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【SeasonⅠ】―― 序章:図書室のマスク男の噂 ――
【006】図書室のマスク男⑥
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「――だから、マスク男はいたけど、人間だったよ」
月曜日。
ぼくが説明をすると、西くんが唇をとがらせた。
「それは、〝ニセモノ〟だ!」
「えっ、で、でも、泰我先生だって人間だって……」
「きっと〝ブガイシャ〟がいたから、本物が出てこなかったんだ!」
西くんが力説すると男子達が皆大きく頷いた。ぼくはあきれてしまった。
その時、教室の後ろの扉が開いた。顔を向けると、黒いまっすぐな髪を長く垂らしたクラスメイトの哀名詩織が入ってきたところだった。無表情のまま哀名はまっすぐに机に向かう。人形のように綺麗な顔をしている。でも哀名はクラスで浮いている。哀名を見た瞬間、西くんでさえも黙った。
哀名は鞄を机の脇にかけると、黒い布袋を取り出した。
そしてトランプのようなカードを机の上にのせる。
なんでもルノルマンカードというそうだ。占いができカードらしい。転校生だった哀名が当初それを机にのせたときには、クラスは彼女の机を取り囲んだ。けれど哀名が、『飛砂先生が怪我をする』と占った。その日の放課後に、昨年までの担任の飛砂先生が階段から落ちて骨折した。それから哀名は恐れられている。今では退院した飛砂先生は、このクラスの副担任をしているけど、先生まで怯えているのがぼくの目から見てもわかる。
ただぼくは、みんなと同じように哀名を遠巻きにしているけど、実はそんな自分をおくびょうだと思っている。昨年の五年生の時に、たまたま隣の席になって消しゴムを借りてから、実ばぼくは哀名が好きだ。初恋だ。だけどクラスのみんなは避けているし、巻き込まれたくない。自分には、彼女を勇者のように守る力はない。
その後授業が始まり、月曜日も一日が流れていった。
月曜日。
ぼくが説明をすると、西くんが唇をとがらせた。
「それは、〝ニセモノ〟だ!」
「えっ、で、でも、泰我先生だって人間だって……」
「きっと〝ブガイシャ〟がいたから、本物が出てこなかったんだ!」
西くんが力説すると男子達が皆大きく頷いた。ぼくはあきれてしまった。
その時、教室の後ろの扉が開いた。顔を向けると、黒いまっすぐな髪を長く垂らしたクラスメイトの哀名詩織が入ってきたところだった。無表情のまま哀名はまっすぐに机に向かう。人形のように綺麗な顔をしている。でも哀名はクラスで浮いている。哀名を見た瞬間、西くんでさえも黙った。
哀名は鞄を机の脇にかけると、黒い布袋を取り出した。
そしてトランプのようなカードを机の上にのせる。
なんでもルノルマンカードというそうだ。占いができカードらしい。転校生だった哀名が当初それを机にのせたときには、クラスは彼女の机を取り囲んだ。けれど哀名が、『飛砂先生が怪我をする』と占った。その日の放課後に、昨年までの担任の飛砂先生が階段から落ちて骨折した。それから哀名は恐れられている。今では退院した飛砂先生は、このクラスの副担任をしているけど、先生まで怯えているのがぼくの目から見てもわかる。
ただぼくは、みんなと同じように哀名を遠巻きにしているけど、実はそんな自分をおくびょうだと思っている。昨年の五年生の時に、たまたま隣の席になって消しゴムを借りてから、実ばぼくは哀名が好きだ。初恋だ。だけどクラスのみんなは避けているし、巻き込まれたくない。自分には、彼女を勇者のように守る力はない。
その後授業が始まり、月曜日も一日が流れていった。
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