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――第二章:花が咲く庭――
【五】
しおりを挟むするとゼルスが、僕の手を握る指先に力を込めた。そして僕に向き直った。
「キルト。陛下の許しも得た。無論、仮に得られなくても、俺の気持ちは変わらないが、俺は家族にも祝福されたかったんだ」
「気持ち?」
「ああ。俺と結婚してくれ」
そう述べると、ゼルスがポケットから、青灰色のヴェルベット張りの小箱を取り出した。そして箱を開けると、そこには百合と剣を象った意匠つきの、イヤーカフスが入っていた。
「これは?」
「誓約の百合という。王族は、生まれてすぐに、運命の番が現れたら渡すようにと、これを特注するんだ。結婚指輪のようなものだが――もっと深い繋がり、運命を指し示す品だ。これは俺が、俺だけの運命の番に渡すべく作られた誓約の百合だ。俺の百合だよ。キルトに貰って欲しい」
「……誓約の百合」
「身につけてくれないか? そして俺と結婚して欲しい」
結婚をするという事が、僕はどういう事なのか、いまいち分からない。ただ、家族になるという意味なのだとは思う。ゼルスが僕の唯一となるという事だ。運命の番は存在しないと習ってきたが、ゼルス達の中では存在するらしい。
「本当に僕は、運命の番なの? ゼルスの家族になって良いの?」
「ああ。キルトは俺の運命だし、俺はキルトと家族になりたい」
「家族になったら、ずっと一緒?」
「そうだな」
「僕もずっと一緒にいたい」
挨拶は上手く出来なかった僕だが、ゼルスを前にすれば、素直な気持ちを話す事が出来た。ゼルスは微笑すると、誓約の百合を手に取った。
「つけても良いか?」
「うん」
僕が頷くと、ゼルスが僕の左耳に、イヤーカフスをはめた。すると国王陛下が、穏やかに笑った。
「ここに私が二人の婚約の成立を認める。結婚式の日取りは、国の行事ともなるから改めて検討しよう。まずは仲睦まじく、幸せに過ごすようにな。私と王妃のように」
こうして、僕とゼルスの関係は、国王陛下に認められ、玉座の間にいた人々にも知られる所となった。
「そのカフスをはめていれば、キルトは王家の一員となったと、皆が分かる。例えば、王家の人間しか立ち入り出来ない場所へも入る事が出来る」
ゼルスはそう語ると、改めて僕の手を握り、持ち上げた。
「見せたい景色が沢山あると話しただろう? それはこの王宮でも同じだ。そうだ、庭園へ行こう。王家の人間しか――そのカフスにこもる魔力を感知して、立ち入りを制限している、特定の人間しか立ち入る事の出来ない庭園がある。そこに咲き誇る魔法植物や自然の花も麗しいんだ。キルトに見せたい」
それを聞いて、僕は頷いた。僕も、ゼルスが好きな風景を見てみたい。ポケットからもう一つ小箱を取り出したゼルスは、己の耳にも、僕にくれた品と同じカフスを身につけた。お揃いだ。
「婚約指輪や結婚指輪は、後で用意しよう。少し、今日は歩こうか」
「うん!」
「――では、父上。失礼致します」
僕の返事を聞くと、ゼルスが国王陛下を見た。国王陛下は目尻に皺を刻んで、優しく笑っている。一見すると怖そうだが、僕には穏やかそうな性格に思えた。
「失礼致します、国王陛下」
ゼルスの言葉を、僕は真似した。国王陛下が頷いて、僕達を送り出してくれた。
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