事をしてしまった。
 そう思いながら体を起こそうとして、非常に重い事に気がついた。喉も枯れている。

 その日――キースは、初めて仕事を休んだのだった。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。

猫宮乾
BL
 異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

元執着ヤンデレ夫だったので警戒しています。

くまだった
BL
 新入生の歓迎会で壇上に立つアーサー アグレンを見た時に、記憶がざっと戻った。  金髪金目のこの才色兼備の男はおれの元執着ヤンデレ夫だ。絶対この男とは関わらない!とおれは決めた。 貴族金髪金目 元執着ヤンデレ夫 先輩攻め→→→茶髪黒目童顔平凡受け ムーンさんで先行投稿してます。 感想頂けたら嬉しいです!

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

つぎはぎのよる

伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。 同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。

処理中です...