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―― 第六章 ――
【七十九】様々な準備
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その後数日をかけて、僕達は備蓄の配布を王宮に代行してもらう打合せをしたり、何度か披露宴についての話し合いをして過ごした。そうして二月の上旬が終わる頃、馬車で王領へと帰還した。
「わぁ……」
コーラル城では、四階から伸びる塔の一室の改装工事が行われていた。話は僕も聞いていたのだけれど、クライヴが新しい部屋を作るそうだった。大勢の職人達が行きかう姿に目を丸くしていると、クライヴが僕の肩を抱いた。
「完成が間近だそうだ。楽しみだな」
「どんなお部屋にするの?」
「秘密だ。完成したら、真っ先にルイスを連れていく」
悪戯っぽい目をしたクライヴの楽しそうな声音に、僕は頷いて返した。
クライヴが楽しそうだと、僕もそれだけで明るい気持ちになる。
こうして帰還後からは、本格的に披露宴の準備が始まった。まずは招待客の選定があり、クライヴと共にリストを作成した。王都では主に貴族、領地では関係のある地元の名士をはじめとした人々を招く予定だ。招待状の作成は、主に僕の仕事となった。
そのようにして、二月の中旬が始まった。
――庭には、最近、冬から春にかけて咲く木の花の蕾が見える。
僕は本日は、執務室の窓からそれを眺め、春の気配に心を躍らせてから、招待状の作成に臨んだ。一人一人に向けて文章を綴り、蝋印で封をしていく。時々バーナードが、珈琲を淹れてくれた。クライヴは、今日は城を不在にしていた間に溜まった執務を、自分の執務室で行っている。
もうじき、クライヴの誕生日があるから、その日はコーラル城で、生誕祭を催す予定だ。僕はそれも楽しみにしている。ただ、聖夜の時と同じように、まだ贈り物が決まらない。ただ、好きな相手に渡す品を悩むというのは、思いのほか楽しい。
その日の夜は、王領での披露宴の際に振る舞う料理の、試食をした。
シェフが用意してくれた品はいずれも美味であるから、純粋に味を楽しんでしまう。
王領では、コーラル城の大広間で、立食式の披露宴をする予定だ。
「やはり六月にして正解だな」
僕がテリーヌを口に運んでいると、クライヴが微笑した。
「どうしても結婚記念日は、ルイスと二人でいたいんだ」
「クライヴ……」
嬉しくなって、僕は口元を綻ばせる。僕も同じ気持ちだ。七月の僕の誕生日と結婚記念日もまた、待ち遠しい。嘗ては、ヘルナンドとの婚姻が待ち構えていると思い、己の誕生日は憂鬱な日でしかなかったが、今年は心から、祝える気がする。それは、クライヴが共にいてくれるからだ。
「明日はまた、ルミナンス伯爵が顔を出してくれる」
続いて響いた声に、僕は首輪デザイナーである伯爵について思い出した。実は今回、披露宴での衣装を、伯爵の友人のデザイナーが担当してくれる事になっている。元々王室御用達のデザイナーでもあるそうで、明日から僕とクライヴは、服を仕立ててもらうのだが、その際に身に着ける装飾品は、ルミナンス伯爵が担当してくれると決まっている。
僕は身に着けている首輪に触れ、楽しみに翌日を待った。
「わぁ……」
コーラル城では、四階から伸びる塔の一室の改装工事が行われていた。話は僕も聞いていたのだけれど、クライヴが新しい部屋を作るそうだった。大勢の職人達が行きかう姿に目を丸くしていると、クライヴが僕の肩を抱いた。
「完成が間近だそうだ。楽しみだな」
「どんなお部屋にするの?」
「秘密だ。完成したら、真っ先にルイスを連れていく」
悪戯っぽい目をしたクライヴの楽しそうな声音に、僕は頷いて返した。
クライヴが楽しそうだと、僕もそれだけで明るい気持ちになる。
こうして帰還後からは、本格的に披露宴の準備が始まった。まずは招待客の選定があり、クライヴと共にリストを作成した。王都では主に貴族、領地では関係のある地元の名士をはじめとした人々を招く予定だ。招待状の作成は、主に僕の仕事となった。
そのようにして、二月の中旬が始まった。
――庭には、最近、冬から春にかけて咲く木の花の蕾が見える。
僕は本日は、執務室の窓からそれを眺め、春の気配に心を躍らせてから、招待状の作成に臨んだ。一人一人に向けて文章を綴り、蝋印で封をしていく。時々バーナードが、珈琲を淹れてくれた。クライヴは、今日は城を不在にしていた間に溜まった執務を、自分の執務室で行っている。
もうじき、クライヴの誕生日があるから、その日はコーラル城で、生誕祭を催す予定だ。僕はそれも楽しみにしている。ただ、聖夜の時と同じように、まだ贈り物が決まらない。ただ、好きな相手に渡す品を悩むというのは、思いのほか楽しい。
その日の夜は、王領での披露宴の際に振る舞う料理の、試食をした。
シェフが用意してくれた品はいずれも美味であるから、純粋に味を楽しんでしまう。
王領では、コーラル城の大広間で、立食式の披露宴をする予定だ。
「やはり六月にして正解だな」
僕がテリーヌを口に運んでいると、クライヴが微笑した。
「どうしても結婚記念日は、ルイスと二人でいたいんだ」
「クライヴ……」
嬉しくなって、僕は口元を綻ばせる。僕も同じ気持ちだ。七月の僕の誕生日と結婚記念日もまた、待ち遠しい。嘗ては、ヘルナンドとの婚姻が待ち構えていると思い、己の誕生日は憂鬱な日でしかなかったが、今年は心から、祝える気がする。それは、クライヴが共にいてくれるからだ。
「明日はまた、ルミナンス伯爵が顔を出してくれる」
続いて響いた声に、僕は首輪デザイナーである伯爵について思い出した。実は今回、披露宴での衣装を、伯爵の友人のデザイナーが担当してくれる事になっている。元々王室御用達のデザイナーでもあるそうで、明日から僕とクライヴは、服を仕立ててもらうのだが、その際に身に着ける装飾品は、ルミナンス伯爵が担当してくれると決まっている。
僕は身に着けている首輪に触れ、楽しみに翌日を待った。
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