ブラッティ×マギカ

草薙翼

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兄弟..

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※瑞樹視点

「本当に部屋まで付き添わなくてよろしいのですか?」

「大丈夫です、もう怠さもありませんし…玲音から迎えに行くって連絡がありましたから」

「……そうですか」

誓司先輩だってやる事があるんだろうし、俺が大丈夫と言ったのも本心だ。

初めての時より体調が良くて驚いた。
何だか俺の身体が少しずつ疲れにくくなっているような…気のせいだろうか。
体力がついたなら嬉しいが、あまりしていないのにこんなに早く体力がつくのか不思議だ。
体力ではなく、玲音や誓司先輩とけいやをしたからこうなったんなら…

櫻さんが言っていた事はこういう事だったんだな。

下着は汚れてしまったから誓司先輩が新しいのを買ってくれて、それを穿いている。
服を着せてくれたりといろいろと世話を掛けて申し訳ないと思うが「恋人同士なので当然ですよ」と言われた。
恋人なら俺も誓司先輩にいろいろしたいが、俺がする前に誓司先輩が終わらせてしまうから何も出来ない。

そうだ、今度材料を買って誓司先輩にも俺の料理を食べてもらいたい。
誓司先輩の好みを今のうちに聞いた方がいいよな。

「誓司先輩、好きな食べ物とか嫌いな食べ物とかありますか?」

「食べ物…ですか、好みはありませんね」

「俺、料理を作れるんですか…もし良かったら」

「瑞樹様の手料理なら、何でも俺の好物になります」

大袈裟だよ、と笑うけど誓司先輩の顔は真面目だった。

まだ室内に甘い雰囲気が残っていて誓司先輩は俺を後ろから抱きしめてきた。
俺はそれに応えるように後ろを振り返り唇を合わせた。

「…んっ、ふっ」

「はぁっ、んっ…ふふっ」

誓司先輩は少し笑い、俺の尻をズボン越しに触れた。
やらしい手で触られて、耳元で息が掛かる。
昨日の事を思い出して身体が素直に反応するが玲音を待たせてるし、行かなきゃならない。

小さな声で「…ダメですよ」と言うとすぐに止めてくれた。
俺の事を気遣ってくれている先輩が本気でそんな事をするわけがないとすぐに気付いた。

誓司先輩のイタズラに苦笑いする。

玄関に向かって歩き、誓司先輩の方に振り返った。
軽く手を振ると大きく振り返してくれた。

何だか恋人というより新婚気分だ、あれ?誓司先輩は夫って言ってたからそれでいいのか?
正式なものではないが、家族が増えた事が幸せなんだと感じた。
ここが生死を分かつ場所でなければもっと良かったのにと考えてしまう。

恋愛を楽しむのはほんの一時しかない。
俺には生きるという目的がある、だから常に俺の周りに死神が付いている。
いつでも首を狩れるようにチャンスを伺っている。

だからこそ、俺はこの時間を宝物にして大切にしたい。

部屋のドアを開けると壁に寄りかかってこちらに笑いかける玲音がいた。
俺はてっきり玲音だけかと思ったが意外な人物もいた。

「…飛鳥くん」

「……っ!!」

飛鳥くんと目が合うなり顔を逸らして、何処かに向かって歩いていってしまう。
部屋で玲音と何をしてたのか分からないけど、いつもと様子が違った。

傷付いた飛鳥くんの顔にどう声を掛けたらいいか分からず、とりあえず追いかけようと飛鳥くんが向かった方向に行こうとした。
しかし玲音に腕を掴まれてそれが出来なかった。

玲音は俺に「飛鳥くんはまだ子供なんだよ」と言っていた。
子供?どういう事だ?
飛鳥くんは俺の弟だけど、子供みたいだって思ったことはない。
むしろ大人っぽいと思うけど、玲音からしたら違うのかな。

部屋を出てきた誓司先輩は俺がまだいる事に少し驚いていた。

「玲音、子供ってどういう事だ?」

「瑞樹が昨日何していたか飛鳥くんに話しただけだよ」

飛鳥くんの反応とは真逆で、玲音は淡々と言っていた。
玲音はチラッと誓司先輩を見つめると誓司先輩は全く気にした様子はなくドアに寄りかかっていた。
俺と誓司先輩がしていた事って…アレ…だよな。
俺が姫王で契約とか知らない飛鳥くんからしたら衝撃だっただろう。

もしかしてそれで飛鳥くんに気持ち悪いと思われて拒絶されたのか?

それはそうか、実の兄が男同士でそういう事をしていたら普通に嫌だろうな。
飛鳥くんに嫌われてしまうのは当然だ。

この関係は隠し事が出来ない、俺から飛鳥くんに話せば良かった。
兄弟なのに、俺は……

落ち込む俺を見つめていた誓司先輩は玲音の方を向き睨んでいた。

「おい、瑞樹様は力を得るために必要な事なのはお前も分かっているだろ…ちゃんと説明したのか?」

「言ったよ、でも飛鳥くんは全く信じてなくて証拠にここに連れてきただけだよ」

飛鳥くんは俺より先に入学したけどまだこの学院に馴染んでいない。
普通に人として暮らしていたんだから当然だ。
玲音にも言わせてしまって申し訳ない事をした。

俺が誓司先輩の部屋から出てきたら言い訳なんて出来ないだろう。
それが何よりの証拠だ。
飛鳥くんを思うととてもショックだっただろう。
俺がちゃんと飛鳥くんと話し合わないといけない。

拒絶されても、俺は飛鳥くんと向き合う。

玲音は「一人にさせてあげよう」と俺に優しく肩を叩いた。
今は混乱しているかもしれないから、その方がいいかもしれない。
少ししたら飛鳥くんに自分の口から話そうと思った。

俺は制服に着替えるため、玲音と共に自分の部屋に戻った。
話し合うなら今日中がいい、時間を置いてしまうとそれこそ取り返しのつかない事になる。
放課後は紅葉さん達に会わなくてはいけないから昼休み、玲音に頼んでみた。
こういう時、校舎が離れていると不便だな。

飛鳥くんと話し合うために、待ち合わせをする事にした。

「来るか分からないけど、一応聞いてみるね」

「ありがとう、玲音」

そういえば英次は一緒じゃなかったのかと玲音に聞くと英次にも話したらしいが真実を知るのが怖いと来なかったみたいだ。
……英次は分かっていたのかもしれないな。
何も考えていないようにみえて、鋭い時があるからな。

同じクラスだし英次には教室に行ったらすぐに話そう。
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