NPCのストーカーの件について

草薙翼

文字の大きさ
上 下
7 / 67

レイチェルの店

しおりを挟む
ーーー

師匠に捕まる前に起きて、身支度はきっちり整えて家を出る。
今日はレイチェルちゃんに会うんだから身だしなみは一番大切だ!
魔法陣に乗り王都までひとっ走りする。

昨日クエストのついでにレイチェルちゃんへのお土産を作ったから準備は完璧だ!
ゲームではない本物のレイチェルを想像して頬が緩む。

魔法陣を走らせている時、ずっと気になっているものがある。
怪しい影が俺の背後にぴったりくっ付いて来るんだが…
俺の影に引っ付いてるから離す事も出来ない。

レイチェルちゃんをゼロに知られるのでないかとヒヤヒヤする。
もしレイチェルちゃんになにかしたら、俺は…俺はぁっ!!

ゼロの人柄なんて知らないが、とりあえず危ない奴という認識で影を睨む。

「俺はただ酒場で酒飲むだけだからな!変な誤解するなよ!」

未成年だからお茶を飲むが、一応ゼロ?に釘を刺す。
影の手は分かってるのかピースしている。
はぁ…レイチェルちゃんに会うのがこんなに大変なんて、ゲームだと楽だったのに…

酒場だが王都グレンの酒場は年中無休で開いている。
夜は男達の溜まり場だが、昼間は客が少なくて口説くのに便利だった。
王都に到着して魔法陣から降りて酒場に向かう。

酒場は夜の雰囲気を潜めて、落ち着いた雰囲気だった。
カウンターの向こうに目当ての子がいた。

レイチェルちゃんは客がいない時、メイクや爪の手入れをしている。
しかも俺がいてもお構いなしで!…気を許してくれてるって事だよね!たまに空気のように扱われるけど…
全くこちらを見ようともせず、爪の手入れに夢中だ。

実際に会話をするのは初めてでドキドキする。

ゲームの中だとあんなに喋れたのに…
まぁ学生の時も女子と話す事なんて連絡事項だけだったからな。
…そう思うとなんか切ないぜ…

わざとらしい咳払いを一つしても、全く興味なさそうにされた。
しかし緊張している俺には全く見えていなくて軽く手を上げた。

「お、おはよう!」

「いらっしゃいませ、今日はどれにします?」

レイチェルちゃんは爪磨きを止めてマニュアル対応をしてきた。
くっ…好感度15%はあるから友達くらいになってるんじゃないの!?
しかしそのスマイル0円笑顔はとても眩しかった。

カウンター席に座り、太陽の紅茶を頼む。
…別に戦闘帰りじゃないからHP回復の飲み物を飲みにきたんじゃないが、さすがに何も頼まないのはレイチェルちゃんに悪いし…
俺はレイチェルちゃんに一生懸命可愛いリボンでラッピングしたプレゼントを渡した。

「レイチェルちゃん、これ…いつもの感謝のプレゼント」

「ありがとう」

さすがに実際は心の声は聞こえないが、売る事を考えてなけりゃいいなと思う…考えてるんだろうけど…
太陽の紅茶はアップルティーの味がした、見た目も赤くて似てる。
レイチェルちゃんはプレゼントを後ろの棚に置き素敵な笑顔で振り返った。

胸元まで伸びるフワフワの赤髪が美しい…
そして谷間が直視出来なくて赤くなり下を向く。
童貞丸出しで恥ずかしいが、幸せで頬が緩む。

「ついでに魚肉バター炒め食べてく?」

「食べる食べる!」

プレゼントを渡し、余計なものまで注文させられた気がするが…それでいいんだ。
だってこんな事じゃないとレイチェルちゃんの手料理が食べられないんだもん!
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,050pt お気に入り:4,528

墜落レッド ~戦隊レッドは魔王さまに愛でられる~

BL / 連載中 24h.ポイント:547pt お気に入り:14

異世界で魔道具にされた僕は、暗殺者に愛される

BL / 完結 24h.ポイント:397pt お気に入り:1,021

処理中です...