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健全な朝
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カーテンの差し込む薄暗い光りに電気を付けて周りが明るく照らされる。
布団を捲り上半身だけ起こして大きな欠伸を一つする。
昨日は飛鳥くんと英次の部屋に泊まった。
まるで子供時代に戻ったかのように楽しい時間を過ごせた。
そして俺を挟んでリビングで川の字で寝ていた。
最初は俺がどちらのベッドを使うかで喧嘩して、俺が三人で寝ようと提案した。
次は俺に貸す寝間着がどうとかで争っていたから、俺達の部屋が近いから一回取りに戻った。
次泊まる時は全て準備しとこうと密かに誓った。
まだ英次は眠そうにゴロゴロと寝返りをうっていた。
「瑞樹は朝、コーヒーだよな」
「ありがとう」
飛鳥くんは台所に立ってインスタントコーヒーの準備をする。
俺もなにか手伝いたかったが飛鳥くんに客だからと止められた。
こぽこぽとマグカップに注がれるコーヒーを眺める。
芳ばしいにおいが鼻孔をくすぐる。
飛鳥くんが淹れてくれたコーヒーに手を伸ばして口に運ぶ。
甘いのが苦手ではないが、朝はブラックコーヒーの方が落ち着く。
「飛鳥くんは、まだ苦いの苦手?」
「…っ!?」
飛鳥くんが自分のコーヒーにミルクと砂糖を大量に入れているのを見て微笑む。
別にバカにするつもりはなかったが飛鳥くんは不機嫌になった。
本当にバカにしたつもりはないんだ、ただ…懐かしいって思っただけだ。
昔、飛鳥くんは俺の飲んでいるものをほしがったから分けた事があった。
それは中学の時から飲んでいたブラックコーヒーだった。
飛鳥くんは最初砂糖とミルクが入っているコーヒーだと思って口にしていた。
すぐに顔を青くして大量に水を飲み干していた。
飛鳥くんが苦いのが嫌いだと知らなくて、それから飛鳥くんは俺が飲むものをほしがったりしなくなった。
「飛鳥くん、ごめん…バカにしたわけじゃないんだ」
「……分かってる、カッコ悪いから嫌なんだよ」
「そんな事でカッコ悪くなったりしないよ、飛鳥くんの好物がハンバーグとエビフライでもカッコ悪いなんて思わないよ」
「ばっ!!それは瑞樹が俺に初めて作ってくれたもんだからだろ!!」
うん、知ってる…あまりにも飛鳥くんが素直だからちょっとからかってしまっただけだ。
俺が初めて料理を作ったのは小学生の時、学兄さんと母が旅行に行った時だ。
本当は学兄さんに飛鳥くんも誘われていたが飛鳥くんは頑なに行かなくて仕方なく二人で出かけた。
当然俺は一度も誘われた事がない、誘われても気まずいし空気を悪くしたくないから結局断っていただろう。
夕飯は適当に食えと三千円を渡されていたから俺は興味があった料理をする事になった。
そこで飛鳥くんになにが食べたいか聞くと「ハンバーグとエビフライ!」と大きな声で手を上げていた。
作った事はなかったが、学校で借りていた料理本を見ながら料理を作った。
今でも覚えている、飛鳥くんの幸せそうに食べる姿を…
「もしまだ好きならまた作ろうか」
「……ぉぅ」
とても小さな声だったがちゃんとはっきりと聞こえた。
英次が寝ぼけて俺に抱きついてくるまで、穏やかな時間が流れていった。
制服に着替えて三人で歩いているところに目の前に二人組の学ラン姿の生徒がいた。
ここはブラッドクラスのフロアだからブラッドクラスの生徒が居ても不思議ではない。
長身で黒い三つ編みの少年がもう一人の長身黒髪少年を抱きしめていた。
でも一人が俺に気付いたところで、それは不思議なものに変わっていった。
「あっ!みーずーきー!!!」
ブンブンと元気よく手を振るそれはいつもと変わらなかった。
三つ編みの少年を押し退けて俺のところにやってくる。
すぐに抱きついてきて身体をよろけさせながら支える。
うん、やっぱり何も変わらない玲音だ。
三つ編みの少年は俺を見るなりすぐに何処かに歩いていった。
なんだろう、気のせいかな…少し睨まれたような気がした。
「もう、しばらく瑞樹外泊禁止!寂しかったんだからね!」
「…悪かった、それで彼は?」
「……ん?あー、あの人は吸血鬼の王子」
玲音は何でもない事のようにさらりと口にした。
俺と飛鳥と英次はその言葉に固まった。
えっ、じゃあさっき玲音に抱きついていた人が学兄さんの婚約者?
今まで姿を見た人がいないと言われていたのにどうしていきなり現れたんだ?
玲音の友達だったのだろうか、親しそうな雰囲気に感じた。
でも玲音はもう別の話題に変わっていて、聞けなかった。
俺と飛鳥くんが元に戻ったから契約したのか聞いているが、飛鳥くんはただ睨んでいるだけだった。
玲音に指を絡ませて握りながら廊下を歩き出す。
すると突然玲音は足を止めて、俺の手を持ち上げた。
「玲音?どうしたんだ?いきなり」
「……瑞樹こそ、どうしたの?これ」
玲音は驚いた顔をしていて、俺も自分の手を見つめる。
傷もない普通の手で一瞬分からなかったが、すぐにあるはずのものがない事に気付いた。
昨日までその薬指に光っていた指輪がなくなっている。
可笑しい、外した覚えがないのに何処に行ったのだろうか。
それに指輪って契約そのものらしいから、そう簡単に外れるものではないのではないのか?
不安に思い玲音を見ると、難しい顔をして考えていた。
布団を捲り上半身だけ起こして大きな欠伸を一つする。
昨日は飛鳥くんと英次の部屋に泊まった。
まるで子供時代に戻ったかのように楽しい時間を過ごせた。
そして俺を挟んでリビングで川の字で寝ていた。
最初は俺がどちらのベッドを使うかで喧嘩して、俺が三人で寝ようと提案した。
次は俺に貸す寝間着がどうとかで争っていたから、俺達の部屋が近いから一回取りに戻った。
次泊まる時は全て準備しとこうと密かに誓った。
まだ英次は眠そうにゴロゴロと寝返りをうっていた。
「瑞樹は朝、コーヒーだよな」
「ありがとう」
飛鳥くんは台所に立ってインスタントコーヒーの準備をする。
俺もなにか手伝いたかったが飛鳥くんに客だからと止められた。
こぽこぽとマグカップに注がれるコーヒーを眺める。
芳ばしいにおいが鼻孔をくすぐる。
飛鳥くんが淹れてくれたコーヒーに手を伸ばして口に運ぶ。
甘いのが苦手ではないが、朝はブラックコーヒーの方が落ち着く。
「飛鳥くんは、まだ苦いの苦手?」
「…っ!?」
飛鳥くんが自分のコーヒーにミルクと砂糖を大量に入れているのを見て微笑む。
別にバカにするつもりはなかったが飛鳥くんは不機嫌になった。
本当にバカにしたつもりはないんだ、ただ…懐かしいって思っただけだ。
昔、飛鳥くんは俺の飲んでいるものをほしがったから分けた事があった。
それは中学の時から飲んでいたブラックコーヒーだった。
飛鳥くんは最初砂糖とミルクが入っているコーヒーだと思って口にしていた。
すぐに顔を青くして大量に水を飲み干していた。
飛鳥くんが苦いのが嫌いだと知らなくて、それから飛鳥くんは俺が飲むものをほしがったりしなくなった。
「飛鳥くん、ごめん…バカにしたわけじゃないんだ」
「……分かってる、カッコ悪いから嫌なんだよ」
「そんな事でカッコ悪くなったりしないよ、飛鳥くんの好物がハンバーグとエビフライでもカッコ悪いなんて思わないよ」
「ばっ!!それは瑞樹が俺に初めて作ってくれたもんだからだろ!!」
うん、知ってる…あまりにも飛鳥くんが素直だからちょっとからかってしまっただけだ。
俺が初めて料理を作ったのは小学生の時、学兄さんと母が旅行に行った時だ。
本当は学兄さんに飛鳥くんも誘われていたが飛鳥くんは頑なに行かなくて仕方なく二人で出かけた。
当然俺は一度も誘われた事がない、誘われても気まずいし空気を悪くしたくないから結局断っていただろう。
夕飯は適当に食えと三千円を渡されていたから俺は興味があった料理をする事になった。
そこで飛鳥くんになにが食べたいか聞くと「ハンバーグとエビフライ!」と大きな声で手を上げていた。
作った事はなかったが、学校で借りていた料理本を見ながら料理を作った。
今でも覚えている、飛鳥くんの幸せそうに食べる姿を…
「もしまだ好きならまた作ろうか」
「……ぉぅ」
とても小さな声だったがちゃんとはっきりと聞こえた。
英次が寝ぼけて俺に抱きついてくるまで、穏やかな時間が流れていった。
制服に着替えて三人で歩いているところに目の前に二人組の学ラン姿の生徒がいた。
ここはブラッドクラスのフロアだからブラッドクラスの生徒が居ても不思議ではない。
長身で黒い三つ編みの少年がもう一人の長身黒髪少年を抱きしめていた。
でも一人が俺に気付いたところで、それは不思議なものに変わっていった。
「あっ!みーずーきー!!!」
ブンブンと元気よく手を振るそれはいつもと変わらなかった。
三つ編みの少年を押し退けて俺のところにやってくる。
すぐに抱きついてきて身体をよろけさせながら支える。
うん、やっぱり何も変わらない玲音だ。
三つ編みの少年は俺を見るなりすぐに何処かに歩いていった。
なんだろう、気のせいかな…少し睨まれたような気がした。
「もう、しばらく瑞樹外泊禁止!寂しかったんだからね!」
「…悪かった、それで彼は?」
「……ん?あー、あの人は吸血鬼の王子」
玲音は何でもない事のようにさらりと口にした。
俺と飛鳥と英次はその言葉に固まった。
えっ、じゃあさっき玲音に抱きついていた人が学兄さんの婚約者?
今まで姿を見た人がいないと言われていたのにどうしていきなり現れたんだ?
玲音の友達だったのだろうか、親しそうな雰囲気に感じた。
でも玲音はもう別の話題に変わっていて、聞けなかった。
俺と飛鳥くんが元に戻ったから契約したのか聞いているが、飛鳥くんはただ睨んでいるだけだった。
玲音に指を絡ませて握りながら廊下を歩き出す。
すると突然玲音は足を止めて、俺の手を持ち上げた。
「玲音?どうしたんだ?いきなり」
「……瑞樹こそ、どうしたの?これ」
玲音は驚いた顔をしていて、俺も自分の手を見つめる。
傷もない普通の手で一瞬分からなかったが、すぐにあるはずのものがない事に気付いた。
昨日までその薬指に光っていた指輪がなくなっている。
可笑しい、外した覚えがないのに何処に行ったのだろうか。
それに指輪って契約そのものらしいから、そう簡単に外れるものではないのではないのか?
不安に思い玲音を見ると、難しい顔をして考えていた。
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