うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

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第3章 王都騒乱編

第43話 作戦開始

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 ミーナ王女の演説を聞いた次の日の早朝、俺は王都の外に居た。俺の周りには魔物がひしめき合っている。

 因みに、正確には昨日の昼からずっと王都の外で、魔物を集めていた。他の王族の事もあるので、行動を起こすのはできるだけ早い方が良いとの結論になり、急いで魔物を集めたんだ。

 既に多くの魔物を森へ送っていた関係で、ある程度の数を集めるのに一晩かかってしまった。

 お陰で昨日の夜はほぼ寝ていない。よく考えたらその前の日も、アクモンと話し込んでいてほぼ寝ていないのでそろそろヤバい。立っているだけでフラフラだ。

 昨夜、暗くなる前くらいから徐々に魔物を集めていたので、一晩経って王城にも魔物の連絡は行っているはずだ。

「・・・リョーマ様? リョーマ様?」

 あ、アクモンが呼んでるのにも気付かない程度には集中力が低下しているようだ。

「ごめん。どうしたの?」

「リョーマ様、大丈夫ですか? 顔色が優れないようですが・・・。
 私は寝なくても平気ですが、リョーマ様はまだお子様なのです。少しでも寝ないと御身体に障りますよ」

 うん。いくらレベルが高くなって身体能力が上がっていても、睡眠は必要みたいだ。特に育ち盛りの子供の身体だから余計に、なのかな?

「心配かけてごめん。でも早めに他の王族の人達も救出しないと、毒を盛られてるみたいだしね」

「私は見ず知らずの人間より、リョーマ様の事が大切ですよ?」

「ありがとう。無理はしないようにするから許して」

 そう言うと、俺は今回の作戦をもう1度思い返す。と言っても、作戦と言えるほどの内容でもないんだけど。

 まずは俺が集めた魔物を王都の近くに配置する。そして、アクモンが魔王役となり魔物たちを率いているように見せかけるんだ。

 ついでにミーナ王女が口から出まかせを言っていた「王様は魔王の手の者に攫われた」というのをそのまま採用して、檻に入った王様も準備している。嘘から出た実ってやつだね。いや、やらせだから実かどうかも微妙だけど。

 その後の段取りも決めてはあるけど、まずは勇者が出てこないと始まらない。さすがに魔物が王都を取り囲んでいたら、冒険者ギルドや神殿にも応援要請がくるかな? 勇者は温存されたりするかな?

〈リョーマ、聞こえる?〉

 そう考えていたら王城付近で様子を伺っているリーナさんから【念話】が届いた。

〈はい、聞こえますよ。王城で動きがありましたか?〉

〈勇者にはまだ動きは無いわね。でもギルドと神殿に通達が出たみたいよ〉

 あ、やっぱり応援要請かな? 一応、応援要請がきたとしても冒険者ギルドと神殿は何やかんや理由を付けて勇者を出させる計画になっている。

〈国からの通達はこの程度の魔物の群れは勇者様が片付けるので、ギルドと神殿は手を出すなって事らしいわ。
 願ってもない申し出よね。姉さんがバカで助かるわ〉

 なるほど、今回の功績もすべて自分のものにしたいって事なんだろうな。でも自分の出まかせが現実になって驚いてるんじゃないかな? 驚いた顔が見れなかったのは残念だ。

〈それはどうやって勇者を出させるか悩む手間が省けましたね。じゃあ、もう少し待てば勇者たちが出てくるんですかね?〉

〈そうね。そうだと思うわ。それまでの間、少しでも休んでおくのよ? 昨日の夜も寝てないんでしょ?〉

 リーナさんにまで心配させてしまった。眠くてフラフラなのは間違いないけど。

〈ご心配ありがとうございます。少し休みますので大丈夫ですよ〉

 と言っても、こんなところでベッドを出して寝る訳にもいかないので、立ったまま休むしかないんだけどね。

「リョーマ様、魔物に命令する為とは言え、こんな前線に立たせてしまい申し訳ございません。
 この程度の事、本来なら私たち従魔で何とかしないといけませんのに」

「いやいや、アクモンはそう言うけど、こういうのはやっぱり適材適所だよ。アクモンから離れると魔力も足りなくなるしね。
 俺は魔物を操れるんだから、ここが最適なんだ。でも、そう言ってくれるだけで嬉しいよ」

「ありがとうございます。お気を遣わせてしまい申し訳ありません」

 そう。俺は当初の予定通りアクモンと2人、魔物の前でデーンと構えている。もちろん悪魔っぽい仮面を作って付ける事も忘れていない。

 石っぽい素材で作ったら、リーナさんに某奇妙な冒険漫画の石仮面みたいねって言われた。意識していた訳じゃないけど似た感じになってしまっていたらしい。

 そして黒っぽい服にマント等、悪乗りしたリーナさんとレミに色々悪魔っぽくコーディネートされてしまった。

「リョーマ様、その恰好とても似合ってますよ」

 アクモンも気に入っているみたいだ。途中で、近くに居るだけなら透明になってたら良いんじゃないかとも思ったけど、折角コーディネートしてもらったし、アクモンも気に入っているみたいなので、このまま行く事にした。

「しかし、いくら檻の中にいてリョーマ君が手綱を握っているとは言え、この数の魔物の中にいたら生きた居心地がしないな」

 檻の中から声が聞こえる。そう言えば王様も居るんだった。半分忘れてた。

「王様には絶対に危害は加えないので大丈夫ですよ。安心して下さい」

「ああ、分かっては居るのだが、この魔物たち1体1体がゴブリンキング並みの魔物だと聞いてしまうと・・・な」

 今回集めたのはレベル50~70程度の魔物だ。勇者がレベル80との事なので、それより少し低めに設定しておいた。魔物が強すぎると勇者がビビッて出てこないかも知れないからね。

 因みに、2年前に俺が倒したゴブリンキングでレベル55だ。それで厄災級とか言われているので、ここにいる魔物1体でも本来は大騒ぎになるような魔物なのだ。それを数百体準備した。

 アクモンは悪魔なので【鑑定】される心配はないし、俺も【鑑定】レベル10なのでリーナさん以外に【鑑定】される心配はない。俺たちのレベルがバレる事はないだろう。

〈リョーマ! こちらに動きがあったわ。勇者様の出陣よ。
 馬に乗ってそちらに向かって行ったわ。まあ乗馬なんてできる訳ないから、騎士が乗る馬の後ろにちょこんと座ってるだけで、カッコ悪かったけど〉

 リーナさんから連絡があった。勇者様の出陣がそれって、確かにちょっと締まらないね。でも、馬ならすぐにでもこちらにやってくるだろう。

 さあ、作戦開始だ!

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