心の闇を綴る詩 あるいは 辛いことと、苦しみを共有する詩

如月りよん

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俺は何度目の挑戦だろうか…こっそりとアスランとリオルの侍従部屋を借りながらパウンドケーキを作っていた。

「うん、上手く焼けた!」

火加減が難しくて何度も失敗をしながら数日間で焼き上げた3本のパウンドケーキは、ブランデーの入ったもの、ナッツの入ったもの、バナナの入ったものだ。

安心しながら型ごと取り出すと、冷ますために放置する。

「アスランもリオルもありがとう…やっと焼けたよ」

形も失敗せずに、後は冷めたら切ってから味見をして持っていこう。
美味しいと言ってくれたらいいのだけれど。
セラフィリーアは汚してしまったキッチンを片付けながら、楽しそうに笑った。



「アイヴィス様、今日こそは綺麗に焼けました」

15時の時計が鳴るのを確認してから、普段ハワードが用意するワゴンを押しながら執務室に入る。
ちょうど決裁が終わったのか、アイヴィスが手にしていた玉璽を箱に戻した所だった。

「お茶にしましょう?」

こうでもしなければアイヴィスは休息しないことを知っている。
人が足りないのだろうか…不思議に思いながらセラフィリーアはティーセットの準備をしていく。

「アイヴィス様、こちらにいらしてください。パウンドケーキですが、私が作りましたがあまり甘くない筈ですから」

既に切り分けて貰っているパウンドケーキをそれぞれ一欠ずつ皿に寄せてテーブルに置く。
なかなか立ち上がらないアイヴィスの腕にそっと触れて立ち上がらせるとソファーに座らせる。
その隣にちょこんとセラフィリーアも座ってアイヴィスを見上げた。

「アイヴィス様、あーん?」

パウンドケーキを一口大にすると、そっと差し出す。
アイヴィスはそれを口にするとゆっくり咀嚼してから嚥下した。

「美味しい…ですね」

「ふふ、甘さを抑えてブランデーをいれているものです。アイヴィス様の口に合うかと思って…」

「セラはもういたたきましたか?食べていないなら一緒にいただきましょう?」

手にしていたフォークをそっと取られ、アイヴィスがパウンドケーキを切り分けると、バナナのパウンドケーキを差し出された。

「ん、ありがとうございます」

モグモグとすると紅茶を口に入れる。
優しい甘さが口のなかにひろがった。

「アイヴィス様…」

優しい甘さを感じて欲しくて、チュッとその唇にキスをする。
ふわりとブランデーの香りがした。


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