NPCのストーカーの件について

草薙翼

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五日目・後編.

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18心の何処かで勘違いしていた。
ゼロは、俺の嫌がる事はしない…と…

だから俺の意思を無視したゼロにショックを受けていた。
…我ながら身勝手な考えだ。
俺は、散々ゼロの意思なんて聞いてなかったのに…

今なら分かる、何故「頼ってほしい」と言ったのか。
ゼロもショックだったのだろう、俺が…ゼロをいらないみたいに言ってしまったから…

でもそれは違う、ゼロと対等になりたかっただけなんだ。

言わなきゃ誰にも分からない。

洞窟に戻りゼロに手当てしてもらった。
普段なら服を脱がされるだけで暴れていたがそんな元気もない。
お互い無言の空気だった。

先に口を開いたのは意外にも俺だった。

「…ゼロ、手…冷えてるのか?」

「冷たかった?悪い、ちょっと耐性シールド付けたままだとツカサを探すのが見えづらくてな」

俺のために、手が冷えるまで探してくれたのか?
手当てが終わりゼロは夕飯の支度を始める。
俺も手伝おうとするが、ゼロが悲しい顔をするから手を引っ込めた。

鍋からいい匂いがする。
やっと帰ってこれたとそれだけで安心した。
ゼロはスープを掬い器に入れる。

「はい」

「…ありがとう」

「じゃあ俺、行くから」

俺に器を渡したらゼロはさっさと洞窟から出ようとする。
またゼロがいなくなるような気がして慌ててゼロの袖を掴む。

怖かったけど、ゼロがいなくなるのはもっと怖かった。

「外、寒いから…いればいいだろ」

「いや、耐性シールド張るから大丈夫」

「お…俺がっ、寒いんだよ!」

いつもぐいぐい来るくせに、ちょっと許すと引くゼロにイラっとしてスープの器を置きボロボロになったローブを持つ。
毛布代わりにはなるだろ。
こんな恥ずかしい事、もう絶対にしないと心に誓った。

両手を広げるとゼロは目を見開いていた。
いつもツンツンしている俺がこんな事をするとは思っていなかったのだろう。
そりゃあそうだ、俺だって驚いてるんだから…

「…来いよ、い…嫌なら無理にとは…」

最後まで言う前にゼロに抱きしめられた。
せっかく持ってたローブを落としてしまった。
思ったよりゼロの肌は冷たかったからギュッてして抱きしめる。
だんだんとゼロの体温が戻ってきていた。

……なんか、事情が知らない奴が見たら変な誤解しそうだな。
これは雪山で遭難した時の温め方で変な意味は決してない!…遭難してないけど…

「そんな可愛い事されると、勘違いしちゃうよ」

「…勘違いってなんだよ」

ゼロは笑うだけで答えてはくれない。

その日は一緒に食事をして抱きしめて眠った。
最近寝てないからか、今日はぐっすり眠れそうだ。
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