141 / 159
第3章 王都騒乱編
第51話 転移の魔道具
しおりを挟む
王城に乗り込んだ日の夜、今日もゼムスさんの屋敷に泊めてもらっているんだけど、割り当てられた部屋のベッドの上で俺は少し悩んでいた。
異邦人の7人とダンジョンに行くのは決定事項なんだけど、問題は10階層まで行かないと封印の解除ができない事だ。
行けるか行けないかで言えば、もちろん行けるんたけど、初心者用のダンジョンに認定されているとは言え、ダンジョンだ。移動にそれなりに時間がかかる。
俺とかガルムとかはステータスに任せた移動で1日あれば10階層から1階層まで移動できたけど、みんなそう言う訳にもいかない。片道数日はかかるだろう。
しかし、この色々なゴタゴタの後始末が残っている中で7人を長期間連れ回す訳にもいかない。
ゴタゴタが片付いてから行くと言う選択肢も無くはないけど、残念ながらポチと会える手段がそこにあるのに待つなんて選択肢は俺の中に無い。
時間もないので【並列思考】で良い方法がないか考える。通常の2倍の速度で3人の俺が考えるから、良い案もすぐに浮かびそうだ。
《提案ですが、アクモンに協力して貰うのは如何でしょうか?》
と思ったら、思いつく前に【サポーター】さんから提案があった。アクモンに? なんだろう?
《アクモンには【影移動】と言う移動スキルがあります。それを【万物創造】スキルで【付与】した魔道具を作るのです》
あ、なるほど。そう言えば上位の悪魔は影を使って移動ができるんだっけ? 影から影への距離をほぼゼロにして移動できるとの事だ。
よし、その案で行こう! 【並列思考】は今日も仕事できませんでした。そうと決まれば、善は急げ。早速アクモンを呼ぼう。一応、アクモンにも部屋が用意されている。今はそこで休んでるはずだ。
〈アクモン。休んでいるところ申し訳ないけど、ちょっと僕の部屋に来てくれるかな?〉
【念話】で連絡をする。これで数分もしたら来てくれるだろう。
「大変お待たせ致しました。御用でしょうか?」
「うわっ! びっくりした」
机の影からアクモンが出てくる。数分どころか、まさかの数秒で来ました。ゆったりとした格好で休んでるのかと思ったら、普通に鎧を着たままだし。
「は、早かったね。ごめんね呼び出したりして」
「いえ、構いません。近くでリョーマ様の警護をさせて頂いていましたので。
それで何の御用でしょうか? 夜伽ですか?」
一体何から警護してくれてるんだろうか!? 【マップ】確認してなかったけど近くに居たのか。
《はい。アクモンはいつもマスターの警護をしているようです》
そうだったのか。【サポーター】さんは常にマップを確認してくれてるとは言え、緊急時しか報告してくれないから、今度から定期的に自分でも確認しよう。と言うか、こんな時こそ【並列思考】の出番では!? やっと仕事ができる。
「ここは安全だから、警護は必要ないよ。アクモンもしっかり休んでね。あ、あと夜伽も大丈夫だから」
「そ、そうですか!? でもリョーマ様にもしもの事があったらポチ殿に顔向けできません! ただでさえ一度大ケガを負わせてしまいましたので」
アクモンなりに俺がケガをした事をまだ気にしているらしい。そんなに気にしなくてもいいんだけどな。
「それで、その用件を伝えるために呼ばれたのでしょうか?」
「ああ、ごめんごめん。話が逸れてた。
ここに来てもらったのはお願いがあるからなんだ」
「なんなりとお申し付け下さい。できれば痛いのか良いです!」
痛いのはありません。
「実はね・・・」
俺はダンジョンの10階層まで、出来るだけ短時間で向かうために【影移動】を【付与】した魔道具を作りたい事を説明する。
「なるほど。その程度でよろしければ、喜んで協力させて頂きます」
「ありがとう。それで少し聞きたいんだけど、【影移動】する為の条件とかどんな感じなのかな? 知らない場所へは行けないよね?」
「そうですね。悪魔用のスキルと言う事で結構複雑ですが、当然行ったことない場所への移動はできません。近くの影に沈み、移動先の影から出る感じですが、その場を知っている必要があります。
また影の中はかなり環境が劣悪です。悪魔は耐えれますが普通の人間に耐えれるかどうか・・・。リョーマ様なら問題ないとは思いますが、断言はできません」
あっと、予想外の答えだった。それだと試しに移動してみるのも躊躇われるね。
「そうなんだね。勉強になるよ。
因みに、アクモンは封印されたダンジョンの中への移動とかはできないんだよね?」
「はい。申し訳ありませんが、移動はできませんでした。
見えない壁の様なものに阻まれて移動できません」
まあ、当たり前だよね。移動できたら封印の意味ないもんね。
でも、そうするとふりだしに戻ったな。危険な賭けにみんなを付き合わせる訳にもいかないからね。他の案はないか、アクモンも交えて2人でウンウン唸る。
「そう言えば」
しばらく唸っていたら、アクモンがそんな声をあげる。
「ん? 何か思いついたの?」
「はい。勇者の2人が付けていた首輪。アレには強制転移させる機能が【付与】されていましたよね?
あれを解析するのはどうでしょう」
あ! そうだった。解析するために残骸を拾ってたんだった。
「ありがとうアクモン。すっかり失念してたよ」
そう言いながら【収納】の中で【万物創造】を使って解析を開始する。何とか明日の朝までに解析して使えるようにしたいな。
ああ、また徹夜かな。そして今日もブラックな夜は更けていくのだった。
異邦人の7人とダンジョンに行くのは決定事項なんだけど、問題は10階層まで行かないと封印の解除ができない事だ。
行けるか行けないかで言えば、もちろん行けるんたけど、初心者用のダンジョンに認定されているとは言え、ダンジョンだ。移動にそれなりに時間がかかる。
俺とかガルムとかはステータスに任せた移動で1日あれば10階層から1階層まで移動できたけど、みんなそう言う訳にもいかない。片道数日はかかるだろう。
しかし、この色々なゴタゴタの後始末が残っている中で7人を長期間連れ回す訳にもいかない。
ゴタゴタが片付いてから行くと言う選択肢も無くはないけど、残念ながらポチと会える手段がそこにあるのに待つなんて選択肢は俺の中に無い。
時間もないので【並列思考】で良い方法がないか考える。通常の2倍の速度で3人の俺が考えるから、良い案もすぐに浮かびそうだ。
《提案ですが、アクモンに協力して貰うのは如何でしょうか?》
と思ったら、思いつく前に【サポーター】さんから提案があった。アクモンに? なんだろう?
《アクモンには【影移動】と言う移動スキルがあります。それを【万物創造】スキルで【付与】した魔道具を作るのです》
あ、なるほど。そう言えば上位の悪魔は影を使って移動ができるんだっけ? 影から影への距離をほぼゼロにして移動できるとの事だ。
よし、その案で行こう! 【並列思考】は今日も仕事できませんでした。そうと決まれば、善は急げ。早速アクモンを呼ぼう。一応、アクモンにも部屋が用意されている。今はそこで休んでるはずだ。
〈アクモン。休んでいるところ申し訳ないけど、ちょっと僕の部屋に来てくれるかな?〉
【念話】で連絡をする。これで数分もしたら来てくれるだろう。
「大変お待たせ致しました。御用でしょうか?」
「うわっ! びっくりした」
机の影からアクモンが出てくる。数分どころか、まさかの数秒で来ました。ゆったりとした格好で休んでるのかと思ったら、普通に鎧を着たままだし。
「は、早かったね。ごめんね呼び出したりして」
「いえ、構いません。近くでリョーマ様の警護をさせて頂いていましたので。
それで何の御用でしょうか? 夜伽ですか?」
一体何から警護してくれてるんだろうか!? 【マップ】確認してなかったけど近くに居たのか。
《はい。アクモンはいつもマスターの警護をしているようです》
そうだったのか。【サポーター】さんは常にマップを確認してくれてるとは言え、緊急時しか報告してくれないから、今度から定期的に自分でも確認しよう。と言うか、こんな時こそ【並列思考】の出番では!? やっと仕事ができる。
「ここは安全だから、警護は必要ないよ。アクモンもしっかり休んでね。あ、あと夜伽も大丈夫だから」
「そ、そうですか!? でもリョーマ様にもしもの事があったらポチ殿に顔向けできません! ただでさえ一度大ケガを負わせてしまいましたので」
アクモンなりに俺がケガをした事をまだ気にしているらしい。そんなに気にしなくてもいいんだけどな。
「それで、その用件を伝えるために呼ばれたのでしょうか?」
「ああ、ごめんごめん。話が逸れてた。
ここに来てもらったのはお願いがあるからなんだ」
「なんなりとお申し付け下さい。できれば痛いのか良いです!」
痛いのはありません。
「実はね・・・」
俺はダンジョンの10階層まで、出来るだけ短時間で向かうために【影移動】を【付与】した魔道具を作りたい事を説明する。
「なるほど。その程度でよろしければ、喜んで協力させて頂きます」
「ありがとう。それで少し聞きたいんだけど、【影移動】する為の条件とかどんな感じなのかな? 知らない場所へは行けないよね?」
「そうですね。悪魔用のスキルと言う事で結構複雑ですが、当然行ったことない場所への移動はできません。近くの影に沈み、移動先の影から出る感じですが、その場を知っている必要があります。
また影の中はかなり環境が劣悪です。悪魔は耐えれますが普通の人間に耐えれるかどうか・・・。リョーマ様なら問題ないとは思いますが、断言はできません」
あっと、予想外の答えだった。それだと試しに移動してみるのも躊躇われるね。
「そうなんだね。勉強になるよ。
因みに、アクモンは封印されたダンジョンの中への移動とかはできないんだよね?」
「はい。申し訳ありませんが、移動はできませんでした。
見えない壁の様なものに阻まれて移動できません」
まあ、当たり前だよね。移動できたら封印の意味ないもんね。
でも、そうするとふりだしに戻ったな。危険な賭けにみんなを付き合わせる訳にもいかないからね。他の案はないか、アクモンも交えて2人でウンウン唸る。
「そう言えば」
しばらく唸っていたら、アクモンがそんな声をあげる。
「ん? 何か思いついたの?」
「はい。勇者の2人が付けていた首輪。アレには強制転移させる機能が【付与】されていましたよね?
あれを解析するのはどうでしょう」
あ! そうだった。解析するために残骸を拾ってたんだった。
「ありがとうアクモン。すっかり失念してたよ」
そう言いながら【収納】の中で【万物創造】を使って解析を開始する。何とか明日の朝までに解析して使えるようにしたいな。
ああ、また徹夜かな。そして今日もブラックな夜は更けていくのだった。
21
──【宣伝】─────────
新作「神の魔力と紙防御〜転生で神の魔力をも貰ったけど、同時に貰ったのは紙の防御力になりました。これは祝福ですか? いいえ、呪いです〜」(リンクになっています)の連載を開始しました。
思いつきで書き始めましたが、結構面白くできてると思うので(自画自賛)、良かったら読んでもらえば喜びます。よろしくお願いします。
ポチは今まで通り更新しますので、ご心配なく!
新作「神の魔力と紙防御〜転生で神の魔力をも貰ったけど、同時に貰ったのは紙の防御力になりました。これは祝福ですか? いいえ、呪いです〜」(リンクになっています)の連載を開始しました。
思いつきで書き始めましたが、結構面白くできてると思うので(自画自賛)、良かったら読んでもらえば喜びます。よろしくお願いします。
ポチは今まで通り更新しますので、ご心配なく!
お気に入りに追加
3,791
あなたにおすすめの小説

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる