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お迎え
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※瑞樹視点
翌朝、家のチャイムが鳴り響いて「んっ…」と唸った。
眠たい目蓋をゆっくりと開けて、起き上がる。
昨日はアレだったけどきっと普通に戻ってると思ったが家中何処にもお母さんはいなかった。
もう一度チャイムが鳴り、俺は家のドアを開けた。
するとそこには黒いフードを深く被った怪しい男が三人いた。
…こんな朝からいったい誰なんだと眉を寄せる。
「お迎えに上がりました、姫様」
その言葉で、誰に言われてきたのかすぐに分かった。
この人達も言うのかと呆れながら家の前に止めてある後部座席のドアを開けて待ってくれてるから乗り込むと、先に英次も乗っていた。
英次は俺を見るなり明るく笑い手招きしていたが、すぐに顔を引き攣らせた。
俺の頬を震える手で触って、ちょっと痛かった。
そうだ、昨日母に皿をぶつけられて怪我をしたんだと思い出した。
もう血は固まって痛くないが、英次は心配そうだ。
「瑞樹…これ、昨日はなかったよな」
「ちょっと転んで…」
「そんなベタな嘘つくなよ!」
「…もう痛くないから大丈夫だって」
俺が必死にそう言うと、英次はそれ以上何も言わず昨日の事が嘘のような英次の態度に元に戻って良かったとホッとする。
車が走り出し、英次はやっぱり気になるのか心配そうに見ていた。
俺より英次が心配だ、昨日の傷はもう痛くないとはいえ叫んでいたのが耳に残っている。
いつも無理をするところがあるから不安だ。
「…英次、もう平気か?」
「男がずっとうじうじしてたらかっこ悪いだろ?瑞樹も来るなら断る理由はない!」
英次はなにか吹っ切れたような顔をしていた。
…俺も、もう入る事に決めたんだから吹っ切れよう。
学兄さんにずっと怯えたままだとかっこ悪いよな。
昔のトラウマを克服しなきゃ、前を向いて歩けない。
クロス学院がどんなところか分からない、けど新しい生活を楽しみにしなきゃな。
窓を見つめると、次々と知らない景色に変わる。
「英次のところはいきなりクロス学院に行くって言ってなんか言わなかった?」
お母さんがああなったのは俺の家だけなのかと気になった。
……なんでお母さんはあんなに怯えていたんだ?学兄さんと飛鳥くんも同じ学院に行ったのに…
尋常じゃない、なにかに脅されているような怯え方だった。
いったい何に?まともに話せなかったから分からない。
英次を見ると昨日の事を思い出そうとしているのか、考える仕草をしていた。
すると英次は、思い出したのか不思議そうに首の後ろを掻いた。
「なんか家に帰ったら母ちゃんが俺のところに慌てて来てさ、クロス学院の事知ってんの!それでなんかスムーズに話が進んでさ…俺ちょっと拍子抜けした」
俺のとは違っていた、いや…もしかしたら同じだったのかもしれない。
お母さんもクロス学院の事を知ってたのか?…でもあんな状態になるのは可笑しい…普通の教え方ではなかったのか?
英次は俺の家はどうだったか聞いてきたから「俺のところも同じ」と言った。
…英次を不安にさせないためにも、お母さんの事は言わない方がいいだろう。
クロス学院って何処にあるのか知らない。
それに俺達はそのままクロス学院に向かっているが元の学校はいいのだろうか。
…お母さんがあの様子じゃ、手続きを終わらせたのか不安しかない。
「英次、俺達が通ってた学校はどうなったんだろうな」
「あー、瑞樹を待ってる間にフードの人達に聞いたんだけど、転校って事になってるみたいだよ」
誰が手続きしたのか、クロス学院の人?そこまで普通するだろうか。
俺達はただの生徒だというのに、謎多き学院だな。
そんなところに通って飛鳥くんや学兄さんは大丈夫なのか?
英次は「やっぱり気になる!」と突然大きな声を出して助手席に座るフードの人に救急箱の場所を聞いていた。
後部座席の後ろにあると言われて、救急箱を引っ張り出した。
そして、俺の前髪を上げて…傷口を消毒していた。
翌朝、家のチャイムが鳴り響いて「んっ…」と唸った。
眠たい目蓋をゆっくりと開けて、起き上がる。
昨日はアレだったけどきっと普通に戻ってると思ったが家中何処にもお母さんはいなかった。
もう一度チャイムが鳴り、俺は家のドアを開けた。
するとそこには黒いフードを深く被った怪しい男が三人いた。
…こんな朝からいったい誰なんだと眉を寄せる。
「お迎えに上がりました、姫様」
その言葉で、誰に言われてきたのかすぐに分かった。
この人達も言うのかと呆れながら家の前に止めてある後部座席のドアを開けて待ってくれてるから乗り込むと、先に英次も乗っていた。
英次は俺を見るなり明るく笑い手招きしていたが、すぐに顔を引き攣らせた。
俺の頬を震える手で触って、ちょっと痛かった。
そうだ、昨日母に皿をぶつけられて怪我をしたんだと思い出した。
もう血は固まって痛くないが、英次は心配そうだ。
「瑞樹…これ、昨日はなかったよな」
「ちょっと転んで…」
「そんなベタな嘘つくなよ!」
「…もう痛くないから大丈夫だって」
俺が必死にそう言うと、英次はそれ以上何も言わず昨日の事が嘘のような英次の態度に元に戻って良かったとホッとする。
車が走り出し、英次はやっぱり気になるのか心配そうに見ていた。
俺より英次が心配だ、昨日の傷はもう痛くないとはいえ叫んでいたのが耳に残っている。
いつも無理をするところがあるから不安だ。
「…英次、もう平気か?」
「男がずっとうじうじしてたらかっこ悪いだろ?瑞樹も来るなら断る理由はない!」
英次はなにか吹っ切れたような顔をしていた。
…俺も、もう入る事に決めたんだから吹っ切れよう。
学兄さんにずっと怯えたままだとかっこ悪いよな。
昔のトラウマを克服しなきゃ、前を向いて歩けない。
クロス学院がどんなところか分からない、けど新しい生活を楽しみにしなきゃな。
窓を見つめると、次々と知らない景色に変わる。
「英次のところはいきなりクロス学院に行くって言ってなんか言わなかった?」
お母さんがああなったのは俺の家だけなのかと気になった。
……なんでお母さんはあんなに怯えていたんだ?学兄さんと飛鳥くんも同じ学院に行ったのに…
尋常じゃない、なにかに脅されているような怯え方だった。
いったい何に?まともに話せなかったから分からない。
英次を見ると昨日の事を思い出そうとしているのか、考える仕草をしていた。
すると英次は、思い出したのか不思議そうに首の後ろを掻いた。
「なんか家に帰ったら母ちゃんが俺のところに慌てて来てさ、クロス学院の事知ってんの!それでなんかスムーズに話が進んでさ…俺ちょっと拍子抜けした」
俺のとは違っていた、いや…もしかしたら同じだったのかもしれない。
お母さんもクロス学院の事を知ってたのか?…でもあんな状態になるのは可笑しい…普通の教え方ではなかったのか?
英次は俺の家はどうだったか聞いてきたから「俺のところも同じ」と言った。
…英次を不安にさせないためにも、お母さんの事は言わない方がいいだろう。
クロス学院って何処にあるのか知らない。
それに俺達はそのままクロス学院に向かっているが元の学校はいいのだろうか。
…お母さんがあの様子じゃ、手続きを終わらせたのか不安しかない。
「英次、俺達が通ってた学校はどうなったんだろうな」
「あー、瑞樹を待ってる間にフードの人達に聞いたんだけど、転校って事になってるみたいだよ」
誰が手続きしたのか、クロス学院の人?そこまで普通するだろうか。
俺達はただの生徒だというのに、謎多き学院だな。
そんなところに通って飛鳥くんや学兄さんは大丈夫なのか?
英次は「やっぱり気になる!」と突然大きな声を出して助手席に座るフードの人に救急箱の場所を聞いていた。
後部座席の後ろにあると言われて、救急箱を引っ張り出した。
そして、俺の前髪を上げて…傷口を消毒していた。
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