図書室ピエロの噂

猫宮乾

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【SeasonⅠ】―― 第三章:トイレの花子さんとババサレ ――

【023】旧校舎

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 ぼくは哀名と〝うちあわせ〟をしたとおりに、月曜日の放課後、四時半になってすぐに、旧校舎にはいった。ほこりっぽい校舎を土足で進む。四階まで静かに階段をあがっていくと、先に哀名がきていた。

「もうすぐね」
「うん」
「なかに入って待ちましょう」
「わかった!」

 女子トイレに入るのはきんちょうしたけど、ぼくは哀名につづいて中に入った。
 ドアが四個ある。
 窓側の奥が四番目だ。七不思議では、そう言われている。

 哀名はポケットから、スマホを取り出した。ぼくもなにかあったときのためにと持たせられている。もしかしたら、哀名の連絡先を教えてもらえるかもしれない。そう思って、ポケットからぼくもスマホを取り出した。

「あと四分ね」
「う、うん。そうだね」

 しかしうまく言い出せなくて、ぼくも時計を見ているふりをした。
 すると時間はあっという間にたった。

「花子さんにこえをかけるわ」
「わかった」
「はーなこさん! あーそびましょー!」

 哀名がいつもより大きな声で叫んだ。ぼくはその横顔を見ていた。

「はぁい!」

 そうしたら、女の子の声がかえってきて、ギギギっと音がして、四番目のドアが開いた。

「!」

 そこから出てきたおかっぱ頭の、赤いスカートをはいた女の子を見て、ぼくは一歩後ろにさがった。ゾクゾクッと寒気がする。出た! 七不思議は、本当だったんだ!

「なにして遊ぶ?」

 小学校三年生くらいに見える。ぼくは震えそうになったが、哀名を守らなければと思い、ギュッと手を握った。だが哀名は平気な顔をして、じっと花子さんを見ている。

「聞きたいことがあるの」
「なぁに?」
「図書室ピエロのこと、知ってる?」

 哀名の感情がなんにもわからない声を聞くと、花子さんが目を丸くした。

「ああ、鏡の中にいたピエロ?」

 その言葉に、ぼくと哀名は顔を見合わせた。


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