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……二年目……
【23】門限(★)
しおりを挟む翌――土曜日。
俺は朝早くに、二十四時間営業のスーパーへと向かった。学生寮の下に、高級スーパーが入っているのだが、久しぶりに手料理が食べたいと遠園寺に頼まれていたからである。俺は、普段はあまり立ち寄らない鮮魚コーナーでイカを見た。
「美味しいイカに食べ慣れているだろうし……俺ごときのイカフライじゃなぁ……ううーん。いいや、俺ならば、肉ならばなんでも嬉しいし、たまにはイカを使ってみるか」
ブツブツと呟きながら、俺はイカを購入した。イカは最悪冷凍庫行きとし、他の食材も見て回った。そうして買い物を終えて、十時手前に遠園寺の部屋へと向かった。
「入れよ」
出てきた遠園寺は、ニヤリと笑った。俺は最近、このニヤリと笑う姿も嫌いじゃないと思うようになってきた。先に冷蔵庫や冷凍庫に食材を入れてから、俺は久しぶりに予想問題を遠園寺に渡した。遠園寺は俺に珈琲を淹れてくれた。
こうしてその後、俺達は問題に取り組んだ。以前だったら圧倒的に俺の方が解き終わるのが早かったのだが……なんと今回、遠園寺も同じくらいに解き終わった。なので紙をチェンジして採点すると、全問正解だった。それは俺もだったのだが――本当に、遠園寺は夏休みに勉強に明け暮れたのかもしれない。出来る奴っていうのは、そうやって、やるようになるんだよな……と、俺は思い知らされた気がした。俺も気合いを入れなければならないだろう。別に勝ちたいと思っているわけではないが、互いに高めあえる関係というのは素敵だと思う。決して俺が負けず嫌いなだけではないだろう。うん、絶対違う。負けず嫌いなだけじゃないはずだ!
「所で、郁斗」
「なんだ?」
「昼食作り、どうする? これまではいつも用意してもらっていたが、俺様が同じ速度で解ける以上、なんなら手伝うか分担するか?」
「あ、ああ、そうだな……その……イカフライの材料と、八宝菜の材料があって、イカはどちらに使っても良いようにと買ってきたんだが、どちらが食べたい?」
「両方食いてぇ」
「よし、じゃあ分担しよう。俺は揚げ物をするから、お前はその間に野菜を切ってくれ」
「任せておけ」
こうして俺達は揃ってキッチンへと向かった。なるほど。二人で料理するのならば、多少舌が肥えていたとしても、遠園寺も文句は言わないだろう……しかし、本当にイカが好きなんだなぁ。と、思いながら、俺は揚げ物をした。その後、遠園寺から野菜を受け取り、八宝菜も作った。そんな俺を、ずっと、遠園寺が見ている。だから、首を傾げた。
「どうかしたのか?」
「いや、その……俺もシェフに料理を習おうと思ってな」
「それは楽しみだな」
「……というのは、その、まぁ、思っていなくはないが……郁斗がいるって思ってだな」
「へ?」
「お前がきちんとそばにいるのが嬉しい」
「なんだそれは?」
「好きだという事だな」
「……っ、俺も好きだぞ?」
「本気で嬉しい」
その後、完成したイカフライと八宝菜をおかずに、俺達は昼食を取った。勉強も落ち着いたので、食後、どちらともなく顔を見合わせた。
「寮の部屋の中は、風紀でも管轄外なんだろ? 暗黙の了解で」
「……ま、まぁな……」
「俺様は先にシャワーを浴びてくる」
「……そうか」
立ち上がった遠園寺を見たら、俺は一気に緊張してしまった。既に皿洗いも済んでいるしやる事が無い。逆に……これからヤるのかもしれないと考えて、俺は思わず両腕で体を抱いた。またしても想定外だったため、俺は替えの下着とかは何も持ってきていない。服は絶対に汚してはならないだろう。制服は替えがあるが……それも、自分の部屋に、だ。
遠園寺が出てきてから、俺は自然と立ち上がった。
「俺も借りる」
「おう」
気恥ずかしいが、シャワーは浴びたい。なので擽ったい気持ちでシャワーを浴びた。出ると、バスローブが置いてあった。迷わずそちらを拝借した。未開封の下着も二つ置いてあったので、これで汚れても問題が消えたと判断した。
「悪いな、出してもらって」
「気が利くだろ?」
「ああ。準備が良すぎるほどだ」
「……一回、郁斗のバスローブ姿を見たいと思ってたってのもあるが、本当にただの好意だからな? 決して脱がせやすいようにっていう配慮だけじゃないぞ」
立っていた俺の正面に、遠園寺もまた立つ。そしてギュッと俺を抱きしめた。そのまま遠園寺の唇が近づいてきたので、俺は目を閉じる。その場で一度キスをしてから、俺達は寝室へと移動した。
着たばかりなのだが、すぐに脱がされた俺は、遠園寺を見上げる。俺を押し倒している遠園寺は、自分の服を荒々しく脱ぎながら、ギラギラした瞳をしていた。
「久しぶりだな」
「そうだな……」
「修学旅行の夜は襲いかけたが、あんまりにも郁斗が爆睡していてその気が削がれた」
「そうだったのか? さすがにいくら旅行中であっても、学内行事の最中は何もできなかったぞ?」
「……お前が寝たのを良い事に、各班様々だったみてぇだがな」
「人を邪魔者のように言わないでくれ」
確かに風紀は何かと邪険にされがちとはいえ、非常に心外である。
「ん」
遠園寺が俺の首筋に唇を落とした。それからペロリと舌で俺の肌を舐めた。右手では、俺の乳首を摘んでいる。
「ぁ……」
その時、左手で、俺の息子を遠園寺が撫でた。久しぶりに与えられる感覚に、俺の背筋をゾクゾクとしたものが走る。それから遠園寺が、手を輪にして、俺のモノを扱き始めた。
「っ、あ……」
果てそうになった時、手を離された。恨めしく思って遠園寺を軽く睨むと、喉で笑われた。遠園寺はローションを指に垂らすと、すぐに俺の後孔へと指を挿入した。本当に久しぶりだったが、俺の体の奥が、夏に覚えた快楽を求めるように疼いた気がした。
「ン……ッ……ぁ……ァぁ」
「またきつくなったな」
「ん、あ……ああ、っ、ッ」
「じっくり慣らしてやりたいが、俺様も余裕が無ぇ」
「大丈夫だ。だから、早く……っ、あ、ああ!」
「郁斗に求められると、本当に抑制が効かなくなる」
「ン、あ、ああ! ア! あ、うあ、あ、ああ!」
激しく指を動かされ、かき混ぜるようにされて、思わず俺は声を上げた。
遠園寺が俺の中にブツを挿入してきたのは、それからすぐの事である。
「ん――っ、あ、あ、あ、ア! あア、ん、っ、く、うあ、あ」
「好きだ、郁斗」
「俺も、あ、あア――!! や、あ、ッ、ン――!!」
「きちんと言ってくれ」
「そんな余裕無……ん、ァ……あ、ン――! や、ああ!」
「聞きてぇんだよ」
「好きだ、だから、あ……あ、ああ! 待ってくれ、激し、っ……うああ……!」
俺の感じる場所ばかり、遠園寺が突き上げる。そうされると頭が真っ白に染まってしまった。一度引き抜き、遠園寺が体勢を変える。そして俺を後ろから抱きかかえるようにして、下から突き上げ始めた。
「あ、ああ――!! や、やめろ、あ、深い……うあ、あ!」
そうされると、最奥まで貫かれる形となり、俺は悶えた。全身が熱い。深々と突き上げる形で動かれると、俺は快楽から涙が出てきた。必死で呼吸をしながら、俺は嬌声を上げる。
「あ……ああ……ぁ……ァ、ぁ」
「っ、足りねぇ」
「も、もう……ぁ……あ、ああ! 出る、うああ!」
遠園寺が激しく動き始めた時、俺は放った。しかし遠園寺の動きは止まらない。そのまま再度昂められて、俺のモノはすぐに硬度を取り戻した。
こうしてその日の午後は、ずっと交わっていた。
俺は途中で意識を飛ばすように眠ってしまったらしく、危うく門限を破る所だった。門限は一応寮内にいれば自室にいなくとも見逃されるのだが、俺は過去には風紀の仕事が理由でしか破った事は無かったので、焦ったものである。たまに風紀委員の臨時会議は寮の中でも行われるのだ。
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