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天使か悪魔か
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「…大丈夫、貴方が気に入らない奴は俺が全て消してあげますから……でももし貴方が断るなら、この男の命は保証しません」
少年の瞳が赤く光っているように感じた。
それは、人間の瞳のように思えず…ゾクッと背筋が凍った。
…そんな事、あり得ないのに…人間とかそうじゃないとか言うから怪しんでしまう。
結局やっている事は拒否を許さない脅しじゃないか。
また英次になにかあったら今度こそ英次は助からないかもしれない。
少年をまっすぐ見たら少年は俺の決意を感じでニヤッと笑った。
「じゃあ早速行きましょう!善は急げですよ!」
俺の手を掴み引っ張られて無理やり立ち上がる。
まだ何も言ってないけど本当に分かっているのか苦笑いする。
歩き出す少年は二歩くらいで足を止めた。
「…っ、まて…」というか細い声が聞こえて下を見て睨んでいるからどうしたのかと俺も目線を下に向けて驚いた。
そこには英次が必死に少年の足にしがみついて引き止めていた。
その顔は苦しさで歪んでいたが、強い瞳で少年を睨んでいた。
「英次っ!!」
「…あーあ、ちょっとお喋りしすぎましたね」
少年は冷めた声で舌打ちして、足を振り掴んでいた英次の手を振り払う。
英次はまだ完全に治っていないからか苦しそうだがまた少年にしがみつく。
英次のところに向かおうとすると腕を強く引かれ行く事が出来ない。
何度か足を振るうが英次も堪えて少年のズボンを掴む。
傷だらけになっても英次の目は諦めていなかった。
弱々しい声で「…みず、きを…返せっ」と言うと少年は見下したような笑みを浮かべていた。
「へぇ~、騎士気取りか…姫の騎士は俺だけで十分なんだよ」
少年が英次の腕を踏もうとしたから俺は少年の手を振り払い英次を庇うように覆い被さった。
寸前で足を止め少年は吐き捨てるように舌打ちした。
英次は少年から手を離して、少年も足を下ろした。
これ以上英次が傷付くのは見ていられない。
……俺が従えば英次に指一本絶対に触れさせない。
俺は確認するように強い瞳で少年を見つめた。
「…俺が従えばいいんだろ、だから英次に何もするな」
「…瑞樹」
俺は英次を見て安心させるように笑いかけた。
英次は今起きたばかりなのか状況が分からず戸惑っていた。
何故少年に連れてかれそうになったのか、俺が従うと言ったのか…
……英次を助けるためが学院に行くと決めた全てだが決めたのは俺だ、だから英次には何でもないんだと言った…だから気にするな。
でも俺がクロス学院に入るには今の学校を辞めなくてはいけない。
内緒にしてもいずれバレる事なら、今俺の口から言った方がいいな。
英次は驚くかもしれない、怒るかもしれない…でも…もう決めた事なんだ…英次は学院に行くのを諦めたのに自分勝手でごめん。
「英次、ごめんな…俺のために同じ高校に入ってくれたのに」
「……瑞樹どうしたんだよ…俺は」
「…他人事みたいだけど、お前もクロス学院に行くんだよ…人間もどきが日常生活を送れると思わないことだな」
少年が英次を睨みながらそう冷たく吐き捨てた。
え?英次も連れて行こうとしていたのか?確かに英次にクロス学院からの入学案内が届いていたから不思議ではない。
英次がいれば俺も安心出来るけど、英次はそれでいいのか?
英次はさっきの苦痛に歪む顔ではなく怒りを露わにしていた。
…どうしたんだいきなり、英次が知らない人に怒るなんて珍しい…言い方が気に入らなかったとか?
それに、さっさ変な事言ってたな……人間もどきって…
「違うっ!俺は人間だ…俺は…」
「この人の前で堂々と言えるか?嫌われたくないからと逃げてただけだろ」
「……っ」
英次は俺をチラッと見ていて言葉が詰まっていた。
何も言わず唇を噛む英次を不安そうに見つめる。
嫌われるってなんだ?よほどの事じゃないと嫌うなんてない。
英次は俺を受け入れてくれた、俺はどんな英次だって受け止める。
今まで喧嘩したりしてもそうしてきただろ。
でも英次は俺に嫌われると思って震えているのか。
少年は大人しくなった英次の胸ぐらを掴んだ。
またなにか英次にするのか身を乗り出して止めるが、少年が手を広げてそれを止めた。
「ムカつくが、お前を学院に連れてくるのも俺の仕事だからな…お前もクロス学院に来るんだよ…人じゃなくしてやる」
「いっ、嫌だ…嫌だぁぁっ!!!!」
英次を突き飛ばして、英次は頭をかかえていた。
こんな英次、初めて見てどう言葉を掛けたらいいか分からない。
少年は用事があると明日迎えを行かせると言い、何処かに歩いていった。
人間じゃないと言っていたが、彼が何者なのか聞きそびれてしまった。
あのカラスはいつの間にかいなくなっていた。
まだ泣いている英次の傍に近付いて、膝を付いて座る。
「英次、俺も行くから平気だ」
「…瑞樹も人間じゃない?」
泣きすぎて真っ赤になった目で俺を見つめていた。
俺は人間だと思っていたが、英次が人間じゃないなら俺も人間じゃないのか?
英次はクロス学院がどういうところなのか知っているようだ。
だからあんなに行きたくなかったんだ、俺の事だけではなく…英次自身も行きたくなかったんだ。
それを結果的に俺が英次を巻き込むカタチになってしまった。
俺だけが行けば英次は助かる、そう思ったら他の選択肢なんて俺にはなかった。
あの少年の話によれば英次も絶対に連れていく気だったらしい。
なら、学院に行っても俺は英次を守る…絶対に…
「瑞樹が行くなら安心だな」
そう言って英次は弱々しく笑っていた。
そういえば、飛鳥くんと学兄さんもクロス学院に入学したが人間じゃないのか?
あの二人だって俺と変わらない筈なのに全然知らなかった。
いろいろ謎だらけの学院だが、とりあえず全ては明日だと英次を家の前まで送り別れた。
両親にはどう説明したらいいのか分からない。
人間とかそうじゃないとか、そんな話誰も信じない。
俺の頭が可笑しくなったと思われても仕方ない。
あんな事があっても、まだ俺の中でも信じられない部分がある。
学校の事は普通の学校だと隠せば、少しは聞いてくれると思う。
新しい学校に転校すると言っても、受け入れられるだろうか。
両親がいくら俺の事に無関心だとしても、俺が好き勝手するのを許しているわけではない。
俺は三兄弟の中で一番の出来損ないだから、これ以上恥ずかしい俺の存在が目立つ行動をするのは嫌なのだろう。
少年の瞳が赤く光っているように感じた。
それは、人間の瞳のように思えず…ゾクッと背筋が凍った。
…そんな事、あり得ないのに…人間とかそうじゃないとか言うから怪しんでしまう。
結局やっている事は拒否を許さない脅しじゃないか。
また英次になにかあったら今度こそ英次は助からないかもしれない。
少年をまっすぐ見たら少年は俺の決意を感じでニヤッと笑った。
「じゃあ早速行きましょう!善は急げですよ!」
俺の手を掴み引っ張られて無理やり立ち上がる。
まだ何も言ってないけど本当に分かっているのか苦笑いする。
歩き出す少年は二歩くらいで足を止めた。
「…っ、まて…」というか細い声が聞こえて下を見て睨んでいるからどうしたのかと俺も目線を下に向けて驚いた。
そこには英次が必死に少年の足にしがみついて引き止めていた。
その顔は苦しさで歪んでいたが、強い瞳で少年を睨んでいた。
「英次っ!!」
「…あーあ、ちょっとお喋りしすぎましたね」
少年は冷めた声で舌打ちして、足を振り掴んでいた英次の手を振り払う。
英次はまだ完全に治っていないからか苦しそうだがまた少年にしがみつく。
英次のところに向かおうとすると腕を強く引かれ行く事が出来ない。
何度か足を振るうが英次も堪えて少年のズボンを掴む。
傷だらけになっても英次の目は諦めていなかった。
弱々しい声で「…みず、きを…返せっ」と言うと少年は見下したような笑みを浮かべていた。
「へぇ~、騎士気取りか…姫の騎士は俺だけで十分なんだよ」
少年が英次の腕を踏もうとしたから俺は少年の手を振り払い英次を庇うように覆い被さった。
寸前で足を止め少年は吐き捨てるように舌打ちした。
英次は少年から手を離して、少年も足を下ろした。
これ以上英次が傷付くのは見ていられない。
……俺が従えば英次に指一本絶対に触れさせない。
俺は確認するように強い瞳で少年を見つめた。
「…俺が従えばいいんだろ、だから英次に何もするな」
「…瑞樹」
俺は英次を見て安心させるように笑いかけた。
英次は今起きたばかりなのか状況が分からず戸惑っていた。
何故少年に連れてかれそうになったのか、俺が従うと言ったのか…
……英次を助けるためが学院に行くと決めた全てだが決めたのは俺だ、だから英次には何でもないんだと言った…だから気にするな。
でも俺がクロス学院に入るには今の学校を辞めなくてはいけない。
内緒にしてもいずれバレる事なら、今俺の口から言った方がいいな。
英次は驚くかもしれない、怒るかもしれない…でも…もう決めた事なんだ…英次は学院に行くのを諦めたのに自分勝手でごめん。
「英次、ごめんな…俺のために同じ高校に入ってくれたのに」
「……瑞樹どうしたんだよ…俺は」
「…他人事みたいだけど、お前もクロス学院に行くんだよ…人間もどきが日常生活を送れると思わないことだな」
少年が英次を睨みながらそう冷たく吐き捨てた。
え?英次も連れて行こうとしていたのか?確かに英次にクロス学院からの入学案内が届いていたから不思議ではない。
英次がいれば俺も安心出来るけど、英次はそれでいいのか?
英次はさっきの苦痛に歪む顔ではなく怒りを露わにしていた。
…どうしたんだいきなり、英次が知らない人に怒るなんて珍しい…言い方が気に入らなかったとか?
それに、さっさ変な事言ってたな……人間もどきって…
「違うっ!俺は人間だ…俺は…」
「この人の前で堂々と言えるか?嫌われたくないからと逃げてただけだろ」
「……っ」
英次は俺をチラッと見ていて言葉が詰まっていた。
何も言わず唇を噛む英次を不安そうに見つめる。
嫌われるってなんだ?よほどの事じゃないと嫌うなんてない。
英次は俺を受け入れてくれた、俺はどんな英次だって受け止める。
今まで喧嘩したりしてもそうしてきただろ。
でも英次は俺に嫌われると思って震えているのか。
少年は大人しくなった英次の胸ぐらを掴んだ。
またなにか英次にするのか身を乗り出して止めるが、少年が手を広げてそれを止めた。
「ムカつくが、お前を学院に連れてくるのも俺の仕事だからな…お前もクロス学院に来るんだよ…人じゃなくしてやる」
「いっ、嫌だ…嫌だぁぁっ!!!!」
英次を突き飛ばして、英次は頭をかかえていた。
こんな英次、初めて見てどう言葉を掛けたらいいか分からない。
少年は用事があると明日迎えを行かせると言い、何処かに歩いていった。
人間じゃないと言っていたが、彼が何者なのか聞きそびれてしまった。
あのカラスはいつの間にかいなくなっていた。
まだ泣いている英次の傍に近付いて、膝を付いて座る。
「英次、俺も行くから平気だ」
「…瑞樹も人間じゃない?」
泣きすぎて真っ赤になった目で俺を見つめていた。
俺は人間だと思っていたが、英次が人間じゃないなら俺も人間じゃないのか?
英次はクロス学院がどういうところなのか知っているようだ。
だからあんなに行きたくなかったんだ、俺の事だけではなく…英次自身も行きたくなかったんだ。
それを結果的に俺が英次を巻き込むカタチになってしまった。
俺だけが行けば英次は助かる、そう思ったら他の選択肢なんて俺にはなかった。
あの少年の話によれば英次も絶対に連れていく気だったらしい。
なら、学院に行っても俺は英次を守る…絶対に…
「瑞樹が行くなら安心だな」
そう言って英次は弱々しく笑っていた。
そういえば、飛鳥くんと学兄さんもクロス学院に入学したが人間じゃないのか?
あの二人だって俺と変わらない筈なのに全然知らなかった。
いろいろ謎だらけの学院だが、とりあえず全ては明日だと英次を家の前まで送り別れた。
両親にはどう説明したらいいのか分からない。
人間とかそうじゃないとか、そんな話誰も信じない。
俺の頭が可笑しくなったと思われても仕方ない。
あんな事があっても、まだ俺の中でも信じられない部分がある。
学校の事は普通の学校だと隠せば、少しは聞いてくれると思う。
新しい学校に転校すると言っても、受け入れられるだろうか。
両親がいくら俺の事に無関心だとしても、俺が好き勝手するのを許しているわけではない。
俺は三兄弟の中で一番の出来損ないだから、これ以上恥ずかしい俺の存在が目立つ行動をするのは嫌なのだろう。
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