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心配
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※瑞樹視点
心配してくれる紅葉さんに大丈夫だと笑って、校舎前で別れた。
紅葉さんは用事があるようでまだ寮に帰らないそうだった。
寮までの道をゆっくりゆっくり歩いていたら俺を呼ぶ声が聞こえた。
考え事をしながら歩いていたから下を向いていた。
前を向くと飛鳥くんと英次がいた。
そうだ、二人と約束していたんだっけ……せっかく仲直り出来たのに忘れていた、最低だな…俺は…
俺は心配掛けないように無理に笑顔を作って二人に笑いかけた。
「ごめん遅くなった」
「なんかあったかと思って心配したんだぞ!」
「…何でもないよ、ちょっとバンドのメンバーと話し込んじゃって」
「それが何でもない奴の顔か?」
英次は普通に話していたから上手く隠せたと思っていた。
でも飛鳥くんには見破られていて、眉を寄せられた。
……さすがに家族には隠し事が出来ないようだ。
でも、どう話したらいいのか…二人が納得する言葉が思いつかない。
黙る俺に飛鳥くんは、手を伸ばした。
肩を掴まれて木に身体を押し付けられる。
真剣な眼差しを反らす事が出来ない。
これは、言わないといけない雰囲気だよな。
とはいえ、架院さんに手を払われたから落ち込んだとか意味が分からないだろう。
そもそも二人が架院さんを知らないと意味がないし…
「…その、ある人に拒絶されちゃってさ」
「ある人?」
「うん、ただそれだけだよ」
「それだけで瑞樹はそんな顔をするのか?ソイツの事好きなのか?」
「………え?」
好き?確かに初めて会った時、綺麗な人だと思っていた。
でも最初に架院さんを見た時の印象は好き、というより何処かで会ったような気がした。
懐かしいような、寂しいような…そんな不思議な感覚だった。
もし初対面だったとしたら、まだ好きになるような関係でもないし違うと言える。
でも、もし昔に会っていたとしたら分からない。
まだその正体が分からないが、それが好きという感情だったのなら納得出来る事もある。
好きだから拒絶されてフラれて傷付いたのか。
すとんと心の中の引っ掛かりがなくなり自分でも驚いた。
自分の感情なのに飛鳥くんに教えてもらうなんて、と苦笑いする。
そうだと言うのなら、彼の事を知りたいと思った…昔に会ったのなら、何処で…どうやって会ったんだろう。
「瑞樹、分からなかったのか?」
「…ははっ、まぁな…でももうフラれたんだけどな」
自分で言っていて、胸がギュッと締め付けられる。
初めての失恋はこんなに心が苦しいものなんだな。
涙は出ないが言葉に詰まってしまう。
そんな俺を何も言わずに飛鳥くんは抱き締めてくれた。
俺の事を好きでいてくれたのに、他の人の話をする俺を責めたりしない。
自分以外の暖かい体温に安心する。
俺は、最低だな…これじゃあ飛鳥くんの気持ちを利用しているだけじゃないか。
「俺がいるだろ」と飛鳥くんは優しい言葉をくれる。
…でも、俺は大勢ではなく…一人一人と恋愛しているんだ…誰一人の代わりになんてしないよ。
「飛鳥くん、今日は…その…契約の気分じゃないんだ、ごめん」
「…分かった」
誰かにフラれた気持ちのまま、飛鳥くんに抱かれるのは飛鳥くんに失礼だ。
俺は、契約してくれる人達に向き合いたい…愛してくれるお返しに俺も愛したい。
気持ちが落ち着いたら契約しようと決めて、今日は三人で話そうとなった。
寮の飛鳥くん達の部屋に初めてお邪魔した。
内装は俺達の部屋とそう変わらず、少し物が多かった。
共同スペースのリビングの筈なのに、個室のようだ。
物の半分以上が英次の私物らしく、これでも片付けたのだと威張っていた。
物を端に退かしただけで片付けたとは言わないだろう。
飛鳥くんは呆れていて、英次の私物を蹴飛ばしていた。
相変わらず片付け出来ないのかと片そうと手を伸ばす。
しかし飛鳥くんに肩を掴まれて止められた。
「何やってんだ?」
「いや、掃除を…」
「まさか俺がいない間アイツの部屋の掃除でもしてたのか?」
俺がいつものように自然と掃除を始めようとするから飛鳥くんは英次を睨んだ。
英次の家に行く時は飛鳥くんがいない時だから、初めて知ったという顔をしていた。
英次は飛鳥くんから目を逸らして、近くにあった雑誌を手に取って上下逆にして読んでいた。
それが答えのようになり、飛鳥くんが英次に近付くから喧嘩になる前に止めた。
確かに英次の部屋に行く度に汚れているからわざとかと思った時もあった。
でも俺は英次に片付けてと言われていない、自分で片付けたから英次は悪くないんだ。
誤解を解くためにそれを伝えたが、逆に不機嫌にさせてしまった。
「瑞樹はコイツに甘いんだよ」
「……そんな事は」
飛鳥くんは一つため息を吐いて苦笑いした。
そして床に転がっていた何に使うか分からない筒のカタチの何かを英次に投げつけた。
見事顔面ヒットして英次は床に倒れた。
あの筒のやつは柔らかそうだったから多分大丈夫だろう。
それよりあの筒が気になる、見た事ないけど何を入れるものなんだ?
嫌な顔をして手を叩く飛鳥くんを見つめる。
「飛鳥くん、あの筒って…」
「瑞樹は知らなくていい」
「…どうして?」
「汚いものだから」
結局あの筒が何なのか教えてくれなかった。
自分で調べるにも名前が分からないとどうしようもない、玲音なら知ってるかな?
心配してくれる紅葉さんに大丈夫だと笑って、校舎前で別れた。
紅葉さんは用事があるようでまだ寮に帰らないそうだった。
寮までの道をゆっくりゆっくり歩いていたら俺を呼ぶ声が聞こえた。
考え事をしながら歩いていたから下を向いていた。
前を向くと飛鳥くんと英次がいた。
そうだ、二人と約束していたんだっけ……せっかく仲直り出来たのに忘れていた、最低だな…俺は…
俺は心配掛けないように無理に笑顔を作って二人に笑いかけた。
「ごめん遅くなった」
「なんかあったかと思って心配したんだぞ!」
「…何でもないよ、ちょっとバンドのメンバーと話し込んじゃって」
「それが何でもない奴の顔か?」
英次は普通に話していたから上手く隠せたと思っていた。
でも飛鳥くんには見破られていて、眉を寄せられた。
……さすがに家族には隠し事が出来ないようだ。
でも、どう話したらいいのか…二人が納得する言葉が思いつかない。
黙る俺に飛鳥くんは、手を伸ばした。
肩を掴まれて木に身体を押し付けられる。
真剣な眼差しを反らす事が出来ない。
これは、言わないといけない雰囲気だよな。
とはいえ、架院さんに手を払われたから落ち込んだとか意味が分からないだろう。
そもそも二人が架院さんを知らないと意味がないし…
「…その、ある人に拒絶されちゃってさ」
「ある人?」
「うん、ただそれだけだよ」
「それだけで瑞樹はそんな顔をするのか?ソイツの事好きなのか?」
「………え?」
好き?確かに初めて会った時、綺麗な人だと思っていた。
でも最初に架院さんを見た時の印象は好き、というより何処かで会ったような気がした。
懐かしいような、寂しいような…そんな不思議な感覚だった。
もし初対面だったとしたら、まだ好きになるような関係でもないし違うと言える。
でも、もし昔に会っていたとしたら分からない。
まだその正体が分からないが、それが好きという感情だったのなら納得出来る事もある。
好きだから拒絶されてフラれて傷付いたのか。
すとんと心の中の引っ掛かりがなくなり自分でも驚いた。
自分の感情なのに飛鳥くんに教えてもらうなんて、と苦笑いする。
そうだと言うのなら、彼の事を知りたいと思った…昔に会ったのなら、何処で…どうやって会ったんだろう。
「瑞樹、分からなかったのか?」
「…ははっ、まぁな…でももうフラれたんだけどな」
自分で言っていて、胸がギュッと締め付けられる。
初めての失恋はこんなに心が苦しいものなんだな。
涙は出ないが言葉に詰まってしまう。
そんな俺を何も言わずに飛鳥くんは抱き締めてくれた。
俺の事を好きでいてくれたのに、他の人の話をする俺を責めたりしない。
自分以外の暖かい体温に安心する。
俺は、最低だな…これじゃあ飛鳥くんの気持ちを利用しているだけじゃないか。
「俺がいるだろ」と飛鳥くんは優しい言葉をくれる。
…でも、俺は大勢ではなく…一人一人と恋愛しているんだ…誰一人の代わりになんてしないよ。
「飛鳥くん、今日は…その…契約の気分じゃないんだ、ごめん」
「…分かった」
誰かにフラれた気持ちのまま、飛鳥くんに抱かれるのは飛鳥くんに失礼だ。
俺は、契約してくれる人達に向き合いたい…愛してくれるお返しに俺も愛したい。
気持ちが落ち着いたら契約しようと決めて、今日は三人で話そうとなった。
寮の飛鳥くん達の部屋に初めてお邪魔した。
内装は俺達の部屋とそう変わらず、少し物が多かった。
共同スペースのリビングの筈なのに、個室のようだ。
物の半分以上が英次の私物らしく、これでも片付けたのだと威張っていた。
物を端に退かしただけで片付けたとは言わないだろう。
飛鳥くんは呆れていて、英次の私物を蹴飛ばしていた。
相変わらず片付け出来ないのかと片そうと手を伸ばす。
しかし飛鳥くんに肩を掴まれて止められた。
「何やってんだ?」
「いや、掃除を…」
「まさか俺がいない間アイツの部屋の掃除でもしてたのか?」
俺がいつものように自然と掃除を始めようとするから飛鳥くんは英次を睨んだ。
英次の家に行く時は飛鳥くんがいない時だから、初めて知ったという顔をしていた。
英次は飛鳥くんから目を逸らして、近くにあった雑誌を手に取って上下逆にして読んでいた。
それが答えのようになり、飛鳥くんが英次に近付くから喧嘩になる前に止めた。
確かに英次の部屋に行く度に汚れているからわざとかと思った時もあった。
でも俺は英次に片付けてと言われていない、自分で片付けたから英次は悪くないんだ。
誤解を解くためにそれを伝えたが、逆に不機嫌にさせてしまった。
「瑞樹はコイツに甘いんだよ」
「……そんな事は」
飛鳥くんは一つため息を吐いて苦笑いした。
そして床に転がっていた何に使うか分からない筒のカタチの何かを英次に投げつけた。
見事顔面ヒットして英次は床に倒れた。
あの筒のやつは柔らかそうだったから多分大丈夫だろう。
それよりあの筒が気になる、見た事ないけど何を入れるものなんだ?
嫌な顔をして手を叩く飛鳥くんを見つめる。
「飛鳥くん、あの筒って…」
「瑞樹は知らなくていい」
「…どうして?」
「汚いものだから」
結局あの筒が何なのか教えてくれなかった。
自分で調べるにも名前が分からないとどうしようもない、玲音なら知ってるかな?
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