平穏な日常の崩壊。

猫宮乾

文字の大きさ
上 下
23 / 27
……二年目……

【23】門限(★)

しおりを挟む


 翌――土曜日。
 俺は朝早くに、二十四時間営業のスーパーへと向かった。学生寮の下に、高級スーパーが入っているのだが、久しぶりに手料理が食べたいと遠園寺に頼まれていたからである。俺は、普段はあまり立ち寄らない鮮魚コーナーでイカを見た。

「美味しいイカに食べ慣れているだろうし……俺ごときのイカフライじゃなぁ……ううーん。いいや、俺ならば、肉ならばなんでも嬉しいし、たまにはイカを使ってみるか」

 ブツブツと呟きながら、俺はイカを購入した。イカは最悪冷凍庫行きとし、他の食材も見て回った。そうして買い物を終えて、十時手前に遠園寺の部屋へと向かった。

「入れよ」

 出てきた遠園寺は、ニヤリと笑った。俺は最近、このニヤリと笑う姿も嫌いじゃないと思うようになってきた。先に冷蔵庫や冷凍庫に食材を入れてから、俺は久しぶりに予想問題を遠園寺に渡した。遠園寺は俺に珈琲を淹れてくれた。

 こうしてその後、俺達は問題に取り組んだ。以前だったら圧倒的に俺の方が解き終わるのが早かったのだが……なんと今回、遠園寺も同じくらいに解き終わった。なので紙をチェンジして採点すると、全問正解だった。それは俺もだったのだが――本当に、遠園寺は夏休みに勉強に明け暮れたのかもしれない。出来る奴っていうのは、そうやって、やるようになるんだよな……と、俺は思い知らされた気がした。俺も気合いを入れなければならないだろう。別に勝ちたいと思っているわけではないが、互いに高めあえる関係というのは素敵だと思う。決して俺が負けず嫌いなだけではないだろう。うん、絶対違う。負けず嫌いなだけじゃないはずだ!

「所で、郁斗」
「なんだ?」
「昼食作り、どうする? これまではいつも用意してもらっていたが、俺様が同じ速度で解ける以上、なんなら手伝うか分担するか?」
「あ、ああ、そうだな……その……イカフライの材料と、八宝菜の材料があって、イカはどちらに使っても良いようにと買ってきたんだが、どちらが食べたい?」
「両方食いてぇ」
「よし、じゃあ分担しよう。俺は揚げ物をするから、お前はその間に野菜を切ってくれ」
「任せておけ」

 こうして俺達は揃ってキッチンへと向かった。なるほど。二人で料理するのならば、多少舌が肥えていたとしても、遠園寺も文句は言わないだろう……しかし、本当にイカが好きなんだなぁ。と、思いながら、俺は揚げ物をした。その後、遠園寺から野菜を受け取り、八宝菜も作った。そんな俺を、ずっと、遠園寺が見ている。だから、首を傾げた。

「どうかしたのか?」
「いや、その……俺もシェフに料理を習おうと思ってな」
「それは楽しみだな」
「……というのは、その、まぁ、思っていなくはないが……郁斗がいるって思ってだな」
「へ?」
「お前がきちんとそばにいるのが嬉しい」
「なんだそれは?」
「好きだという事だな」
「……っ、俺も好きだぞ?」
「本気で嬉しい」

 その後、完成したイカフライと八宝菜をおかずに、俺達は昼食を取った。勉強も落ち着いたので、食後、どちらともなく顔を見合わせた。

「寮の部屋の中は、風紀でも管轄外なんだろ? 暗黙の了解で」
「……ま、まぁな……」
「俺様は先にシャワーを浴びてくる」
「……そうか」

 立ち上がった遠園寺を見たら、俺は一気に緊張してしまった。既に皿洗いも済んでいるしやる事が無い。逆に……これからヤるのかもしれないと考えて、俺は思わず両腕で体を抱いた。またしても想定外だったため、俺は替えの下着とかは何も持ってきていない。服は絶対に汚してはならないだろう。制服は替えがあるが……それも、自分の部屋に、だ。

 遠園寺が出てきてから、俺は自然と立ち上がった。

「俺も借りる」
「おう」

 気恥ずかしいが、シャワーは浴びたい。なので擽ったい気持ちでシャワーを浴びた。出ると、バスローブが置いてあった。迷わずそちらを拝借した。未開封の下着も二つ置いてあったので、これで汚れても問題が消えたと判断した。

「悪いな、出してもらって」
「気が利くだろ?」
「ああ。準備が良すぎるほどだ」
「……一回、郁斗のバスローブ姿を見たいと思ってたってのもあるが、本当にただの好意だからな? 決して脱がせやすいようにっていう配慮だけじゃないぞ」

 立っていた俺の正面に、遠園寺もまた立つ。そしてギュッと俺を抱きしめた。そのまま遠園寺の唇が近づいてきたので、俺は目を閉じる。その場で一度キスをしてから、俺達は寝室へと移動した。

 着たばかりなのだが、すぐに脱がされた俺は、遠園寺を見上げる。俺を押し倒している遠園寺は、自分の服を荒々しく脱ぎながら、ギラギラした瞳をしていた。

「久しぶりだな」
「そうだな……」
「修学旅行の夜は襲いかけたが、あんまりにも郁斗が爆睡していてその気が削がれた」
「そうだったのか? さすがにいくら旅行中であっても、学内行事の最中は何もできなかったぞ?」
「……お前が寝たのを良い事に、各班様々だったみてぇだがな」
「人を邪魔者のように言わないでくれ」

 確かに風紀は何かと邪険にされがちとはいえ、非常に心外である。

「ん」

 遠園寺が俺の首筋に唇を落とした。それからペロリと舌で俺の肌を舐めた。右手では、俺の乳首を摘んでいる。

「ぁ……」

 その時、左手で、俺の息子を遠園寺が撫でた。久しぶりに与えられる感覚に、俺の背筋をゾクゾクとしたものが走る。それから遠園寺が、手を輪にして、俺のモノを扱き始めた。

「っ、あ……」

 果てそうになった時、手を離された。恨めしく思って遠園寺を軽く睨むと、喉で笑われた。遠園寺はローションを指に垂らすと、すぐに俺の後孔へと指を挿入した。本当に久しぶりだったが、俺の体の奥が、夏に覚えた快楽を求めるように疼いた気がした。

「ン……ッ……ぁ……ァぁ」
「またきつくなったな」
「ん、あ……ああ、っ、ッ」
「じっくり慣らしてやりたいが、俺様も余裕が無ぇ」
「大丈夫だ。だから、早く……っ、あ、ああ!」
「郁斗に求められると、本当に抑制が効かなくなる」
「ン、あ、ああ! ア! あ、うあ、あ、ああ!」

 激しく指を動かされ、かき混ぜるようにされて、思わず俺は声を上げた。
 遠園寺が俺の中にブツを挿入してきたのは、それからすぐの事である。

「ん――っ、あ、あ、あ、ア! あア、ん、っ、く、うあ、あ」
「好きだ、郁斗」
「俺も、あ、あア――!! や、あ、ッ、ン――!!」
「きちんと言ってくれ」
「そんな余裕無……ん、ァ……あ、ン――! や、ああ!」
「聞きてぇんだよ」
「好きだ、だから、あ……あ、ああ! 待ってくれ、激し、っ……うああ……!」

 俺の感じる場所ばかり、遠園寺が突き上げる。そうされると頭が真っ白に染まってしまった。一度引き抜き、遠園寺が体勢を変える。そして俺を後ろから抱きかかえるようにして、下から突き上げ始めた。

「あ、ああ――!! や、やめろ、あ、深い……うあ、あ!」

 そうされると、最奥まで貫かれる形となり、俺は悶えた。全身が熱い。深々と突き上げる形で動かれると、俺は快楽から涙が出てきた。必死で呼吸をしながら、俺は嬌声を上げる。

「あ……ああ……ぁ……ァ、ぁ」
「っ、足りねぇ」
「も、もう……ぁ……あ、ああ! 出る、うああ!」

 遠園寺が激しく動き始めた時、俺は放った。しかし遠園寺の動きは止まらない。そのまま再度昂められて、俺のモノはすぐに硬度を取り戻した。

 こうしてその日の午後は、ずっと交わっていた。
 俺は途中で意識を飛ばすように眠ってしまったらしく、危うく門限を破る所だった。門限は一応寮内にいれば自室にいなくとも見逃されるのだが、俺は過去には風紀の仕事が理由でしか破った事は無かったので、焦ったものである。たまに風紀委員の臨時会議は寮の中でも行われるのだ。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

さがしもの

猫谷 一禾
BL
策士な風紀副委員長✕意地っ張り親衛隊員 (山岡 央歌)✕(森 里葉) 〖この気持ちに気づくまで〗のスピンオフ作品です 読んでいなくても大丈夫です。 家庭の事情でお金持ちに引き取られることになった少年時代。今までの環境と異なり困惑する日々…… そんな中で出会った彼…… 切なさを目指して書きたいです。 予定ではR18要素は少ないです。

からかわれていると思ってたら本気だった?!

雨宮里玖
BL
御曹司カリスマ冷静沈着クール美形高校生×貧乏で平凡な高校生 《あらすじ》 ヒカルに告白をされ、まさか俺なんかを好きになるはずないだろと疑いながらも付き合うことにした。 ある日、「あいつ間に受けてやんの」「身の程知らずだな」とヒカルが友人と話しているところを聞いてしまい、やっぱりからかわれていただけだったと知り、ショックを受ける弦。騙された怒りをヒカルにぶつけて、ヒカルに別れを告げる——。 葛葉ヒカル(18)高校三年生。財閥次男。完璧。カリスマ。 弦(18)高校三年生。父子家庭。貧乏。 葛葉一真(20)財閥長男。爽やかイケメン。

【完結】健康な身体に成り代わったので異世界を満喫します。

白(しろ)
BL
神様曰く、これはお節介らしい。 僕の身体は運が悪くとても脆く出来ていた。心臓の部分が。だからそろそろダメかもな、なんて思っていたある日の夢で僕は健康な身体を手に入れていた。 けれどそれは僕の身体じゃなくて、まるで天使のように綺麗な顔をした人の身体だった。 どうせ夢だ、すぐに覚めると思っていたのに夢は覚めない。それどころか感じる全てがリアルで、もしかしてこれは現実なのかもしれないと有り得ない考えに及んだとき、頭に鈴の音が響いた。 「お節介を焼くことにした。なに心配することはない。ただ、成り代わるだけさ。お前が欲しくて堪らなかった身体に」 神様らしき人の差配で、僕は僕じゃない人物として生きることになった。 これは健康な身体を手に入れた僕が、好きなように生きていくお話。 本編は三人称です。 R−18に該当するページには※を付けます。 毎日20時更新 登場人物 ラファエル・ローデン 金髪青眼の美青年。無邪気であどけなくもあるが無鉄砲で好奇心旺盛。 ある日人が変わったように活発になったことで親しい人たちを戸惑わせた。今では受け入れられている。 首筋で脈を取るのがクセ。 アルフレッド 茶髪に赤目の迫力ある男前苦労人。ラファエルの友人であり相棒。 剣の腕が立ち騎士団への入団を強く望まれていたが縛り付けられるのを嫌う性格な為断った。 神様 ガラが悪い大男。  

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...