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【SeasonⅠ】―― 第一章:まっかっかさん ――
【012】天気予報
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「なに? 何日前だ!?」
水間さんの声の調子が強くなった。ぼくは、死んでしまうのかと怯えながら、お母さんのことを思い出す。お母さんも、本当に急に亡くなったからだ。
「つゆのとき。六月の真ん中よりも前だよ」
「っ……きみは、生還者と言うことか」
「セイカンシャ?」
「生きている貴重な人間という意味だ。そのときのことを、できる限り思い出して欲しい。なにか特別なことはしたか?」
真剣な顔で水間さんがぼくを見ている。ぼくは困ってしまった。
「なんにもしてない……傘を差して、歩いていただけなんだ」
「持ち物は? 服装は?」
「ぼくは赤いTシャツで……あ! おんみょうじのマークが胸に入ってるTシャツだった! 白と黒のオタマジャクシみたいなやつ!」
「……太陰大極図か。あれ自体には、魔除けの効果はない」
難しい名前と、落ち込んだように肩を落とした水間さんを見て、ぼくまで悲しくなってきた。
「まっかっかさんは、きみの前で、なにかしたか?」
「ぼくの胸の辺りをじっと見てたから、ぜったいあのマークを見てたんだと思うんだけど……ん? 違うのかも。ぼくの服を見てたのかな? おそろいの色だから」
ぼくがひらめいたことを言うと、いきおいよく水間さんが顔を上げた。そしてメガネの位置を指で直してから、ゆっくりと頷いた。
「その可能性はあるな。そうか、赤い色が〝カギ〟になっているのかもしれない」
水間さんはそう言うと、カバンからタブレットを取り出した。ぼくも授業で使うから、学校から配布されて、一台持っている。水間さんは画面に触れた。背伸びをしてぼくがのぞき込むと、そこには天気予報がのっていた。
「明後日の予報が雨だ。まっかっかさんが出る可能性が高い」
「家にひきこもっていた方がいいかな?」
「きみはな」
「きみじゃない。ぼくは瑛だよ」
「瑛。瑛は家を出るな」
「水間さんはどうするの?」
「俺は赤いものを身につけて、本当に効果があるのか試す」
「え!? もし間違いだったら死んじゃうよ?」
「――構わない。俺は都市伝説の〝しんぎ〟を確かめるために生きているんだ」
水間さんが言いきった。ぼくは少し困った。止めるべきだと思ったけど、水間さんはぜったいに行くという顔をしている。
「だったらぼくも行くよ! ぼくは一回会って、助かってるんだ。ぼくが一緒だったら、なにか役に立つかもしれない」
ぼくの言葉を聞いて、水間さんが目を丸くした。そして心なしか苦しそうな顔をした後、小さくうなずいた。
「本当は、まきこみたくはない。だが……瑛、力をかして欲しい」
「まかせて!」
人助けは率先的にするのが、〝大人〟だ。ぼくは大きく頷いた。
水間さんの声の調子が強くなった。ぼくは、死んでしまうのかと怯えながら、お母さんのことを思い出す。お母さんも、本当に急に亡くなったからだ。
「つゆのとき。六月の真ん中よりも前だよ」
「っ……きみは、生還者と言うことか」
「セイカンシャ?」
「生きている貴重な人間という意味だ。そのときのことを、できる限り思い出して欲しい。なにか特別なことはしたか?」
真剣な顔で水間さんがぼくを見ている。ぼくは困ってしまった。
「なんにもしてない……傘を差して、歩いていただけなんだ」
「持ち物は? 服装は?」
「ぼくは赤いTシャツで……あ! おんみょうじのマークが胸に入ってるTシャツだった! 白と黒のオタマジャクシみたいなやつ!」
「……太陰大極図か。あれ自体には、魔除けの効果はない」
難しい名前と、落ち込んだように肩を落とした水間さんを見て、ぼくまで悲しくなってきた。
「まっかっかさんは、きみの前で、なにかしたか?」
「ぼくの胸の辺りをじっと見てたから、ぜったいあのマークを見てたんだと思うんだけど……ん? 違うのかも。ぼくの服を見てたのかな? おそろいの色だから」
ぼくがひらめいたことを言うと、いきおいよく水間さんが顔を上げた。そしてメガネの位置を指で直してから、ゆっくりと頷いた。
「その可能性はあるな。そうか、赤い色が〝カギ〟になっているのかもしれない」
水間さんはそう言うと、カバンからタブレットを取り出した。ぼくも授業で使うから、学校から配布されて、一台持っている。水間さんは画面に触れた。背伸びをしてぼくがのぞき込むと、そこには天気予報がのっていた。
「明後日の予報が雨だ。まっかっかさんが出る可能性が高い」
「家にひきこもっていた方がいいかな?」
「きみはな」
「きみじゃない。ぼくは瑛だよ」
「瑛。瑛は家を出るな」
「水間さんはどうするの?」
「俺は赤いものを身につけて、本当に効果があるのか試す」
「え!? もし間違いだったら死んじゃうよ?」
「――構わない。俺は都市伝説の〝しんぎ〟を確かめるために生きているんだ」
水間さんが言いきった。ぼくは少し困った。止めるべきだと思ったけど、水間さんはぜったいに行くという顔をしている。
「だったらぼくも行くよ! ぼくは一回会って、助かってるんだ。ぼくが一緒だったら、なにか役に立つかもしれない」
ぼくの言葉を聞いて、水間さんが目を丸くした。そして心なしか苦しそうな顔をした後、小さくうなずいた。
「本当は、まきこみたくはない。だが……瑛、力をかして欲しい」
「まかせて!」
人助けは率先的にするのが、〝大人〟だ。ぼくは大きく頷いた。
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