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第3章 王都騒乱編

第47話 悪あがき

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「待ちなさい! そいつはお父様の名を語る偽物よ!」

 そう言いながら城から出て来たのは今回の首謀者ミーナ王女だ。後ろに妹と弟、リーナさんにとっては姉の兄が付いて来ている。

「ほう、部屋の隅で震えているのかと思ったが、よく出て来れたものだ」

「偽物が! いくらお父様の真似をしても私には分かるわ」

 どうわかるんだろう。何回【鑑定】しても本物の王様ですよ。

「ご機嫌麗しゅう。ミーナお姉さま。どこからどうみても本物のお父様ですよ?
 何を根拠に偽物等とおっしゃるのですか?」

「ほ、本物は完治不能な毒に・・・。あ、いえ、私には分かるのです。それが本物の訳ないのです!
 リーナ! 貴女の策略ね! 本当に下賤な子!」

 サラッと毒を盛ったことを自白しそうだったんだけど、この王女様大丈夫だろうか?

「もう良い。リーナは下がっていなさい。
 ミーナ、そして後ろでこそこそしている2人も、良く聞け。
 お前たちには国家転覆の容疑がかかっている。そして女神様の言葉を詐称した容疑もだ。言い逃れは出来ぬぞ?」

「な、何の事!? 私たちは国の一大事に勇者を遣わされ、魔物の軍勢と戦ったのです! そのような容疑に問われる言われはありません!
 宰相! 貴方はどちらを信じるのですか!」

 あ、宰相であってたんだね。どちらを信じるって決まってるよね。

「ミーナ様。申し訳ありませんが、こちらは間違いなく本物の王でございます。
 私は【鑑定】スキルを所持しております。間違える事などありません」

「そ、それは【鑑定】を偽称するスキルや魔道具があるかも知れないじゃない!」

「ステータスを隠す事はできても、偽称は聞いた事がございません」

 あ、ここに1人【鑑定偽装】を持った勇者が・・・。

「くっ、仕方ないわね。荒事にはしたくなかったんだけど。勇者を呼び戻すわ!
 あの勇者につけた首輪は宝物庫に有っただけあってとても優秀でね? 離れていても命令できるの」

 ああ、それって暗に勇者を奴隷にしてるって認めてるんじゃないかな。今更だけど。

 けど、命令が出来たとしても勇者たちは拘束されている上に、鈴木さんが近くで待機している。

 忘れている人もいるかも知れないけど、鈴木さんのレジェンドスキルは一定範囲でのスキルの起動が出来なくなるものだ。範囲内に居る勇者たちはスキルが発動できない。拘束から逃れる事はできないだろう。

「さあ、ここに来るように命令したわ。すぐにでもここにくるわよ。
 直ぐ近くの神殿に連れて行かれていて良かったわ」

 声に出さずに命令できるなんて【念話】みたいな機能が付与された魔道具なのかな? アーティファクトと言われるだけあって高機能だね。

 鈴木さんのスキルも知っていて、勇者が来ない事が分かっている王様は敢えて少し待ってあげるようだ。意外と優しいのか、希望を摘んで諦めさせるつもりなのか。後者だろうね。


「・・・・・・なぜ? なぜ来ないの? すぐそこにいるはずでしょ!?」

 数分待ったが、やっぱり勇者たちは来なかった。

「ミーナよ。いくら待っても無駄だ。あやつらはここには来れぬ。
 さあ、チェックメイトだ。大人しく捕まるが良い」

「嫌よ! 私はこの国の王になるの! こんな所で捕まる訳にはいかないのよ!」

 あーあ、完全に王になるって宣言しちゃって。

「最終手段よ。1度しか使えない機能だから取っておきたかったけど、こうなったら仕方がないわ」

 ミーナ王女がそう言うと、王女の目の前の地面に小さな魔法陣が2つ現れた。何だろう!?

〈リョーマ様。あれは【転移】の魔法陣です。何かが【転移】してきます〉

〈アクモンありがとう〉

 何かと言うか、この状況なら考えられるのは1つだよね。まさか【転移】機能まで付いていたとは! 後で首輪解析させてくれないかな!?

「主人の元に強制的に呼び寄せる能力よ! さあ、勇者2人の力の前に平伏すがいいわ!」

 やっぱりこの王女はバカなんだろうか?

「ミーナお姉さま。貴女は昔からどこか抜けていましたが、やっぱりバカなんですね。
 勇者は偽物。朝、魔王の手先にやられたばかりじゃないですか? そんな者を呼んだところで、状況が好転するとでも?」

「リーナ! バカは貴女よ! 確かに、魔王の手先にはやられたわ。でもここにその魔王の手先は居ない!
 つまり勇者さえ居たら何とかなるのよ!」

 うん。バカだ。

「ここには、その魔王の手先と魔王を追い払った私と真の勇者がいるんだけど?」

 そして、正確には魔王(俺)と魔王の手先(アクモン)もここに居る。姿は消してるけどね。

 そんな話をしていると、魔法陣が光輝き勇者の2人が現れた。

「ん、んん? ここは・・・城の前か・・・?」

「さあ、勇者タクヤに勇者リョーコ。ここに居る偽物の王とその仲間たちをやってしまいなさい。
 死んでも構わないわ」

 これはもう、勧善懲悪物のお話で悪事がバレた悪代官のセリフだよね。そしてその命令だと勇者の2人が死んでも良いみたいに聞こえますよ。

「ちょっと状況が良く分からないんだけど!? って従うしかないのよね。分かってるわ」

「おいおい、よく見たら逃げ出したノルマの太郎君じゃないか。
 何でこんな所にいるんだ? 逃げたまま小さくなって震えてたら、ここで死ぬことも無かったのにな!」

「きゃはは! ホント。正々堂々と人をいたぶれるなんて、素敵な世界に来たわね。やるわよ卓也」

 イヤな奴らだとは聞いてたけど、人をいたぶるのが楽しみとか趣味が悪いってレベルじゃないな。勇者のセリフとは思えない。

「僕の知り合いが迷惑をお掛けして本当に申し訳ありません。
 この場は僕に任せて貰えますか? 僕が責任を持って止めさせて頂きます」

 太郎さんも思うところがあるらしく、1歩前に出た。

「おいおい、低レベルの一般人が何を言ってるんだよ!
 レベル80の俺たちを止められるとでも思ってるのか? ノロマなだけじゃなくてバカなのか?」

 そうか、太郎さんはステータスを偽装してたからこの2人は太郎さんが低レベルだと思ってるのか。

「ま、待って卓也。コイツ、いま喋ったわ! こいつ喋れないんじゃなかった? 何かおかしいわ」

 ああ、そうだった。すっかり忘れてたけど、太郎さんは子供の頃に病気になって声が出なくなったんだっけ。俺が治したけど。

「御託は良いのでかかってきて下さい。この神に頂いた剣、神剣レーヴァテインの錆にしてあげます。神をも切り裂く最強の剣です」

 そう言って太郎さんは俺の額を切り裂いた剣を構える。

 神に頂いたって、作ったの俺ですよ。太郎さんの中では俺は神なんだろうけど、俺は神じゃないですよ。そして、いつの間にそんな名前を付けたの! カッコいいけど! そして神をも切り裂くって俺を切ったって事だよね! ツッコミが追いつかない!

「2人同時でいいですよ? 時間がもったいないので」

「アアン!? っざけんなよ! 格の違いってやつを教えてやるぜ!」

 これはもう太郎さん1人でやる流れだね。従魔効果でステータスアップしてるし、多分大丈夫だろうけどいつでもフォローできるようにはしておこう。
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