1 / 101
【SeasonⅠ】―― 序章:図書室のマスク男の噂 ――
【001】図書室のマスク男①
しおりを挟む
ぼくは、大人だ。それは、当然のことだ。
もう小学六年生。
子どもじみた〝ウワサ〟なんか、僕は信じない。もう小学五年生なのに、信じるやつは、どうかしてる。
「ねぇねぇ、『図書室のマスク男』、また出たって! 二組の夏荻くんが見たんだって!」
ガラガラと音を立てて、西くんが教室の黒板側のドアを開けて入ってきた。西くんの大きな声にみんなが顔をむける。
ぼくたちの六年三組の教室の、みんなが西くんを見てる。ぼくも、そうした。
教卓の前まで西くんが、早足で歩く。それから興奮したように話しはじめた。
「やっぱり土曜の4時44分44秒に出たらしいぞ! 緑のコートで白いマスクで!」
それを聞いて、僕は、ばかばかしいと思った。
4がならんだ時間は不吉だというけど、だって午後の4時は16時だ。
16時44分44秒にするだけで、とたんに怖くなくなる。
「夏荻くんが見たんなら、本当じゃない?」
「だよね。児童会長で、あんなに頭もいいし」
「土曜日もたしかスポ少あったから、学校にいたんでしょう?」
「きっとそうだよ。体育倉庫のカギを職員室に返しに行ったんじゃない?」
「図書館は職員室がある向かいの校舎の二階だから、よく見えるもんね!」
教室中が一気にさわがしくなった。
くだらないと思っていても、ぼくは言わない。
自分の考えをおしつけるのは、空気が読めない〝子ども〟がすることだ。
「じゃんけんで負けたやつが、たしかめに行くことにしないか? 三組の男子のコケンだ」
お調子者の西くんが言うと、多くの男子が目をキラキラさせた。
西くんの声に、男子のみんなが教卓の前へとあつまっていく。
ぼくもそうした。そうしなかったら、〝へん〟に思われるから。
「最初はぐー。じゃんけんぽん」
西くんがしきり、じゃんけんがはじまる。
総当たりせんで、みんなとじゃんけんをした。
大人数だったから時間がかかったけど、じゃんけんはぶじに、休み時間の内に終わった
「……土曜日だね。明日だ。たしかめてくる」
負けたのは、ぼくだった。ぼくは、ただのウワサなのに、見にいくなんてばかみたいだと思ったけど、笑ってみせた。
みんなが楽しそうにぼくを見ている。
こうしてぼくは、図書室のマスク男のウワサをたしかめに行くことになった。
どうせ、いるわけないのに。
もう小学六年生。
子どもじみた〝ウワサ〟なんか、僕は信じない。もう小学五年生なのに、信じるやつは、どうかしてる。
「ねぇねぇ、『図書室のマスク男』、また出たって! 二組の夏荻くんが見たんだって!」
ガラガラと音を立てて、西くんが教室の黒板側のドアを開けて入ってきた。西くんの大きな声にみんなが顔をむける。
ぼくたちの六年三組の教室の、みんなが西くんを見てる。ぼくも、そうした。
教卓の前まで西くんが、早足で歩く。それから興奮したように話しはじめた。
「やっぱり土曜の4時44分44秒に出たらしいぞ! 緑のコートで白いマスクで!」
それを聞いて、僕は、ばかばかしいと思った。
4がならんだ時間は不吉だというけど、だって午後の4時は16時だ。
16時44分44秒にするだけで、とたんに怖くなくなる。
「夏荻くんが見たんなら、本当じゃない?」
「だよね。児童会長で、あんなに頭もいいし」
「土曜日もたしかスポ少あったから、学校にいたんでしょう?」
「きっとそうだよ。体育倉庫のカギを職員室に返しに行ったんじゃない?」
「図書館は職員室がある向かいの校舎の二階だから、よく見えるもんね!」
教室中が一気にさわがしくなった。
くだらないと思っていても、ぼくは言わない。
自分の考えをおしつけるのは、空気が読めない〝子ども〟がすることだ。
「じゃんけんで負けたやつが、たしかめに行くことにしないか? 三組の男子のコケンだ」
お調子者の西くんが言うと、多くの男子が目をキラキラさせた。
西くんの声に、男子のみんなが教卓の前へとあつまっていく。
ぼくもそうした。そうしなかったら、〝へん〟に思われるから。
「最初はぐー。じゃんけんぽん」
西くんがしきり、じゃんけんがはじまる。
総当たりせんで、みんなとじゃんけんをした。
大人数だったから時間がかかったけど、じゃんけんはぶじに、休み時間の内に終わった
「……土曜日だね。明日だ。たしかめてくる」
負けたのは、ぼくだった。ぼくは、ただのウワサなのに、見にいくなんてばかみたいだと思ったけど、笑ってみせた。
みんなが楽しそうにぼくを見ている。
こうしてぼくは、図書室のマスク男のウワサをたしかめに行くことになった。
どうせ、いるわけないのに。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる