上 下
133 / 159
第3章 王都騒乱編

第45話 ケガ

しおりを挟む
 王様に向かって飛んできた銃弾を防いだ俺に太郎さんの凶刃が迫る。

「や、やばっ」

 とっさに避けようとしたけど少し間に合わない。いや、普段なら簡単に避けれるような攻撃なんだけど、眠くて頭がボーッとしている俺には間に合わない。

「リョーマさん!」

 兵士たちまでは聞こえてなさそうだけど、俺の名前を叫んじゃダメだよ太郎さん。何て考える余裕くらいはあるらしい。

 そして、避けるのは間に合わないと思ったけど、剣は俺の額を掠めていく。お? ギリギリ避け切れたのかな? 良かった。

 そう思っていた時期が俺にもありました。

 ───ピュー!

 助かったと思って太郎さんと顔を見合わせていると、そんな音が聞こえるような感じで俺の額から血が吹き出した。太郎さんの剣、調子に乗って切れ味良く作りすぎたかも!? 触れた感覚ないのに切れるとか、どこの名剣!

「りょ、リョーマさーん!」

 だから、俺の名前を叫んじゃダメだって!

〈リョーマ! 大変なの! リョーマから血が吹き出してるの!〉

 ミルクが【念話】で取り乱しているのを横目? に、俺の意識が遠のいていくのが分かる。

〈リョーマ! リョーマ! ん? ボスなの?〉

 ミルクが意味不明な事を言ってるような気がする。耳までおかしくなってきたかな? ヤバいヤバい。早く回復魔法をかけないと!

 そんな事を考えながら俺はパタリと倒れ込んだ。


 ☆


 夢を見ていた。

 そう、夢だと分かるような夢のような夢だ。つまり夢だ。

 何で夢かって、ずっとポチの声が響いていたんだ。

 夢の中のポチは前世で飼っていた時の姿のままだ。

〈ご主人! しっかりするのだ! キズは浅いのだ! もう大丈夫なのだ!
 深かったけど、もうふさがってるらしいのだ! 深いのに浅いとか哲学なのだ〉

 夢の中でポチは俺の事を心配して叫び続けてた。最後のは心配しているのか微妙な感じだけど。

〈ご主人とお話したかったけど、時間切れなのだ。
 魔道具のエネルギー切れなの・・・だ〉

 夢の中のポチの声はそんな感じで徐々に小さくなり消えて行った。

 ごめんポチ。夢の中でまで心配をかけてしまって。

 早く会いたいな・・・。

 そんな事を考えながら、俺の意識はまた深い眠りに落ちて行ったのだった。


 ☆


「良かった! 目が覚めたのね!」

「うわーん! リョーマさん、斬ってしまってすみませんでした!」

 目を開けると知ってる天井と共に、リーナさんと太郎さんの顔が視界に飛び込んで来た。

 ああ、ここはゼムスさんの屋敷だ。あれ? 俺ってどうしたんだっけ?

「えっと・・・」

 そうだ。思い出した。

 作戦の途中で太郎さんの剣に斬られて倒れちゃったんだ。切れ味良く作りすぎたから自業自得なんだけど。

「すみませんでした。あの後、どうなりました?」

「大丈夫。ほぼほぼ作戦通りよ。
 魔王様が倒れたから、その後は作戦通りアクモンも撤退したわ」

 そうか、良かった。俺が倒れた事で作戦が台無しになってたらどうしようかと思ったよ。

「アクモンが倒れたリョーマを回収して、撤退したように見せかけて、その後すぐに合流したわ。
 みんな心配してたんだけど、合流した時にはすでにキズはふさがってたわね」

 そうか、一応人外の回復力だからあの程度? のケガなら放っておけば治るんだな。

「そして、貴方はどちらかと言うと寝不足で寝てた感じね!」

 えええ、それはちょっとカッコ悪い。相当眠かったからなぁ。

「そう言えば、僕はどのくらいの時間寝てたんでしょうか?」

「半日ほどかしら? 倒れたのが朝で、今は昼過ぎよ」

 何日も寝てたとか言われたらどうしようかと思ったけど、半日なら良かった。

「色々と聞きたいことがあるんですけど、その前に。
 太郎さん心配をかけてすみませんでした。太郎さんは悪くないので気にしないで下さいね」

「リョーマさん。でも・・・」

「俺が寝不足だったのと、調子に乗って剣の切れ味を上げすぎたのが問題なんです」

 今回の教訓として、体調管理はしっかりしないとね。

「そうね。太郎さんは何も気に病む必要はないわ」

「ありがとうございます。そう言ってもらえるだけで少し楽になりました」

「それで、何から聞きたいのかしら?」

 聞きたい事は色々あるけど、まず何から聞こうか。

「じゃあ、まず勇者たちはどうなりました?」

「勇者たちは神殿よ。あの後、あの場を収めるためにゼムスさんとレミが登場したの。
 女神様の名を語る不届き者を取り調べる。と言う名目で神殿に連行したわ。私と救助されたお父様が許可を出したから問題ないわ。
 お父様も一緒に確認すると言う事で神殿ね。城に戻るとミーナ姉さんが何をするか分からないからね」

 ほぼ作戦通りって事かな?

「ありがとうございます。
 因みに、あの場にいた魔物は僕が次の命令を出してないからそのままですよね?
 どうなってますか?」

「それはレミに頑張って貰ってるわ」

 レミに? 作戦にはなかったけど、どう言う事だろ?

「ホントは何もしなくても魔物たちは攻めて来ないんだけど、聖女様の力で食い止めてる事にしてるの。
 だから、レミは城門の外でそれっぽい祈りを捧げているわ」

「あー・・・それは早めに魔物たちに次の命令をした方がいいですね」

 これは冗談で言っていた「森へお帰り」を本気でやって貰うべきかな。

「じゃあ、早速行きましょう! レミも大変だと思いますので」

「リョーマはもう大丈夫なの?」

「ええ、リーナさんも言ってた通り、ほぼ寝不足ですから!
 半日ほど寝かせて貰って体調は万全です」

 この後、俺は透明になって城門の外まで行き、レミの「森へお帰り」に合わせて魔物に命令をしたのだった。

────────────
楽しみにして下さっている方には大変申し訳ないですが、 10月はちょっと忙しくなりそうなので、更新は3日に1回にさせて頂きます。更新できる時は早めにしたいと思います!
しおりを挟む
感想 112

あなたにおすすめの小説

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~

月見酒
ファンタジー
 俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。  そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。  しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。 「ここはどこだよ!」  夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。  あげくにステータスを見ると魔力は皆無。  仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。 「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」  それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?  それから五年後。  どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。  魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!  見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる! 「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」 ================================  月見酒です。  正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【アルファポリスHOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 --- 【23:50頃更新】  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると励みになります! ※一次選考通過していたのでタイトル戻しました。

女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)

土岡太郎
ファンタジー
 自分の先祖の立派な生き方に憧れていた高校生の少女が、ある日子供助けて死んでしまう。 死んだ先で出会った別の世界の女神はなぜか彼女を気に入っていて、自分の世界で立派な女性として活躍ができるようにしてくれるという。ただし、女神は努力してこそ認められるという考え方なので最初から無双できるほどの能力を与えてくれなかった。少女は憧れの先祖のような立派な人になれるように異世界で愉快で頼れる仲間達と頑張る物語。 でも女神のお気に入りなので無双します。 *10/17  第一話から修正と改訂を初めています。よければ、読み直してみてください。 *R-15としていますが、読む人によってはそう感じるかもしないと思いそうしています。  あと少しパロディもあります。  小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様でも投稿しています。 YouTubeで、ゆっくりを使った音読を始めました。 良ければ、視聴してみてください。 【ゆっくり音読自作小説】女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮) https://youtu.be/cWCv2HSzbgU それに伴って、プロローグから修正をはじめました。 ツイッター始めました。 https://twitter.com/tero_oo

ハズレギフト『キノコマスター』は実は最強のギフトでした~これって聖剣ですか? いえ、これは聖剣ではありません。キノコです~

びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中
ファンタジー
孤児院生まれのノースは、十歳の時、教会でハズレギフト『キノコマスター』を授かってしまう。 他の孤児院生まれのルームメイトたちは『剣聖』や『魔法士』『鍛冶師』といった優遇スキルを授かったのに、なんで僕だけ……。 孤児院のルームメイトが国に士官されていくのを横目に、僕は冒険者として生きていく事を決意した。 しかし、冒険者ギルドに向かおうとするも、孤児院生活が長く、どこにあるのかわからない。とりあえず街に向かって出発するも街に行くどころか森で迷う始末。仕方がなく野宿することにした。 それにしてもお腹がすいたと、森の中を探し、偶々見つけたキノコを手に取った時『キノコマスター』のギフトが発動。 ギフトのレベルが上る度に、作る事のできるキノコが増えていって……。 気付けば、ステータス上昇効果のあるキノコや不老長寿の効果のあるキノコまで……。 「こ、これは聖剣……なんでこんな所に……」 「いえ、違います。それは聖剣っぽい形のキノコです」 ハズレギフト『キノコマスター』を駆使して、主人公ノースが成り上がる異世界ファンタジーが今始まる。 毎日朝7時更新となります! よろしくお願い致します。 物語としては、次の通り進んでいきます。 1話~19話 ノース自分の能力を知る。 20話~31話 辺境の街「アベコベ」 32話~ ようやく辺境の街に主人公が向かう

処理中です...