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いない間の話
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「二人共、大丈夫!?」
「平気だ、でもアズサが気絶してしまった」
お姫様だっこをしながら沼からリーフリード様と少年が出てきた。
ゼロが俺の鼻を手で覆っていて、自分の鼻も押さえていた。
いや、確かにちょっと沼のにおいが二人からするけど今はちょっと失礼過ぎるだろ。
それに、リーフリード様が少年を見る姿は記憶喪失で勘違いして惚れているようには見えないな。
本当に、記憶喪失なんだろうか…そのために少年はここに来たんだけど…
沼の真ん中に魚が浮いていて、リーフリード様がやったのは分かるが、ぼろ雑巾のように見えてリーフリード様の強さが圧倒的だった。
エルフの王様だから当然と言えば当然なんだけど、俺より強いとやっぱり悔しい。
…でも、俺は少年を守る事が出来なかった。
そう考えるとやっぱり俺もまだまだだよな。
「何故、アズサをここに連れてきたんだ」
「えっ…あ、それは…」
「答えろ!」
リーフリード様は少年を地面に寝かせてから俺に向かって弓を構えた。
俺の前にゼロが立って庇ってくれたが、おれはゼロの前に出た。
どういう経緯でも、俺の方が強いのに守れなかった事は事実だ。
俺は彼の口から話さないとダメだと思って「本人に聞いて下さい」と言った。
リーフリード様は当然納得出来ず、俺の事を睨んでいた。
俺は二人の問題に口出す事が出来ない、だから二人で話し合った方がいい。
「お前らの事に巻き込むなってツカサは言ってるんだよ、だからツカサに怒るなよ」
「…お前がアズサをここに呼んだのか?」
「……」
「それもだんまりか」
「とにかく二人で話し合ってくれ」
俺はそれしか言えず、リーフリード様の弓を握る手に力が込められた。
その時、リーフリード様は俺に構えていた弓を下ろした。
後ろを見ていて、後ろにはリーフリード様の服を掴んでいる少年がいた。
少年は弱々しい声で「ダメ…リーくん」と言っていた。
リーフリード様は、俺達から視線を外して少年の身体を労っていた。
少年はそれでも何度も首を振っていた。
「……ちがっ、お…俺が…」
「もういい、喋るな…帰ろう、アズサ」
俺達を無視して、少年をまたお姫様抱っこして歩いていった。
リーフリード様を怒らせてしまったから、エルフの国に入れるのか分からなかったがリーフリード様が俺達の方に振り向いた。
どうやら許したわけではなく、少年を危険にさらした疑いは晴れていないからエルフの国に連れて帰るという事らしい。
ゼロは俺を見て、にこやかな顔で「いざとなったらエルフの国を滅ぼす」とか言ってるから全力で止めた。
そんな事をしたら、とんでもない事になる…ゼロにそれが出来るから恐ろしい。
やっと森を抜けて、エルフの国に帰る事が出来た。
そして、二人は何処かに行ってしまい俺達は部屋に戻った。
体臭がとんでもない事になっていたから、先にリーフリード様達が入るんだろう。
俺達は二人が出てから風呂に入る事にした。
「ツカサ、俺にはなにがあったのか話してくれないのか?」
「うーん、リーフリード様に内緒にするなら」
ゼロに話しても別にいいかな、ゼロにも迷惑かけちゃったし…
それにきっと彼もリーフリード様に話していると思うし…
俺は知っている限りの事をゼロに全て話した。
ゼロは黙って聞いていたが、だんだん眼光が鋭くなっていく。
立ち上がろうとしたゼロの腕を掴んで座らせた。
理由?ろくな事にならないと俺の本能が察したからだ。
「ツカサを危険な目に合わせたのは、アイツだ……俺がこの手で」
「その先は知りたくない!やめろって、最後は俺の意思で森に入ったんだから!」
「………」
「そんな不満げな顔をしてもだめ!」
ゼロはムスッとしつつ、俺の腕を振り払ってまで行こうとはしていなかった。
本当に、そういうところはゼロの優しさでいいところなんだから…
少ししたら、部屋の向こうから「お風呂の準備が出来ました」という声が聞こえた。
もう二人は出たって事なんだろう、やっとさっぱりして寝れる!
返事をして、立ち上がるとゼロは座ったまま俺を見上げていた。
普段はゼロの方が身長が高いから見下ろされるのは新鮮な気分だ。
「…ツカサ」
「何だよ、風呂入らないのか?」
「………えっ?」
「さっさと行くぞ、早く寝たいんだから」
「いいのか?」
「断る元気なんてもうねぇよ、その代わり…なにか可笑しな事したらぶん殴るから」
「分かった!」
ゼロは、俺の何倍も強いし負けなしチートNPCのくせに嬉しそうに俺の後ろを歩いている。
どうせ裸とか毎日のように影に見られてるし、今更見られたところで気にするのも疲れる。
一緒に風呂に入るのは今日で最後だって言っても、ゼロは聞いているのかいないのかずっと機嫌が良かった。
身体を洗ってから大きな露天風呂で肩まで浸かって疲れが抜けていく。
「ツカサ、背中流すのに」
「いや、そこまではダメだ…絶対変な事する」
「そんな事は………」
「そこで黙るなよ!」
ゼロは少し離れたところにいて、近付く度に俺はベスト距離を保っていた。
そういえば、ゼロもなにかあったんだよな。
爆発音がしたと思ったらゼロの服が焦げ臭かった。
あの爆発音はゼロが起こしたものなのだろう。
今ここにゼロがいるから大した事にはなっていないんだろうけど、ゼロの服を焦がすほどのなにかは気になる。
服もまとめて無傷の男なのに…もしかしてスノーホワイト祭みたいな強敵が現れたのか?
「ゼロ、俺と合流する前何してたんだ?影の中から出て来たし」
「影と同化する必要があったからな」
「……えっ、どういう事?」
ゼロは自分の身に起きた事を丁寧に説明してくれた。
リーフリード様と少しでも協力していた事も驚きだけど、一番の驚きはその後だ。
拘束された状態で巨大な魔獣と戦って、避けるために自分自身が影になって、元々リーフリード様の影に忍ばせていた自分の影と繋げた。
リーフリード様が沼に入るタイミングで影は俺の影に移動した。
だからゼロは影から出てきて、俺と会う事が出来た。
魔獣を操っている糸も気になるが、とりあえず今一番気になるのは…
「ゼロって影使いだけど、魔物みたいな事が出来るんだな」
「愛の力だ」
「いや、可笑しいだろ!影を伝って移動とかチートにもほどがあるだろ!」
俺のツッコミもゼロには追いついていなくて、虚しく叫ぶ声だけが露天風呂に響き渡った。
のぼせそうだから風呂から上がろうと思って、立ち上がると背中から嫌な視線を感じた。
後ろを振り返ると、ゼロが真剣な顔で俺の背中を見ていた…主に尻を…
ゼロに思いっきり水を掛けて、風呂から出た。
「平気だ、でもアズサが気絶してしまった」
お姫様だっこをしながら沼からリーフリード様と少年が出てきた。
ゼロが俺の鼻を手で覆っていて、自分の鼻も押さえていた。
いや、確かにちょっと沼のにおいが二人からするけど今はちょっと失礼過ぎるだろ。
それに、リーフリード様が少年を見る姿は記憶喪失で勘違いして惚れているようには見えないな。
本当に、記憶喪失なんだろうか…そのために少年はここに来たんだけど…
沼の真ん中に魚が浮いていて、リーフリード様がやったのは分かるが、ぼろ雑巾のように見えてリーフリード様の強さが圧倒的だった。
エルフの王様だから当然と言えば当然なんだけど、俺より強いとやっぱり悔しい。
…でも、俺は少年を守る事が出来なかった。
そう考えるとやっぱり俺もまだまだだよな。
「何故、アズサをここに連れてきたんだ」
「えっ…あ、それは…」
「答えろ!」
リーフリード様は少年を地面に寝かせてから俺に向かって弓を構えた。
俺の前にゼロが立って庇ってくれたが、おれはゼロの前に出た。
どういう経緯でも、俺の方が強いのに守れなかった事は事実だ。
俺は彼の口から話さないとダメだと思って「本人に聞いて下さい」と言った。
リーフリード様は当然納得出来ず、俺の事を睨んでいた。
俺は二人の問題に口出す事が出来ない、だから二人で話し合った方がいい。
「お前らの事に巻き込むなってツカサは言ってるんだよ、だからツカサに怒るなよ」
「…お前がアズサをここに呼んだのか?」
「……」
「それもだんまりか」
「とにかく二人で話し合ってくれ」
俺はそれしか言えず、リーフリード様の弓を握る手に力が込められた。
その時、リーフリード様は俺に構えていた弓を下ろした。
後ろを見ていて、後ろにはリーフリード様の服を掴んでいる少年がいた。
少年は弱々しい声で「ダメ…リーくん」と言っていた。
リーフリード様は、俺達から視線を外して少年の身体を労っていた。
少年はそれでも何度も首を振っていた。
「……ちがっ、お…俺が…」
「もういい、喋るな…帰ろう、アズサ」
俺達を無視して、少年をまたお姫様抱っこして歩いていった。
リーフリード様を怒らせてしまったから、エルフの国に入れるのか分からなかったがリーフリード様が俺達の方に振り向いた。
どうやら許したわけではなく、少年を危険にさらした疑いは晴れていないからエルフの国に連れて帰るという事らしい。
ゼロは俺を見て、にこやかな顔で「いざとなったらエルフの国を滅ぼす」とか言ってるから全力で止めた。
そんな事をしたら、とんでもない事になる…ゼロにそれが出来るから恐ろしい。
やっと森を抜けて、エルフの国に帰る事が出来た。
そして、二人は何処かに行ってしまい俺達は部屋に戻った。
体臭がとんでもない事になっていたから、先にリーフリード様達が入るんだろう。
俺達は二人が出てから風呂に入る事にした。
「ツカサ、俺にはなにがあったのか話してくれないのか?」
「うーん、リーフリード様に内緒にするなら」
ゼロに話しても別にいいかな、ゼロにも迷惑かけちゃったし…
それにきっと彼もリーフリード様に話していると思うし…
俺は知っている限りの事をゼロに全て話した。
ゼロは黙って聞いていたが、だんだん眼光が鋭くなっていく。
立ち上がろうとしたゼロの腕を掴んで座らせた。
理由?ろくな事にならないと俺の本能が察したからだ。
「ツカサを危険な目に合わせたのは、アイツだ……俺がこの手で」
「その先は知りたくない!やめろって、最後は俺の意思で森に入ったんだから!」
「………」
「そんな不満げな顔をしてもだめ!」
ゼロはムスッとしつつ、俺の腕を振り払ってまで行こうとはしていなかった。
本当に、そういうところはゼロの優しさでいいところなんだから…
少ししたら、部屋の向こうから「お風呂の準備が出来ました」という声が聞こえた。
もう二人は出たって事なんだろう、やっとさっぱりして寝れる!
返事をして、立ち上がるとゼロは座ったまま俺を見上げていた。
普段はゼロの方が身長が高いから見下ろされるのは新鮮な気分だ。
「…ツカサ」
「何だよ、風呂入らないのか?」
「………えっ?」
「さっさと行くぞ、早く寝たいんだから」
「いいのか?」
「断る元気なんてもうねぇよ、その代わり…なにか可笑しな事したらぶん殴るから」
「分かった!」
ゼロは、俺の何倍も強いし負けなしチートNPCのくせに嬉しそうに俺の後ろを歩いている。
どうせ裸とか毎日のように影に見られてるし、今更見られたところで気にするのも疲れる。
一緒に風呂に入るのは今日で最後だって言っても、ゼロは聞いているのかいないのかずっと機嫌が良かった。
身体を洗ってから大きな露天風呂で肩まで浸かって疲れが抜けていく。
「ツカサ、背中流すのに」
「いや、そこまではダメだ…絶対変な事する」
「そんな事は………」
「そこで黙るなよ!」
ゼロは少し離れたところにいて、近付く度に俺はベスト距離を保っていた。
そういえば、ゼロもなにかあったんだよな。
爆発音がしたと思ったらゼロの服が焦げ臭かった。
あの爆発音はゼロが起こしたものなのだろう。
今ここにゼロがいるから大した事にはなっていないんだろうけど、ゼロの服を焦がすほどのなにかは気になる。
服もまとめて無傷の男なのに…もしかしてスノーホワイト祭みたいな強敵が現れたのか?
「ゼロ、俺と合流する前何してたんだ?影の中から出て来たし」
「影と同化する必要があったからな」
「……えっ、どういう事?」
ゼロは自分の身に起きた事を丁寧に説明してくれた。
リーフリード様と少しでも協力していた事も驚きだけど、一番の驚きはその後だ。
拘束された状態で巨大な魔獣と戦って、避けるために自分自身が影になって、元々リーフリード様の影に忍ばせていた自分の影と繋げた。
リーフリード様が沼に入るタイミングで影は俺の影に移動した。
だからゼロは影から出てきて、俺と会う事が出来た。
魔獣を操っている糸も気になるが、とりあえず今一番気になるのは…
「ゼロって影使いだけど、魔物みたいな事が出来るんだな」
「愛の力だ」
「いや、可笑しいだろ!影を伝って移動とかチートにもほどがあるだろ!」
俺のツッコミもゼロには追いついていなくて、虚しく叫ぶ声だけが露天風呂に響き渡った。
のぼせそうだから風呂から上がろうと思って、立ち上がると背中から嫌な視線を感じた。
後ろを振り返ると、ゼロが真剣な顔で俺の背中を見ていた…主に尻を…
ゼロに思いっきり水を掛けて、風呂から出た。
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