20 / 101
【SeasonⅠ】―― 第二章:トンカラトン ――
【020】はじめての定期報告
しおりを挟む一週間は長いようであっという間だった。
ぼくはその間、一度も哀名と話さなかったし、何度か見てしまったけど目もあわなかった。だから、本当に来るのかなって思いながら、ぼくは水間さんと約束をしている公園にいった。今日はランドセルを持っていないから、亮にいちゃんが不思議そうな顔をすることもなかった。
十時の少し前に公園につくと、水間さんがベンチに座っていた。
そして、哀名がブランコに座っていた。ぼくは交互に二人を見る。
先に立ち上がったのは、哀名だった。
「楠谷くん」
今日も、〝きふく〟のない声だ。一歩遅れて立ち上がろうとしていた水間さんが驚いた顔をしている。ぼくが立っていると、哀名が近づいてきた。
「紹介して?」
「あ、うん」
うなずいて、ぼくは水間さんにむかって歩く。哀名もついてきた。
「水間さん、あのね、クラスメイトの哀名」
「クラスメイト……? 一体、どうして?」
「トンカラトンの居場所を占ってくれたんだ。それで、一緒に、その……調べるのを手伝いたいって」
ぼくの言葉に、水間さんが困ったような顔をした。
すると哀名が前に出て、水間さんを見上げた。
「はじめまして。哀名詩織です。私にも都市伝説の調査を手伝わせてください」
「……子供のお遊びじゃないんだぞ? 危険が伴う」
「大丈夫です。不思議なことには、昔から慣れているから」
哀名が表情を変えずに断言したのを見ると、少ししてから水間さんがためいきをついた。
「それで? トンカラトンはどこにいるんだ?」
「あのね、きさらぎ駅の裏の方の、シャッター通りみたいなんだけど――水間さん、注意しなきゃならないことがあるんだって!」
「注意?」
「トンカラトンにあったら、『トンカラトンと言え』って言われるまで名前を言っちゃダメだし、そう言われたら、きちんと『トンカラトン』と言わないとダメなんだ。そうじゃないと、日本刀で切られて、新しいトンカラトンにされちゃうんだって!」
「それは知らなかった……覚えておく」
水間さんが立ち上がったので、ぼく達もついて行くことにした。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる