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―― 第一章 ――
【二十】初めてのスペース(★)
しおりを挟む入浴を終えてから、僕達は寝台の上へと戻った。
寝そべるようにしているクライヴ殿下の陰茎を、僕の後孔は飲み込んでいる。僕は正面からクライヴ殿下の半分起こした体に抱き着いて、いやいやとするように首を振った。気持ち良すぎて涙が止まらない。
「ほら《お仕置きだ》。きちんと、動いてごらん?」
「あ、ああ……あ、あっ!!」
僕を深々と貫いたままで、クライヴ殿下は動いてくれない。僕の腰を片手で支え、じっと僕を見ているだけだ。その端正な唇の両端は、弧を描くように持ち上げられている。
「力が入らなくて、あ、あ……っぅ、ぁァ……ああン……んぅッ」
必死で言われた通りにしようと、僕は腰を持ち上げようとしたのだけれど、力の入らない体は重力に従い、すぐに下に戻ってしまう。そうなるとより深く抉られるように最奥を突き上げられる形になり、僕は震えるしかない。全身がびっしりと汗ばんでいる。
「じゃあ、ずっとこのままだ」
「いや……ダメ……っッ」
「《お仕置き》だからな? きちんと、《自分の好きな場所を教えてくれ》」
「あ、あ……」
クライヴ殿下は、僕に自分で動いて、気持ち良くなるようにという。でも現状が気持ち良すぎて、僕はどうしていいのか分からない。
「ひぁっ」
その時右胸を甘く噛まれて、僕はギュッと目を閉じ、ビクンと体を跳ねさせた。
「赤く尖ってる」
「言わないで下さい……っく、ン――ぁァ、ああ……あ!!」
乳頭を舐められ、乳首を吸われ、僕は震えた。
するとクライヴ殿下が体勢を変えたので、より深く貫かれた状態となった。ぐったりとその胸板に体を預けて抱き着いていると、クライヴ殿下が僕の頬の涙をぬぐった。
「ほら、動いてごらん?」
「んぅ」
そのままクライヴ殿下は動かなかった。その状態で繋がっている内に、僕の体が小刻みに震え始め、よりびっしりと汗をかいた。
「あ」
動いてくれないというのに――内側から快楽が迫りくる。浴室でも中だけで果てていた僕は、もうこの感覚を知っている。
「あ、あ、あああああ!」
耐えられなくなって、僕は腰を動かした。
「上下じゃなく、前後に動かしてみたらどうだ?」
「あ、ハ……っく、あああ!」
「上手だ。そうか、そこが好きなのか」
「う、うあ」
「《教えてくれ》」
「好き、好き、あ、ああ」
「《いい子だ》」
「あ――!!」
褒められた瞬間、無我夢中で動いていた僕の理性が不意に――プツンと途切れた。快楽と、胸に満ち溢れてくる歓喜、それしか分からなくなる。どろどろに体が蕩けた感覚がしたと思った瞬間、僕の意識はフワフワとしたものに飲み込まれた。幸福感が僕の全身を支配している。なんだろう、この感覚。僕は惹きつけられるようにクライヴ殿下の顔をうっとりと見つめながら、思わず自分から唇を重ねていた。
「んぁ……ぁァ……好き、好きです、クライヴ殿下ぁァ」
「――ルイス?」
「好き、あっぁ、好き」
「spaceに入ったのか?」
「ん、ぁァ……クライヴ殿下が好き、あ、大好き……」
僕は自分が何を口走っているのか分からない。ただただ幸せで、それ以外何も考えられない。自分から腕を回した僕は、何度も何度もクライヴ殿下にキスを繰り返す。
「自分からキスをしてくれたのも初めてだな。《いい子だ》」
「あ……」
「好きだぞ、ルイス。《もっと気持ち良くなっていいんだぞ》」
「はっ、ン……あ、あ、本当に……?」
「そうだ。俺がここにいる。だから、思う通りにしてごらん?」
「んァ……」
舌を出して呼吸をしていると、僕の舌を甘くクライヴ殿下が噛んだ。その感触にうっとりしながら、僕は力の入らない体を、ゆっくりと再び動かしてみる。すると僕の両方の腰を支えたクライヴ殿下が、穏やかに動き、ゆったりとした快楽を僕にくれた。
「もう一度、《言ってくれ》。俺が好きか?」
「好き、大好き」
「そうか。いつから? 《教えてくれ》」
「あ、あ、分からない、でも、好き」
「それは、俺の体がか?」
「違う、違っ、全部、あ、ああ……あ」
「本当に、《いい子》だな。もっともっと俺を好きになれ。これは、《命令》じゃない。俺の希望で、お願いだ」
「もう沢山、いっぱい好き……好き……ぁは」
それからの事を、僕は覚えていない。
次に目を覚ますと、僕の体は綺麗になっていて、僕はクライヴ殿下に抱きしめられて眠っていた。既に日が高いのが分かる。僕は朧気に、自分が口走った言葉の数々を思い出し、泣きそうになった。顔が熱い。そんな僕を見ると、クライヴ殿下が穏やかに両頬を持ち上げて微笑した。
「ルイス。『戻ったんだな』」
「……」
「俺が好きか? きちんと《聞きたい》」
「……はい」
こくりと僕が頷くと、クライヴ殿下が凄く嬉しそうに笑った。満面の笑みだ。
「嬉しい――が、俺は欲張りだ。まだまだ足りないな。もっともっと俺を好きになってくれ、好きにさせてみせる。愛している」
クライヴ殿下はそう言うと、僕の目を見て、悪戯っぽく笑った。それから一度長めに瞬きをしてから、窓の方を見る。
「さて、少し遅いが、ブランチにしよう」
こうして僕はまた一つ、新しい幸せを知った。
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