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―― 第六章 ――
【七十七】二月の王都
しおりを挟む王領センベルトブルクで紫月病が消失し、備蓄の配布の相談などもあったため――また、兄上からの手紙についても考慮し、僕とクライヴは一度王都へ出向く事になった。
「話し合いは、王宮で。これは譲れない」
クライヴが繰り返しそう告げたから、ベルンハイト侯爵家の家族とも、王宮で話をする事になった。
「ルイスの家族は、俺だ。それを忘れないでほしい」
もうすぐ王都に到着する馬車の中で、僕は肩を抱き寄せられている。そちらに頭を預け、僕は両頬を持ち上げた。
「うん。僕もクライヴを家族だと思ってる」
今は二月の頭だ。もう少しするとクライヴの誕生日があるから、その前には王領に戻るという日程で、今回の旅は検討している。
王都の街中に馬車が進むと、王領よりはずっと少ないが、雪がちらほらと舞っていた。
僕達が王宮に到着したのは昼下がりの事で、その足で僕達は謁見に向かった。
「よくぞ参った」
すると笑顔の国王陛下が玉座にいて、傍らの椅子ではゆったりと扇を動かしている王妃様が微笑していた。
「王領の紫月病への対策は万全でしたね。母として、とても誇らしい限りですの」
「父としても同じ気持ちだ。国王としては、その技量を来年からはさらに公務にも用いてほしいものだな」
「あら、陛下。来年は、王都でも領地でも、披露宴があるのですから、再来年を見た方がいいのでは?」
「王妃よ、この二人ならば、並行可能だと考えているが、どうだ?」
「あまり急かすものではありません」
国王陛下と王妃様の言葉に、僕は恐縮して頭を下げる。隣ではクライヴが小さく笑っていた。
「尽力します。披露宴は、王都でも王領においても、六月を予定しているので、それが終わり、結婚記念日が過ぎてから、来年は近隣の領地や今年病魔の対応に追われた土地への指南も含め、俺とルイスは頑張る所存ですよ」
こくこくと僕は頷いた。
「それは心強い。して、ベルンハイト侯爵家から、ジェイス卿が夕方来訪するそうだが、どういった趣旨の話なんだ? 王宮には、それこそ披露宴の話と伝達があったが」
国王陛下がその時、僅かに目を細くした。僕も同じ内容しか聞いていないが、顔を合わせることにはやはり不安がある。兄は、今、僕をどう思っているのだろう。
「どのような内容であっても、俺がルイスを守ります」
「家族として、我々も同じ気持ちだ」
クライヴの声に、国王陛下が優しい顔に変わった。王妃様も大きく頷いた。
まだまだ僕には、王族の皆様は畏れ多い存在だけれど、僕を迎え入れてくれた事は、よくわかっている。皆、とても温かな人々だ。
「一度塔へ戻ります。ジェイス卿との会談の時間に、こちらの迎賓室をお借りします」
「ああ。話し合いがうまくいく事を祈っている」
こうして僕とクライヴは、一度退出した。
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