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【SeasonⅡ】―― 終章:学校の七不思議 ――
【084】学校の噂
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薺が家にいるのが、本当にうれしい。
ぼくは土曜日はいっぱい薺と遊んで、日曜日の午前中に、あらためて哀名にほうこくすることにした。
《弟が退院したんだよ》
《おめでとう。お祝いしなきゃ》
《いっぱいしたよ。ありがとう》
そんなやりとりをしながら宿題をながめて、ぼくは思った。
――哀名に、きちんと告白したい。
ぼくは〝かくご〟を決めることにした。だってもう、小学校はあと残り少しだ。会えるいまのうちに、気持ちを伝えたい。振られたら、気まずくなるかもしれないけど、それdも好きだってことを、ちゃんと言いたい。ぼく自身のために。
《月曜日の放課後、あいてる?》
《ええ》
《話があるから、一緒に帰って欲しいんだ》
《どんな話?》
《月曜日に話すよ》
《わかった。約束》
ぼくはそれから、宿題があんまり頭に入らず、どんなふうに告白するか、シミュレーションするのにいそがしくなった。かっこいい告白とタブレット端末で検索してみたけど、色々ありすぎてピンとこない。
「ぼくの言葉で伝えたらいいよね」
ぼくはそう結論づけた。
そわそわしっぱなしで日曜日を終えて、ぼくは緊張しながら放課後を待った。正面に座っている哀名の背中を思わず何度も見てしまった。視界に入るだけで、ドキドキする。
――放課後になり、哀名がぼくを見た。ぼくは頷いて立ち上がり、ランドセルを背負う。哀名がとなりにきた。
「行こう」
「ええ」
こうしてぼく達は一緒に生徒玄関へ向かった。その間は無言だった。いつもならおしゃべりをするのに、ぼくは緊張してしまいなにも言葉が出てこなかった。哀名も無表情だったから、昔に戻ったみたいで不安になった。
それからぼく達はコンビニの前を通って、神社まできた。石段を登ってベンチに行く。そして座ってから、ぼくはじっと哀名を見た。哀名もこちらを見ている。
「ぼく……詩織のことが好きなんだ」
すると哀名がハッとした顔をしてから、すごく嬉しそうに笑った。
そして小さな声で、ぼくに言った。
「私も。私も瑛くんのことが好き」
ぼく達は顔を見合わせる。そして一緒に笑った。ぼくは信じられない気持ちもあったけど、夢じゃないと思った。
「好きな人がいるんじゃなかったの?」
「気づいてないみたいだったけど、瑛くんのことだよ」
「そ、そっか!」
それは考えていなかったから、ぼくはとびあがりそうなくらい嬉しくなった。
「ぼくとその……付き合ってくれる?」
「ええ。私と付き合って」
ぼく達はお互いにそう言い、笑顔のままでうなずきあう。
それからは、ぼく達はいつもと同じように、笑顔でお話した。すると市営の放送が五時をつげるまで話してしまった。
「帰ろうか」
「うん」
ぼく達はそろって立ち上がる。ぼくはまた勇気を出すことにした。
「手、繋いでもいい?」
「聞かなくていいよ」
哀名の言葉が本当にうれしい。
二人で手を繋いで石段を降りる。一番下までおりてからも、ぼく達は、手を繋いで歩いて行く。ぼくは幸せをかみしめた。
――ぼく達が付き合っているという噂が学校で広まるまでは、もう少し。
学校の七不思議のウワサよりも、ぼく達の関係のほうがホットなウワサになってしまったのだったりする。
―― 【SeasonⅡ】・完 ――
ぼくは土曜日はいっぱい薺と遊んで、日曜日の午前中に、あらためて哀名にほうこくすることにした。
《弟が退院したんだよ》
《おめでとう。お祝いしなきゃ》
《いっぱいしたよ。ありがとう》
そんなやりとりをしながら宿題をながめて、ぼくは思った。
――哀名に、きちんと告白したい。
ぼくは〝かくご〟を決めることにした。だってもう、小学校はあと残り少しだ。会えるいまのうちに、気持ちを伝えたい。振られたら、気まずくなるかもしれないけど、それdも好きだってことを、ちゃんと言いたい。ぼく自身のために。
《月曜日の放課後、あいてる?》
《ええ》
《話があるから、一緒に帰って欲しいんだ》
《どんな話?》
《月曜日に話すよ》
《わかった。約束》
ぼくはそれから、宿題があんまり頭に入らず、どんなふうに告白するか、シミュレーションするのにいそがしくなった。かっこいい告白とタブレット端末で検索してみたけど、色々ありすぎてピンとこない。
「ぼくの言葉で伝えたらいいよね」
ぼくはそう結論づけた。
そわそわしっぱなしで日曜日を終えて、ぼくは緊張しながら放課後を待った。正面に座っている哀名の背中を思わず何度も見てしまった。視界に入るだけで、ドキドキする。
――放課後になり、哀名がぼくを見た。ぼくは頷いて立ち上がり、ランドセルを背負う。哀名がとなりにきた。
「行こう」
「ええ」
こうしてぼく達は一緒に生徒玄関へ向かった。その間は無言だった。いつもならおしゃべりをするのに、ぼくは緊張してしまいなにも言葉が出てこなかった。哀名も無表情だったから、昔に戻ったみたいで不安になった。
それからぼく達はコンビニの前を通って、神社まできた。石段を登ってベンチに行く。そして座ってから、ぼくはじっと哀名を見た。哀名もこちらを見ている。
「ぼく……詩織のことが好きなんだ」
すると哀名がハッとした顔をしてから、すごく嬉しそうに笑った。
そして小さな声で、ぼくに言った。
「私も。私も瑛くんのことが好き」
ぼく達は顔を見合わせる。そして一緒に笑った。ぼくは信じられない気持ちもあったけど、夢じゃないと思った。
「好きな人がいるんじゃなかったの?」
「気づいてないみたいだったけど、瑛くんのことだよ」
「そ、そっか!」
それは考えていなかったから、ぼくはとびあがりそうなくらい嬉しくなった。
「ぼくとその……付き合ってくれる?」
「ええ。私と付き合って」
ぼく達はお互いにそう言い、笑顔のままでうなずきあう。
それからは、ぼく達はいつもと同じように、笑顔でお話した。すると市営の放送が五時をつげるまで話してしまった。
「帰ろうか」
「うん」
ぼく達はそろって立ち上がる。ぼくはまた勇気を出すことにした。
「手、繋いでもいい?」
「聞かなくていいよ」
哀名の言葉が本当にうれしい。
二人で手を繋いで石段を降りる。一番下までおりてからも、ぼく達は、手を繋いで歩いて行く。ぼくは幸せをかみしめた。
――ぼく達が付き合っているという噂が学校で広まるまでは、もう少し。
学校の七不思議のウワサよりも、ぼく達の関係のほうがホットなウワサになってしまったのだったりする。
―― 【SeasonⅡ】・完 ――
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