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―― 第二章 ――
【四十三】王領への帰還(★)
しおりを挟む王領センベルトブルクに帰還し、馬車を下りてコーラル城を見上げた瞬間、僕の両肩から、一気に力が抜けた。道中で黄色い銀杏の絨毯を目にし、クライヴ殿下と眺めていた頃から少しずつそれまでまだ残存していた緊張感が抜けはじめ、地に降りた瞬間僕は思わずほっとして大きく吐息をしてしまった。
――帰ってきた。
とても強く、そう感じた。
もうこここそが、僕の家なんだなと、そう実感した瞬間でもある。
「ルイス?」
僕の背に手を触れて、クライヴ殿下が僕を見た。歩みを止めていた事に気づき、慌てて僕は足の動きを再開させる。ずらりと並んで出迎えてくれた使用人達は皆笑顔だ。その一人一人の表情にすら、僕は安堵してしまった。執事のバーナードは笑っていたわけではないが、それはいつもの事でもあるし、逆に彼に関してはいつも通りの無表情に安心した。バーナードに荷物を手渡したクライヴ殿下は、その後僕を見て、両頬を持ち上げる。
「少し休もう。食事はそれからだ」
「はい」
「今宵はシェフも張り切ってくれているようだしな。それまで俺達は、旅疲れを癒すとしようか」
クライヴ殿下の声に頷き、僕達は一度二人の寝室へと向かってから、それぞれ別の浴室にて湯浴みをした。馬車の旅の疲れが溶け出していくようで、僕は掌でお湯を掬いながら、何度も何度も『帰ってきたんだ』と内心で考える。僕は家――コーラル城が、このように自分の大切な居場所になっていた事に、気づいていなかった。いつの間にか、僕の中で、この城こそが安心できる場所になっていた。それを得られた僕は、本当に幸せだ。
入浴後寝室へと戻ると、既にクライヴ殿下の姿があった。
クライヴ殿下は僕を見ると立ち上がり、両腕でぎゅっと僕を抱きすくめた。
「ルイス、《キス》」
「んン……」
響いてきた心地の良い《命令》の声に、僕は多分蕩けた顔をしたと思う。夢中でクライヴ殿下の唇に、背伸びをしてキスをしていると、腰を抱き寄せられた。そしていつの間にか主導権を奪われ、より深く口づけされ、舌を絡めとられていた。
「《言ってくれ》、俺が好きか?」
「好き、好きです。大好きです」
「俺もだ、ルイス。愛している」
そのまま僕達は、寝台へとなだれ込んだ。僕を押し倒し、クライヴ殿下が僕の服を乱していく。されるがままになっていた僕は、すぐに一糸まとわぬ姿になった。
「ぁ……」
僕の鎖骨の少し上に、クライヴ殿下が口づける。ツキンと疼いて、キスマークをつけられた事が分かった。
「クライヴ殿下」
「ん?」
「もっと……」
「ああ、いくらでも」
その後クライヴ殿下は、僕の全身にキスの雨を降らせた。そうしながら僕の後孔を解し、僕の体が熱を帯びて震え始めた頃に、屹立した先端をあてがった。
「んあ……ああ! ァ!」
甘い挿入の刺激に、僕は涙ぐむ。硬い殿下の陰茎が、僕を穿っている。思わずクライヴ殿下に抱き着いて、僕はその快楽に浸った。
「あ、あ、あ」
クライヴ殿下がゆっくりと動き始めると、僕の口からは勝手に嬌声が零れ始める。僕の腰を掴んだ殿下は、次第に抽挿を早くし、僕の感じる場所ばかりを突き上げる。
「んン――!!」
そのまま穏やかに快楽を煽られて、僕は放った。クライヴ殿下も僕の中で果てた。
その後は、一緒に寝転がり、僕は殿下の腕の中で瞳を潤ませる。幸せでならなくて、思わず隣から抱き着いた。ずっとこうして、二人でここにいたい。けれどそれを上手く言葉にできなくて、思わず《命令》されていないのに、キスをしてしまった。
「ルイス」
「はい」
「夕食をとったら、朝まで君にキスをしていたい。いいか?」
「……はい」
僕が頬を染めて頷くと、そんな僕の髪を優しく撫でながら、クライヴ殿下もまた頷いた。
このようにして、僕達は王領センベルトブルクへと帰還をした。
その日の夜は、採れたての栗を用いたケーキが出てきて、皆が僕達の帰還を改めて祝ってくれた。そして朝が来るまでの間は、僕はずっとクライヴ殿下の腕の中にいた。幸せで幸せで、いつの間にかspaceに入っていた僕が目を覚ましたのは、翌日の日が高くなってからの事である。王都への旅は、このようにして幕を下ろした。
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