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―― 第一章 ――
【四】目覚め
しおりを挟む「ん……」
ピクリと自分の瞼が動いたのを自覚した直後、僕は目を開けた。
見覚えの無い天井は薄い茶色で、金色の星の模様が点々と描かれていた。
なんだか怖い夢を見たような気がするなと思いながら上半身を起こし、これまでの人生では見た事の無い室内にいると改めて気づき、僕は焦った。かけられていた薄手の毛布が、僕の体から横に落ちる。
「え」
そうだった。まるで宇宙のような空間を通り抜けて、僕はその後――……どうなったんだ? 右手を持ち上げてじっと掌を見るが、特に変化は無い。異質な部屋で、目を覚ました以外は、いつもよりもぐっすりと眠った気さえする。
きょろきょろと周囲を見渡してみるが、非常に豪華なホテルの一室……と、表現するにも無理がありそうな、印象でいうと、貴族の城の一室のような場所にある寝台で僕は眠っていたらしい。壁には半身半馬の模様が描かれている。なんだかこれは見た事がある。ケンタウロスだったかな? ミノタウロスだっけ? 残念ながら僕にはあまり神話知識は無い。
音もなく扉が開いたのは、その時だった。
「……っ」
入ってきたのは、僕を助けてくれたバルトという青年だった。
「目が覚めたのか」
少し低いが、流麗な声音だ。僕は必至で頷いてから、やはり夢では無かったようだと思い直す。
「あの、助けてくれて、有難うございました」
「当然の事をしたまでだ。すぐに、ヨル様を呼んでくる。ここで待っていてくれ」
バルトはそう述べると、僕からするりと視線を逸らし、踵を返した。
出ていく姿を見守っていると、少ししてバタバタと走ってくる足音が聞こえてきた。
そして今度は、勢いよく扉が開いた。
「目が覚めたって聞いたけど――あ! 良かった!」
入ってきたのは、僕の手を引いた少年だった。その後ろを、ゆっくりと歩いてバルトもまた戻ってきた。
「改めまして、僕はヨル=ソラノと言うんだよ。ソラノの一族の長老なんだ」
「ソラノ……?」
「君は、カナタ=ソラノくんでしょう? 会いたかったよ、我が孫!」
「は?」
何処からどう見ても僕より幼い少年に言われて、困惑するしかない。
「えっと……ヨル、様?」
「何?」
「ヨル様は、おいくつですか?」
「三百二十三歳だよ。ああ、この姿? 小さい方が星魔力を使う時に燃費が良いから、普段は子供の姿なんだ」
「へ、へぇ……」
ファンタジックすぎて、ちょっとついていけない。星魔力とは何だ?
まじまじと見れば、二人の服装も相変わらず、僕が過去には見た事が無い部類だ。
バルトは西洋のお貴族様が着ていそうな服装だし、ヨル様は薄い黄緑色の布じみた外套姿だ。いいや、大きなフードがついているから、これはローブなのかもしれない。そう考えた所で、僕は追いかけてきた奴らの事を思い出した。
「さっき追いかけてきた不審者は、何だったんですか?」
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